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第1部

83やりすぎです1

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「お嬢様、悪女としての素質を開花されたのは宜しいのですが、陛下にはもう少し手加減してあげてください!」
私の前に座るなりクルリが目を釣りあげ、そんな事を言い出した。
「待って!悪女?そんな気は全くないわ。それに陛下に対してはいつも丁寧に接しているつもりよ」
宮殿から、馬車に乗るまで、クルリが、
誰とも話ししないでください!
早く歩いて下さい!!
焦る顔で私を、せっついてた。
そうして馬車に乗るなり、口を尖らせ説教みたいな言い方をしてきたのだ。
「気づいておられないならそれで結構ですが、つまり、本性が現れた、という事ですね。それは、いい事です。これまでクソ殿下にいつも冷たくあしらわれていて、私としては胸糞悪かったんですから!」
えーと、ごめんね。我慢していたのものね。
クソ殿下。
でも、クルリもその呼び方するのね。
カレンが言い出したから仕方ないけれど、初めは可哀想だわ、と思っていたけれど、クルリのあまりの吐き捨てた言い方に、溜まってたんだなあ、としみじみと思った。
走馬灯のようこれまでの事が浮かんできて、
うん、自業自得ですね、殿下。
何だが色々思い出してきて、ムカムカしてきた。
あんな事や、こんな事や、本当にいろいろあったわ。
それも、私を愛している、と言わされていたなんて最低だわ!
こっちは、全身全霊尽くしてきたのに。たとえ、レインを好きだと分かっていても、同情でもいいから少しくらい私のことを考えてくれているならともかく、
なによ!!
クソ殿下だわ!!
「ともかく今は反撃しているのでスッキリしていますが、その反撃の時のお顔が、いつもの雰囲気と違って、異様なまでに怖いんです!」
ぶるると本気で震えなから、私を見るクルリに、
「冗談やめてよ」
と笑って受け流そうと言ったところが、
「冗談ではありません!!」
と、思っきり否定された。
「本気で睨んだお嬢様の顔を見て誰も反論出来ません!陛下の顔を見たでしょう!?まるで蛇に睨まれた蛙のように、萎縮して可哀想でした!!」
「お、大袈裟よ」
「では、鏡をお持ちします」
「いいえ、結構よ」
クルリの即答に、即答してしまった。
「あの顔では、まるで死んで下さい、と言っていましたよ」
クスクスとクルリの隣りにいるリューナイトが我慢出来ず笑いだしたが、すぐに真顔に戻った。
「申し訳ありません。ですが、思い浮かびますね」
どういう意味よ。
「普段はとても可愛らしくて美しい自慢のお嬢様ですが、先程のようなお顔は、陛下の前で控えて下さいね。ヒヤヒヤします。どうせするなら、殿下やレイン、等などにして下さい。そっちの方々は見ていて楽しいですからね」
「・・・分かんないけど、分かったわ、クルリ」
そう答えると、クルリもクスクスと笑いだした。
そんなに怖いのかしら?と思い、本当に鏡出みてみるのもいいかもしれない、と不安になったが、やっぱり大袈裟に言っているだけだわ、と思った。
だって、そんな怖い顔していたらフィーが怖がる筈だもの。
んん?
怖がっていた時もあったような?なかったような?気がする。
「お嬢様、文を預かっております」
「え?あ、ああ、文ね。ありがとう」 
渡された文は2通。
テンビ男爵様とテレリナ子爵様だ。
先にテレリナ子爵様の文を開けるてみると、コリュ様が上手く貧民街に入ったと書いてあった。それと、私の事を調べて欲しいと頼まれた、との事。
祭りで王妃派を炙り出す為に動いた事と、アベルに上げた屋台の食べ物が、いい方向に向かっているようだ。
嬉しかった。ほんの些細な事でもいいから、皆が少しでも平等になり、幸せになればいい、と切に思う。
お腹いっぱい食べたい。
その他愛のないお願いが難しいかもしれないが、あの子達の為に、頑張らないといけない。
でも、私に何が出来るだろう?
いつも考えながら、お父様の言ったように、誰が1人では意味もなく、ただ、騒ぎを起こすだけだ。
でも、あまりに大きく動く事も出来ない。それは陛下を通し、公爵様達、他の貴族達とよく話し合い決めなければいけない。
自分がとてもちっぽけな石ころに見え、悲しかった。
それでも、陛下が私の味方になってくれたのは大きいわ。それに、貧民街に住む人達が私の噂を疑ってくれている。
ともかく、目の前の事をしよう。
そう思い、もう一通の文を開けた。
テンビ男爵様には、レインの動きを見張って貰っていた。
レインが、孤児院に行き、その子達と一緒に協会によく行っていて、子供達と遊んでいる、と言う内容だった。
レインの乳母が孤児だったから、そこの繋がりなのかもしれないが、レインが子供達と遊ぶ?
あの我儘で?
結構綺麗好きなのに?
小さい子供と?
全くイメージがつかないわ。
子供って自由奔放で、言う事聞かないのに、同じように自由奔放で言うこと聞かないレインが?
子供達と遊ぶ??
いやいや、偏見の眼差しで見てはいけないわ。見かけによらず、レインはすごーく子供好きなのかもしれない。
そうよ。手を取り合って、楽しく笑いなが・・・ら・・・。
無理!
ぜんっぜん想像つかないわ!
「どうされたのですか?何かおかしな事が書いてあるのですか?」
私の顔を見てクルリが不思議そうに聞いてきた。
「えーとね、レインの情報が来たのだけれど、時間がある時は孤児院に行って、その子供達と教会に連れて行ったり、遊んだりしているんですって」
「はっ!?」クルリ
「・・・カモフラージュ?」リューナイト
その驚きの顔するという事は、やっぱり私と同じ考えか。
良かったあ。
「ないない!!あの女ですよ!」
「でも、もしかしたら、もしかしてそうなのかも?あんまり、偏見でものを言うのもどうかなあ、と思うの」
「ですが、それでしたらもっと表立って噂になる筈ではありませんか?実際、お嬢様は率先してそのような場所に赴きません」
「痛いとこつくわね、リューナイト。返す言葉はないけど、少し言い訳をさせて貰えれば、殿下に夢中でそこまで気が回らなかったよ。今は違うわよ。まだ、行っていないけれど、これからは頻繁に行くようにするわ」
自分で言いながらとても言い訳がましくて、
私ってば口ばっかり、
と凹んでしまった。
「仕方ないですよ。お嬢様は猪突猛進というか、融通が効かないというか、これ、と決めたら変に頑なですから要領よくできないのですよね」
言われて見れば、確かに。
「そこがお嬢様の良いところなのです。真っ直ぐなお気持ちで、穢れない」
「ですよねえ。だから、より怖く見えるんですよ」
ん?
また、そこ??
レインの話は???
「皆様も言うように逆らってはいけません。常に監視されているのですから」
「そうだね。あれお嬢様、どうされました?何か不機嫌そうですよ」
「当たり前でしょ!レインの話からどうして私になるのよ!」
「ほら、リューナイト様見ました?」
「見ました、クルリ殿」
2人は顔見合せて、
「敵にしてはダメだよ」
「敵にしてはなりません」
と言った。
「クルリ!!リューナイト!!」
私の大声に、2人は腹が立つくらいに怯えて小さくなった。
もう!!
でも、少し睨んだ後、皆で大笑いした。

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