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第1部
75コリュ目線1
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「ガンダラ、俺に住む場所をくれ」
ボロボロの家、と言うには家とも呼べない、つぎはぎだらけの板でどうにか作った
四角いハリボテ?
一応家?
どっちでもいいがそこで俺は、俺なりに頼んだ。
目の前に座るガンダラが、俺の言葉に胡散臭い顔だ。
ガンダラと俺が呼んだ男は、この貧民街の、
えーとな、
つまり、
長だ。
確か40代と聞いているが、赤茶色の髪に隙を見せない赤い眼光からはもっと年上に見えた。
無駄の無い筋肉質な体に、幾つも切り傷や刺傷があるのは誰もが知っている事だ。
貧民街と外では呼ばれているが、実際ここは1つの国の様に成り立っていている。
そこで長として認められているという事は、過酷な環境を生き抜いたからこそだろう。
平民街の奥にこの貧民街があるのだが、特に塀や仕切りがある訳ではなく、そのまま繋がっている。
たが、境目と言える場所に小屋があり、貧民街の人間が交代で見張り、部外者がやってくると追っぱらわれる。
それは子供でも容赦ない。
俺は、平民街にいる友人の親がこの貧民街生まれだった為と、お前ならここでやっていけそうだな、とか言われ連れてきてもらったのが今思えば功を奏した。
この貧民街は、王都とその周辺の街が範囲となり、それぞれそこを治める者がいる。特に呼び方が決まってないが、選考はちゃんと選挙で決める。
この王都の街はでかいから、治めるナワバリを決め3人いるのだが、そのうちの1人がこのガンダラだ。だから、この辺りで何かしようと思ったら、ガンダラに頼むしかない。
ちなみに他の街は1人しかいない。
あちこちから綿が出て、ネジもあちこち出たソファに俺は座り、俺の前に座る中年の男ガンダラは、呆れた顔をしながらも、腕を組み、考えてくれていた。
「お前、貴族だろ?」
神妙な声で、確認するように聞いてきた。俺の頼み方云々ではなく、気になるのはやはりそこ、か。
貴族。
貧民街の民は誰も貴族に好意を持っていない。
かと言って平民街に住んでいる奴を仲間として見ているのか、と言えばそれも違う。
本当に、ここは、一国なのだ。
邪魔するやつは全て敵。
その中で貴族は弊害でしかない。
貧民街に住む人々を人間として扱わず、まるでゴミのように見てくる。
国から対した補助もない為、余計気貴族を敵対するのは仕方ないだろう。
「もうすぐ、廃嫡になる。どうせ皆知ってるんだろ?俺の家が色んな失敗して、爵位返上させられる上に借金まみれ。その失敗の原因が俺だ、と」
「噂は聞いている。たが、王妃に助けて貰えるようになったからこれからは貴族らしい生活をする、と言って去って行ったんだろうが、帰ってくるのがえらく早いな」
人をからかうような言い方になった。あの言った時、俺が喜んで出て言った訳ではないと知っているからだ。
「そりゃあ上手くいくと思っていたからな。王妃様が助けてくれたら、父さんのワインがもっと売れて金持ちになる、と思ってたが世の中そんな甘くなかった」
これは本当だ。
父さんだけでなく、家族も農園で働く皆も一心に喜んでどれだけの希望をもったか。
たが崩れるのも一瞬だった。
「売れなかったのか?」
「売れないと言うよりも、知りもしない奴を取引相手にしてくれなかった、というだけさ。王妃様は確にいい商人を紹介してくれたが、俺達を助けてやれ、とは言わなかったみたいだ。その商人から二束三文の値段なら取引する、と父さんに言ったらしい」
「一杯食わされたのか。それが気に入らなくて、腹いせに帝国のお偉いさんに食ってかかったのか。お前は口が悪いわ、手が早いわ。出ていくと聞いた時は逆に心配したが思った通りになったな!それも、相手が帝国のお偉いさんだなんて、お前やってくれるな。そりゃあ、あっちの世界じゃ生きれねーな!!」
ガッハッハッと楽しそうに笑いだした。
なるほどな、そういう風に解釈されたのか。
「その通りだ。その上公爵令嬢にも喧嘩売ってるからさあ、謝罪がないから、廃嫡だ、と言われてさ、こりゃマジで俺はここでしか住めないわ、と思ったわけさ。それと、卒業したら前に教えただろ?幼なじみのクレスと結婚する事になってるから、今から足場を固めとこうと思ってさ」
「お!ついに結婚するのか。よく話に出ていたもんな。だが、お前はともかく、貴族の嬢ちゃんだろ?ここでいいのか?婆さんがここに住んではいたが、嬢ちゃんは生まれた時から貴族だろ?」
「そこは話をした。と言うよりも、クレスも王妃様に騙された口なんだ。だから、貴族世界から離れて暮らしたい、と言っていた」
これは嘘だ。
さすがに貧民街は、嫌だ、と言われたが、悪いが少しずつ慣れていって貰うつもりだ。
最悪、スティング様が失敗した場合、本当にここに住むことになる。
上手く行けば、平民街で暮らせばいい。
「そうか、貴族世界ってのはやっぱり面倒だな。だが、わかった。幾つか空き家になってるところがあるから、適当に見繕ってやるよ」
「ありがとな。出来れば早い方がいいな。早く家から出て行け、と爪弾きされてるんだ。俺が家にいると、目障りらしい」
「そりゃそうだろ」
また、ガッハッハッと笑いだのが、あまりに楽しそうで、
むかっ、とした。
俺をどういうふうに思ってるんだ?
ボロボロの家、と言うには家とも呼べない、つぎはぎだらけの板でどうにか作った
四角いハリボテ?
一応家?
どっちでもいいがそこで俺は、俺なりに頼んだ。
目の前に座るガンダラが、俺の言葉に胡散臭い顔だ。
ガンダラと俺が呼んだ男は、この貧民街の、
えーとな、
つまり、
長だ。
確か40代と聞いているが、赤茶色の髪に隙を見せない赤い眼光からはもっと年上に見えた。
無駄の無い筋肉質な体に、幾つも切り傷や刺傷があるのは誰もが知っている事だ。
貧民街と外では呼ばれているが、実際ここは1つの国の様に成り立っていている。
そこで長として認められているという事は、過酷な環境を生き抜いたからこそだろう。
平民街の奥にこの貧民街があるのだが、特に塀や仕切りがある訳ではなく、そのまま繋がっている。
たが、境目と言える場所に小屋があり、貧民街の人間が交代で見張り、部外者がやってくると追っぱらわれる。
それは子供でも容赦ない。
俺は、平民街にいる友人の親がこの貧民街生まれだった為と、お前ならここでやっていけそうだな、とか言われ連れてきてもらったのが今思えば功を奏した。
この貧民街は、王都とその周辺の街が範囲となり、それぞれそこを治める者がいる。特に呼び方が決まってないが、選考はちゃんと選挙で決める。
この王都の街はでかいから、治めるナワバリを決め3人いるのだが、そのうちの1人がこのガンダラだ。だから、この辺りで何かしようと思ったら、ガンダラに頼むしかない。
ちなみに他の街は1人しかいない。
あちこちから綿が出て、ネジもあちこち出たソファに俺は座り、俺の前に座る中年の男ガンダラは、呆れた顔をしながらも、腕を組み、考えてくれていた。
「お前、貴族だろ?」
神妙な声で、確認するように聞いてきた。俺の頼み方云々ではなく、気になるのはやはりそこ、か。
貴族。
貧民街の民は誰も貴族に好意を持っていない。
かと言って平民街に住んでいる奴を仲間として見ているのか、と言えばそれも違う。
本当に、ここは、一国なのだ。
邪魔するやつは全て敵。
その中で貴族は弊害でしかない。
貧民街に住む人々を人間として扱わず、まるでゴミのように見てくる。
国から対した補助もない為、余計気貴族を敵対するのは仕方ないだろう。
「もうすぐ、廃嫡になる。どうせ皆知ってるんだろ?俺の家が色んな失敗して、爵位返上させられる上に借金まみれ。その失敗の原因が俺だ、と」
「噂は聞いている。たが、王妃に助けて貰えるようになったからこれからは貴族らしい生活をする、と言って去って行ったんだろうが、帰ってくるのがえらく早いな」
人をからかうような言い方になった。あの言った時、俺が喜んで出て言った訳ではないと知っているからだ。
「そりゃあ上手くいくと思っていたからな。王妃様が助けてくれたら、父さんのワインがもっと売れて金持ちになる、と思ってたが世の中そんな甘くなかった」
これは本当だ。
父さんだけでなく、家族も農園で働く皆も一心に喜んでどれだけの希望をもったか。
たが崩れるのも一瞬だった。
「売れなかったのか?」
「売れないと言うよりも、知りもしない奴を取引相手にしてくれなかった、というだけさ。王妃様は確にいい商人を紹介してくれたが、俺達を助けてやれ、とは言わなかったみたいだ。その商人から二束三文の値段なら取引する、と父さんに言ったらしい」
「一杯食わされたのか。それが気に入らなくて、腹いせに帝国のお偉いさんに食ってかかったのか。お前は口が悪いわ、手が早いわ。出ていくと聞いた時は逆に心配したが思った通りになったな!それも、相手が帝国のお偉いさんだなんて、お前やってくれるな。そりゃあ、あっちの世界じゃ生きれねーな!!」
ガッハッハッと楽しそうに笑いだした。
なるほどな、そういう風に解釈されたのか。
「その通りだ。その上公爵令嬢にも喧嘩売ってるからさあ、謝罪がないから、廃嫡だ、と言われてさ、こりゃマジで俺はここでしか住めないわ、と思ったわけさ。それと、卒業したら前に教えただろ?幼なじみのクレスと結婚する事になってるから、今から足場を固めとこうと思ってさ」
「お!ついに結婚するのか。よく話に出ていたもんな。だが、お前はともかく、貴族の嬢ちゃんだろ?ここでいいのか?婆さんがここに住んではいたが、嬢ちゃんは生まれた時から貴族だろ?」
「そこは話をした。と言うよりも、クレスも王妃様に騙された口なんだ。だから、貴族世界から離れて暮らしたい、と言っていた」
これは嘘だ。
さすがに貧民街は、嫌だ、と言われたが、悪いが少しずつ慣れていって貰うつもりだ。
最悪、スティング様が失敗した場合、本当にここに住むことになる。
上手く行けば、平民街で暮らせばいい。
「そうか、貴族世界ってのはやっぱり面倒だな。だが、わかった。幾つか空き家になってるところがあるから、適当に見繕ってやるよ」
「ありがとな。出来れば早い方がいいな。早く家から出て行け、と爪弾きされてるんだ。俺が家にいると、目障りらしい」
「そりゃそうだろ」
また、ガッハッハッと笑いだのが、あまりに楽しそうで、
むかっ、とした。
俺をどういうふうに思ってるんだ?
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