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第1部
62コリュ目線2
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「・・・聡明な方だな」
部屋に戻り父さんが、俺達に渡された箱を開けた。中身を確認したかと思うと、苦笑いしながらも楽しそうに、中に入っていた二通の手紙を俺に渡した。
何だこれは?白紙じゃないか。
もうひとつは?
小切手だった。それも、白紙。
そうして、その金のやり取りの仕方が詳細に書かれてているメモが貼られていた。
「つまり、その金に見合う仕事をしろ、という事なのだろう。それも、白紙の小切手に、金のやり取りを書いているという事は、全てこちらの動きがお見通し、という事か」
「結構キツイ言う事やってくれるな。でも父さん、かなりの金が欲しいのだろう?」
俺の言葉に父さんは、困惑しながらも正直に頷いた。
「欲しいだけ貰えよ。俺が貧民街が情報を得てくる」
「だから、廃嫡か」
「その方が都合がいいだろ。どっちにしても平民街で暮らす事になれば、貧民街を知らないといけないからな。俺はある程度知っているが、いざ暮らし始めた時クレスが困るだろうからな」
「だが、お前は嫡男だ。もし公爵令嬢様の望み通りになれば、この家の復興も夢ではない。そうなった時、お前が継ぐべきだろう」
「いいや、スプラッシュにしてくれ。あいつの方が当主に相応しい。俺はクレスとの生活で手一杯だ。正直この家のことを考える余裕はない。それに、スプラッシュの方が俺と違って先を考えながら動いてくれるし、愛想もいい」
元々、俺は当主なんて興味なかった。
「全て上手くいったら、俺は葡萄畑を手伝いながら生活をしていくさ」
「・・・わかった。今はそうするしかないな。すまないな、お前ばかり負担を掛けてしまっているな」
「そうか?俺は結構助かった、と思っている。公爵令嬢様の言うように、俺たちには理想の未来はなかった。それをあの方は絵でなく、現実としてくれた。多分、あの方が一番敵にしてはいけない人なんだろうな」
「それは私も思った」
あれ程までに変貌するのかと狼狽える程、学園での姿と全く違った。いつも俯きながら、殿下の顔色を伺い、殿下の一言一言に、一挙一動し、気品はあるものの、惨めさをいつも醸し出していた。
それが、俺達を迎える為に向けてきたあの笑みは妖艶で、別人だった。
俺はあの時からすぐに学園を離れたから、その後のクレスのお茶会騒ぎの話しを聞いたが、俺と同じように帝国のお2人の機嫌を損ねたのだろう、と慰めた。
だが、その後の殿下との朝の様子やロール様のお茶会の様子は、スティング様とは思えない内容だった。
元々王妃様と公爵様の間には小競り合いがあったのは知っていたが、俺達のような平民に近い低級貴族には無縁の争いだった。
それに表立ってスティング様は殿下にも王妃様にも楯突く事もなかった為、たまに公爵派からは陰口を叩かれれているのを聞いた事があった。
誰もが知っていた。
スティング様は、殿下を心から愛している、
と。
だが、あの様子では流石に匙を投げたか。
「さて、俺も寝るわ。廃嫡の件は早めにたのむよ」
まあ、あんな男といたら疲れるな。
「わかった」
おやすみ、と父さんに声をかけ立ち上がると、いつもの客間なのにみすぼらしく感じた。
スティング様には全く不釣り合いな部屋にも関わらず、あの方がこの場にいただけで、様変わりしたように見えた。
全てがあの方の為に用意されたかのように、華やかに見えた。
上級貴族令嬢。
当たり前か。
公爵令嬢だものな。
さて、
と。
うーん、背伸びした。
やりますか。
部屋に戻り父さんが、俺達に渡された箱を開けた。中身を確認したかと思うと、苦笑いしながらも楽しそうに、中に入っていた二通の手紙を俺に渡した。
何だこれは?白紙じゃないか。
もうひとつは?
小切手だった。それも、白紙。
そうして、その金のやり取りの仕方が詳細に書かれてているメモが貼られていた。
「つまり、その金に見合う仕事をしろ、という事なのだろう。それも、白紙の小切手に、金のやり取りを書いているという事は、全てこちらの動きがお見通し、という事か」
「結構キツイ言う事やってくれるな。でも父さん、かなりの金が欲しいのだろう?」
俺の言葉に父さんは、困惑しながらも正直に頷いた。
「欲しいだけ貰えよ。俺が貧民街が情報を得てくる」
「だから、廃嫡か」
「その方が都合がいいだろ。どっちにしても平民街で暮らす事になれば、貧民街を知らないといけないからな。俺はある程度知っているが、いざ暮らし始めた時クレスが困るだろうからな」
「だが、お前は嫡男だ。もし公爵令嬢様の望み通りになれば、この家の復興も夢ではない。そうなった時、お前が継ぐべきだろう」
「いいや、スプラッシュにしてくれ。あいつの方が当主に相応しい。俺はクレスとの生活で手一杯だ。正直この家のことを考える余裕はない。それに、スプラッシュの方が俺と違って先を考えながら動いてくれるし、愛想もいい」
元々、俺は当主なんて興味なかった。
「全て上手くいったら、俺は葡萄畑を手伝いながら生活をしていくさ」
「・・・わかった。今はそうするしかないな。すまないな、お前ばかり負担を掛けてしまっているな」
「そうか?俺は結構助かった、と思っている。公爵令嬢様の言うように、俺たちには理想の未来はなかった。それをあの方は絵でなく、現実としてくれた。多分、あの方が一番敵にしてはいけない人なんだろうな」
「それは私も思った」
あれ程までに変貌するのかと狼狽える程、学園での姿と全く違った。いつも俯きながら、殿下の顔色を伺い、殿下の一言一言に、一挙一動し、気品はあるものの、惨めさをいつも醸し出していた。
それが、俺達を迎える為に向けてきたあの笑みは妖艶で、別人だった。
俺はあの時からすぐに学園を離れたから、その後のクレスのお茶会騒ぎの話しを聞いたが、俺と同じように帝国のお2人の機嫌を損ねたのだろう、と慰めた。
だが、その後の殿下との朝の様子やロール様のお茶会の様子は、スティング様とは思えない内容だった。
元々王妃様と公爵様の間には小競り合いがあったのは知っていたが、俺達のような平民に近い低級貴族には無縁の争いだった。
それに表立ってスティング様は殿下にも王妃様にも楯突く事もなかった為、たまに公爵派からは陰口を叩かれれているのを聞いた事があった。
誰もが知っていた。
スティング様は、殿下を心から愛している、
と。
だが、あの様子では流石に匙を投げたか。
「さて、俺も寝るわ。廃嫡の件は早めにたのむよ」
まあ、あんな男といたら疲れるな。
「わかった」
おやすみ、と父さんに声をかけ立ち上がると、いつもの客間なのにみすぼらしく感じた。
スティング様には全く不釣り合いな部屋にも関わらず、あの方がこの場にいただけで、様変わりしたように見えた。
全てがあの方の為に用意されたかのように、華やかに見えた。
上級貴族令嬢。
当たり前か。
公爵令嬢だものな。
さて、
と。
うーん、背伸びした。
やりますか。
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