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公爵派のお茶会3

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「は、はい!」
スルジニア様の指示で控えていたメイドがすぐにお茶が入れ直し、離れた。
5人だけとなった。
誰もカップを手に取ることなく、背筋を伸ばし私の言葉を待っていた。
「サリュート様、ドラジェウム侯爵様にお伝えください。ホッリュウ伯爵様には、教えて頂いた内容をゾルディック公爵様と相談し、判断致します、と」
「ヴェンツェル公爵様では、なくですか?」
「はい。今日のお茶会で私と会うことを考え、訪問されたのでしょう。ですが、ゾルディック公爵様、と言えば、ドラジェウム侯爵様は2つの公爵家と繋がりを持つ、と勘違いし頑張って情報を持ってくるかもしれません。期待はしておりませんがね」
「ですが、とても必死でしたよ」
「演技ですわ。まず本気で寝返るつもりなら、手ぶらでは来ません。それ相応の手土産を持って来るはずです。それに、直ぐに寝返る輩は、逆に、直ぐに寝返ります。短慮な考えの人間程、役に立ちません」
それに、お茶会の時、チラチラと私に助けを求めるような態度を取ったのも気に入らない。
全て人任せ。
自分でどうにかしようとする意思も、態度もない、愚鈍と言うしかない。
実際レテル子爵夫人には、何かあれば屋敷に来て下さい、とクルリに伝言させたが、結局訪問は無かった。
先程の話を聞く限り、もう、誰も頼る事をしないと決めたのだろう。
「かしこまりました。父には、そう伝え、何かあれば直ぐに報告致します」
「お願いします。それとサリュート様には、誰にも内密に、大学で調べて欲しい事があります。勿論お兄様にも知られてはなりません。王妃派の方々が共通の何か印の物を付けていないか、もしくは、何か決め事の言葉がないか、をお調べ下さい」
ワインのラベルの話で気づいた事だ。王妃派が増えた中、何処で王妃派の立場を区別しているのだろう、と思っている。高等部と違い、大学では、派閥が強く出ていると聞いている。闇雲に探すのは時間の無駄だ。
「かしこまりました」
「ありがとうございます。次に、ニルギル様は我々の中では最もお茶会に参加されています。これまでは王妃派に参加はされていないようですが、支障のない限り参加し、私が殿下の心を繋ぎ止めたいと、無理に強く出ている、と噂を流して下さい」
「わざわざ、ですか?」
「はい。私が今殿下に対して、手酷い事をしております。それを本気だと悟られる訳にいきません」
これで王妃派は納得するでしょう。私があれ程までに殿下を想っているのですから、早々に心変わりするわけが無い、と高を括るっているでしょうからね。
でも、本当に気持ちはもうない。
「かしこまりました」
「ありがとうございます。それと、その王妃派の中で誰が重要人物か調べて下さい。最も動かない人。最も視線が集まる方が、そのお茶会を牛耳っている人でしょう」
「かしこまりました」
硬い返事に私は柔らかく微笑えみ、次にスルジニア様を見た。
「次に、スルジニア様が」
「は、はい!」
かしこまってなんだか可愛い。
「クレス様をこちらに引き込みます」
私の断言に、スルジニア様も皆様も怪訝気に私を見た。
「どうやって?とお思いでしょうが、策を考えております。ですので、スルジニア様とクレス様とで、高等部に入ってからの王妃派を調べてください。出来れば、その見返りも分かれば、より結構です」
「かしこまりました」
「ありがとうございます、皆様。それと皆様、今のお願いは、私個人の指示です。報告は全て私にお願いします。あともう1つ。このお茶会が終わり帰られましてら、再来週から全ての公爵派方に、私を名で呼ぶようお願いしてください。既に避暑地に向かわれた方もおられるでしょうが、その方には急ぎ文を送るようお願いします。少し考えがあります」
「かしこまりました」
4人が揃って返事をしてくれた。
「本当に変わられましたね、スティング様。正直、半信半疑でした。お父様からスティング様は、殿下に対する気持ちも無くなり、本気で公爵派で行動されると聞いた時も、お茶会の話しを聞いた時も、半信半疑でした。ですが、今の聡明なお姿は、我々の求めるスティング様です」
大袈裟でもなく、サリュート様が崇めるように言った言葉に皆様の気持ちが一緒だと嬉しかった。
「皆様にはご心配かけておりましたね。これまで殿下の為に、と日々精進して参りましたが、それが公爵派には足枷となり、1歩前に進む事を躊躇わせておりました。ですが・・・皆様ご存知のように殿下のパーティーで、疲れてしまいました・・・」
ここにおられる皆様はパーティーに招待され、直ぐに慰めの文を下さった。
色々考えた。
誰を手駒とするべきか。
誰が信じられる人達か。
何を私がすべきなのか、
を。
「もう、殿下には気持ちは微塵もありません。お伝えがあったように、私は率先して王妃派を潰しに参ります。その為に、非道となり、私は私の策を講じ進むつもりです」
すっと立ち上がり、ゆっくりと1人ずつ目を見た。
「先程のお願いと共に、私の手足となり動くことをお願い申し上げます」
頭を下げた。
そう、
この方々なら、
信頼置ける、
と。
「辞めてください!」ニルギル様。
「頭を上げて下さい!」スルジニア様。
「そうです。私達はそのお姿を待っていたのですから!」サリュート様。
皆様が慌てて近づいて来たのが音で分かり、肩を触り、頭を上げて下さいと何度と声が聞こえ、上げた。
皆様の暖かい眼差しに、より心を強く持てた。
「ありがとうございます。では、期限を設けた方がより一層の気が引き締まるかと思いますので、とりあえず1週間間後に御報告をお願い致します。また、その際に、どなたに声をかけ、どのように声をかけたかなど詳細もお願いします。勿論、ご自分の至らなかった点を書いて頂ければより結構ですです」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
あら?皆様固まってしまった。
「もう少し短い方が宜しいですか?」
「いえ、結構です!」
スルジニア様がとんでもない、と即座に答えたのに、サリュート様とニルギル様が苦笑いしされた。
その後、もう少しお手柔らかに、と言われ、スティング様は厳しすぎます、と言われてしまった。
でも、期間を決めた方が自分を追い込み、より細かい仕草を見極めることが出来るし、自分の愚かな点を瞬時に気付けます。
それを説明すると、
スティング様みたいに出来ません!
スティング様が凄すぎるんです!!
と、皆様が必死に言われ、結局期限はなしとなった。
だが、何かあれば直ぐに報告すると言う事になり、皆様がほっとしていたが、
期限があった方がいいと思うけど、
とやっぱり私は思った。

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