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51公爵派のお茶会2

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ふうん、とスルジニア様が少しして、微妙な返事をし、そわそわしだした。
「どうしたの、スルジニア様?」
ニルギル様がおっとりとした口調で、心配そうに声をかけた。
「あの、お茶会の方々は、何か処罰があるのですかぁ?」
思い切ったように聞いてきた。
「いいえ。特にはないわ。クレス様にしてもロール様にしても、フィー皇子様とカレン皇女様は特に何も仰らなかったし、王妃様的には突き放してしまえばお終いでしょうからね。コリュ様とルイージ様はタイミングが悪かった、と言うしかありませんね」
だが、こうやって考えれば、どの家も王妃様には大した事は無い、という事だ。
「良かったです!じゃあクレスの家はお咎めは無いのでね」
ああ、そういう事か。
「そうでしたね、スルジニア様はクレス様と同じ学年でしたもの」
とても嬉しそうに安堵するスルジニア様は、私の言葉にふるふると首を振った。
「違い、ます。高等部に入ってからは殆ど口を聞いていおりません。私・・・黙っていたけど、クレスは幼なじみなのです。それと、コリュもそうです」
俯き、小さい声で言う言葉に、空気が重たくなった。それよりもスルジニア様がとても辛そうな顔に、誰もが心配そうに見つめた。
「お話を聞いてもいいかしら?」
促すと、頷かれた。
「私たち3人はお父様の仕事の関係でそれぞれの屋敷は近くはありませんでしたが、家族ぐるみの付き合いをしていました。でも、クレスが中等部に入ってすぐに、お金の工面を王妃様にしてもらったから、これからは一緒にはいられない、と泣きながら言ってきました。クレスのお父様の事業があまり上手くいっていないのは知っていましたが、まさか、そこまで酷いとは思っていませんでした」
家の事業が傾けば、全て失う。ましてや当主となれば、自分だけでなく、色々な所へ被害は及ぶ。
その為に、事業を続ける事が得策なのか、見切りをつけるかは難しいが、続けたかったのだろう。
「お父達同士が何度も話し合いをしていましたが、おじ様はお父様からお金を借りる事を嫌がり、結局王妃派となりました。それからクレスは人が変わったようになりました」
レテル子爵としては、友人であるテンサリー侯爵様に頼みたくなかったのだろう。
自分の事は自分で、という信念なのかもしれないが、その気持ちは分かるが、
その傘に入るべきでは無かった。
それに、スルジニア様の話からクレス様の様子で幾つか納得する所があった。
無理に笑った顔に、無理に大声を出し、時折見せる疲労の色が、本心だったのだろう。
「お茶会が失敗に終わり、王妃様から資金が打ち切られましたが、おじ様はとても晴れやかな顔で屋敷にやって来ました。事業をかなり縮小し、細々とやって行くと、そうして、クレスはコリュと婚約をする事を決めた、と教えてくれました」
「待って」
幼なじみが幸せになれて、嬉しい気持ちはわかる。でも、おかしいわ。
「申し訳ないけれど、クレス様のお茶会から差程日にちは経っていません。あの時、クレス様は、平民となられるコリュ様をとても拒んでいた。それなのに、婚約されるのですか?」
「それは・・・クレスのお祖母様が平民出身だったからです。とても口では説明出来ないような辛い生活をされていたようです。それでも必死に頑張り、クレスのお母様をレテル子爵の目に留まらせた、と言っていました。だから・・・クレスは平民にはなりたくなかったのです」
頭の中で、バン、と何か弾け答えが浮き上がった。
あの時クレス様に感じたのはこれだったのだ。あの平民という言葉から感じたのは、
恐怖。
それも、お2人の共通の思い、と願いが、あまりに真摯すぎて、違和感を感じたのだ。
「・・・そこまで嫌がるのに、何故婚約を?」
「2人はずっと好き同士でしたもの。確かにコリュが平民になるのは嫌だ、と何度も言っていました。でも、コリュと話をして決めた、と嬉しそうに教えてくれました。今、クレスは王妃派でも無いので、昔みたいに遊びに来てくれます。卒業したら、コリュと一緒に街で暮らすと言っていました」
2人は、
愛を、
とったのね。
立場や、
権力や、
お金ではなく、
自分の気持ちに素直になったのだ。
「コリュ様は何故王妃派になったの?」
「コリュの家は昔から葡萄農園をしているのです。それでワインを作っているのですが、売れ行きが芳しくなて、それで王妃様が取引先を紹介してくれる約束をした、と聞いています。ですが、その取引先はとてもいい所だったらしいのですが、いい値段で買って貰えなくて困っていると言っていました」
それはそうだろう。
見も知らない相手先から、知りもしない品物を、相手のいい値段で買う訳がない。
逆に品物が良ければ、相手の足元を見て、安くで買い叩くだろう。勿論王妃様が、親身になって対応すれば別だろうが、恐らく大手の取引先業者を紹介しただけだろう。
約束は守っているが、最低なやり方だ。
「でも、爵位返上した後、葡萄園を親戚と少しずつやって行く、と言っていました」
幸せそうにスルジニア様は言うが、そう簡単にはいかないだろうし、どれだけ借金もあるかも分からない。
でも、本当に流れがこちらに来ている。
「スルジニア様、お茶を新しく入れてもらって。そして、人払いをお願いします」
私の微笑みと共に、ふわりと風がふき、髪が優しく揺れた。

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