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第1部

50公爵派のお茶会1

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「昨日のロール様のお茶会、一悶着あったと聞きましたよ」
サリュート様の嬉しそうな言葉に、持っていたお茶を零しそうになった。
一悶着。
最近良く聞く言葉だわ。
「私も聞きました!」
ニルギル様は目をキラキラさせ同意された。
「何ですの?何があったのですか?」
口をとがらせ可愛らしい声でせがむ、今日のお茶の招待主スルジニア様が身を乗り出し、皆様の顔を見る。
昨日に続き、今日もお茶会に招待され来ているが、今回は公爵派の方々で、皆様が避暑地に向かわれる前に、近況報告という名目で集まった。
久しぶりだ。
毎週殿下とのお茶会、
気を遣う王妃派のお茶会、
それと家柄的にどうしても多いパーティー参加、
そのせいで中々集まる機会がない。
けれど、今年はフィーとカレンがいるおかげで、お2人を優先する様に、と国からのお達しもあり、お2人の立場考慮し、パーティーを断る事も出来た。
ちなみに今日のお茶会には、2人は不参加だ。
明日は公爵派よ、
と伝えると、
それなら邪魔できない、と気を遣ってくれ、クルリとまた布を見に行く、と街へ出かけた。
それもそれで、不安だわ。
クルリの、お嬢様、任せといてくださいね!
と、
カレンの、スティング、私の趣味で行くわよ!
と、
フィーの、俺も小説読み直したから大丈夫だ!
の、
3人の朝食後の言葉に、正直私もついて行きたかったが、昨夜色々考えた結果、このお茶会を不参加には出来なかった。
一抹どころか十抹どころの不安を胸に、見回した。
私の右横に座るのが、サリュート様。
ドラジェウム侯爵様のご息女で、20歳。お兄様の悪友であり、キツめ綺麗な方でサバサバとした姐御肌の性格だ。
そうね、カレンに似ているかもしれない。
私の左横に座る、ニルギル様。
シャンティ伯爵家のご息女で、23歳。この中でも最も年上だが、少しふくよかな丸いお顔のせいか、可愛らしく若く見える。おっとりとした方だ。
お姉様、といった優しい方だ。
私の前に座るのが、スルジニア様。
テンサリー侯爵様のご息女で、年は16歳。同じ学園に通い、とても可愛らしい顔と声で、甘え上手だ。
妹、といった微笑ましい方だ。
「何ですの?教えてくださいよぉ」
頬を膨らませ、スルジニア様が駄々をこねる言い方が、いつも場を和やかにさせてた。
「スティング様、私が説明しても宜しいですか?」
サリュート様が確認の為聞いて下さった。
「か、構いませんよ。でも、でも、一悶着という程でもないかと思いますよ」
何故か慌てる自分が恥ずかしかった。
サリュート様が昨日の説明をしてくれたが、驚く程正確だった。招待客から聞いた感じではない。
何故って、招待客は興味津々の顔で見ていたが、当然側に寄れるわけがない。それなのに、サリュート様のお話は感心する程詳細だった。
話が終わると、皆様、頬を染め凄いわ、見たかったわ、と私を食い入るように見るから、恥ずかしかった。
「えーと、まあ、その、サリュート様のお話通りですけれど、何処でお聞きになったの?」
「御本人ですわ」
意地悪な微笑み浮かべ、1口お茶を飲むとカップを置かれた。
「ホッリュウ伯爵様ですか?」
「はい。昨夜遅く酷い憔悴状態と慌てた様子で我が家に駆け込んでこられ、一目見て尋常ではない、とお父様は判断されましたが、」
そこで言葉を切り、くいと顎を上げた。
「私が玄関ホールで十分です、と助言して差上げました。疲れた顔をしているからと言っても、敵を我が屋敷に上がり込ませる等許せません」
当然ね。
「お父様は少し可哀想だというお顔でしたがね。そうしまたら、伯爵様は酷く私を睨んで参りましたが、その様子をお父様は見逃さず、玄関の扉入口まで下がれ、と一喝されていました。渋々下がりましたが、入口まで来ると急に、土下座が始まりました」
ちょっとそれは見てみたかったわ。
「土下座!?」
スルジニア様が驚いた。
「元々昨日のお茶会は他の方が教えて下さいました。スティング様のご勇姿を見れないのと、ホッリュウ伯爵様の無様な姿が見れなくて残念だった、と家族で夕食時に話をしていたのに、まさか当の御本人が助けを求めに来るとは思いもしませんでした」
「成程ね。私に許しを乞えませんでしょうしね。それに昨夜、という事は先に王妃様に御報告された結果が、思わしくなかったのでしょうね。それで、どう助けを求めて来たのですか?」
「公爵派の味方となり、王妃様の内情を逐一報告します、と。だから、金を貸してください、との事でした」
「ワインの支払いでしょうね。調べましたら、およそ1年でホッリュウ伯爵家の全財産を高利貸に取られる計算でした」
お茶会の事をお父様に報告したら、直ぐにガーフィー公爵様に、商人が幾らふっかけたかを聞いてくる、と嬉しそうに出かけられた。
そうしたら、ガーフィー公爵様が、何処の高利貸で借りたかも聞いてくれたようだが、かなり悪質な高利貸しらい。幾らでも貸してくれるらしいから、直ぐに返せるなら便利だろうが、こうやってアテが外れれば落ちるだけだ。
「そんなに、借りちゃったのですかぁ?そんなに高いワインだったのですかぁ?」
「偽物ですけれどね。ですが、本物、偽物、関係ありません。ホッリュウ伯爵様がご自分で認めた品物に代金を支払っだけの事です。その支払いに当てようとした金が、ご自分の力の無さで手に入らなかっただけです」
見る目がなかった、というだけの事だ。
私の言葉に、皆様が急に真顔になり私を見つめた。
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