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1曲踊ると、王宮召使いが、呼びに来た。
「陛下がお呼びです」
「分かりました」
「俺も行くわ」
「私もよ」
いつの間にかカレンが、側に来ていた。
「申し訳ございませんが、呼ばれているのはヴェンツェル公爵令嬢のみとなっております」
慌てる召使いを無視して、私達は陛下の待つ奥へと向かった。
ご立腹の陛下と、
珍しく眉間を寄せた王妃様、
楽しそうに笑う殿下とレインが待っていた。
フィーとカレンが一緒にいるのが気に入らないのだ。
王妃様、何もかもがあなたの思う通りには、もういかないわ。
「お呼びとの事でまいりました」
「スティング殿、これはどう言う事だ!?ガナッシュと参列する事を拒み、ダンスも拒むとは、何を考えている!?」
陛下の詰問に、首を傾げた。
ふん。
おかしな事を言うわね。
「私が参列を拒んだ?仰ている意味が分かりません。私は今日はご一緒に、と前々からお願いをしておりましたが、それを拒んで来られたのは殿下でございます」
「まあ!?陛下聞きましたか!?ガナッシュが拒んだ、といけしゃあしゃあと陛下と帝国皇子、皇女の御前で嘘を申しております。また、被害妄想ですか。はあ、困った方ですわね。直ぐにバレてしまう嘘が何の意味がありますの?」
「恐れ入りますが王妃様、私は嘘はついておりません。私は、控え室で殿下の来るのを待っておりましたが、一向に来る気配はなく、仕方なくフィー皇子様とカレン皇女様とご一緒に参りました」
珍しく私が返答したのが、気に入らないようで睨んできた。
「また、何を言うかと思えば、そのような嘘ばかりを言う。ガナッシュはあなたを迎えに行ったが断ってきた、と言っていましたよ」
大きなため息をつき、愚か女だ、と同意を求めるようにフィーとカレンを見たが、直ぐに、顔色を変えた。
「あら、その話では殿下が私がいる控え室にこられた、という事ですね?フィー皇子様、カレン皇女様、殿下は来ましたか?」
あえて困った顔をして、2人に質問をした。
「いいえ」
「いいや」
2人の即答、陛下以外の顔が引き攣った。
さすがに陛下とは口裏合わせはしなかったのね。
「私の控え室に、お2人ともご一緒におられました。つまり、王妃様は、私だけでなく、お2人も嘘をつき、被害妄想を持っていると仰っておられるのですよ。それとも、やはり私達が嘘をついているでしょうか?」
「・・・ご一緒に・・・おられたのですか?」
「そのような事も確認されておられないのですか?控え室の前には帝国の護衛がおられた。その中を殿下は参られた、と王妃様も殿下も仰っている。これは、護衛の方に確認すべきですね、フィー皇子様、カレン皇女様」
「そうね。もしかしたら、護衛の者が追い返した、という事もあるかもしれないわね。ザン、ここへ!!」
カレンの声がホールに響き、すっと、黒い服を着た護衛の1人が近づき膝を着いた。
「参りました」
「あなた、護衛中に、あの王子を部屋に入るのを断った?」
さすがに青くなった殿下を指さすカレンに、ザンと呼ばれた男性は直ぐに首を振った。
「いいえ。どなたも部屋に近づいた方はおられません」
「ありがとう。戻って」
「はい」
静かに去っていった。
「もう宜しいです、カレン皇女様。殿下はきっと心の中で私を迎えに来てくださったのです。体はレイン様とご一緒で、それで満足されているので、少し勘違いしておられるのです。つまり、殿下も私も嘘はついておりません」
ねえ、
殿下、
あなたは約束を守らなかった。
「それで宜しいですね、陛下、王妃様、殿下」
それなら、
私は殿下を護る必要は無いわ。
「あ、いや・・・そうだな」陛下。
「・・・それで宜しいわ」王妃様
「その通りだ。心の中で呼びに行ったのだ」殿下。
「さすがスティングだね。頭いいね」レイン。
愚かな人達だわ。
「何故って、今更私は何も求めておりません。ここで波風たてたところで、私がおかしいと思われるだけでございます。配慮が足りなかったのは私の方です。元々殿下に何かを期待するなど愚かな考えですね。何一つ私の言葉が通じない方々ですのに、その方々の言葉を私が真に受けたのが間違いだったのでます」
微笑みながら、スラスラと出てくる言葉に、王妃様と殿下は頬を引きつらせ、睨んできた。
「スティング!」
フィーの私の名を呼ぶと同時に、ぽたりと顎から何か落ちた。
・・・あ・・・。
フィーの声で、
足元が崩れる感覚をやっと感じる事が出来た。
「・・・お見苦しい所を申し訳ありません。お祝いの中このような姿はお目汚しとなりますので、これで失礼致します」
喉が痛くなる中、嗚咽を必死に我慢し、言葉を出し頭を下げた。
ぽたぽたと床に幾つも落ちていく。
扇で顔を隠し、背を向けホールを出た。
「待て、スティング!誰も来るな!!」
背後からフィーの声が響いた。
カツカツと自分のヒールの音と、混ざるように追ってくる足音が追いつき、ぎゅっと私の手を握ってきた。
「部屋を開けろ!」
フィーの声に、近くにいた召使いが部屋を案内し私を中へ入れた。
「誰も入るな」
そういうと扉を閉めた。


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