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第1部
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「今日はお招きありがとうございます」
軽く裾を持ち挨拶した。
「まあ!これは、フィー皇子様にカレン皇女様!本当に参加して頂きありがとうございます。主人であるレテル子爵に変わり、ルイージ・レテルがご挨拶させて頂きます」
レテル子爵婦人がにこやかに声上げた。
今日は約束のお茶会の日です。
婦人とクレス様がにこにこと、お2人を見ていたが、フィーもカレンも真顔で無言だった。
暫くの沈黙が流れた上に、この場を誰も動かなかった。
流石に様子がおかしいと思ったのだろう、不安そうな顔になりながら、婦人は口を開いた。
「本日は我が家のお茶会に来て頂き嬉しく思います。フィー皇子様、カレン皇女様」
「は?」
カレンの不機嫌な一声が空気を変えた。
周りの握やかな声が異様に耳に響く。
「・・・あ、あの・・・カレン皇女様?」
「ねえ、フィーこの人達馬鹿?それとも、私達が馬鹿にされてる?」
「俺達の事を馬鹿にしてるんだろ?」
怒っているな。
いや、怒って当然か。
「な、何を仰っているのでしょうか?気に触る事をしてしまったのなら謝罪致します!」
婦人が慌てて腰を低くしたが、全く気づいてないだろう。
だって、この人達にしたら、挨拶しかしてないもの。
でも、
挨拶したよね。
「ふうん。これって、また教えて上げなきゃいけない場面?なんかさあ、この間の誰かさんと一緒じゃない?スティング様、つまり、この方もご友人なのかな?」
「仰る通りでございます」
「やっぱりか」
私の返事にカレンが苦虫を噛み潰したような顔になった。
「お待ち下さい!誰とご友人でしょうか!?そのような浅はかな方と御一緒にされては困ります!」
「殿下です」
「・・・は・・・?」
即答の私に、絶句した。
「じゃあ教えて上げないと分かんないよね。このお茶会、私達招待されてないの。だって来て、と言われたけれど招待状貰ってないもの。つまり、ヴェンツェル公爵令嬢スティング様のお口添えで参加させて貰っているのに、何故、そのスティング様に礼を言わず私達に言うの?それってさあ、公爵令嬢を見下してる?たかが子爵のあなたが?それも、そこの女」
すっとクレス様を指さした。
「私達に対して、名も名乗らなかった」
笑いながらの高圧は怖い。
「低く見られたものね、帝国皇子、皇女も」
「・・・そんな・・・私・・・言いません・・・でしたか・・・?」
ああ・・・。
この空気を読めない返事、止めて欲しい。
「へえ」
うっわ、上からの笑いながらの声、怖いってば。
「では、私が嘘を言っているのかしら?」
「申し訳ありません!!私は名乗っておりません!!」
「認めればいいのよ。それで?」
カレンの言葉にまた、沈黙が流れた。
だから、気づいてよ。何故こうなったのかを。
こっちが胃が痛くなりそうだわ!
「・・・あ、あの・・・?」
婦人の分かりませんという顔と言葉に、
馬鹿!!
と思った私は仕方ないだろう。
「今日はお招きありがとうございます!」
語尾強く、また、言ってあげた。
やっと気づいたようで、はっと私を見た。
「こ、これはヴェンツェル公爵令嬢スティング様、フィー皇子様、カレン皇女様、お忙しい中、良く我が家のお茶会に来て頂き嬉しく思います」
はあ。
御正解です、レテル婦人。
「いいえ、ご招待ありがとうございます」私。
「ご招待、ありがとうございます」フィー。
「ご招待、ありがとうございます」カレン。
やっと次に進めたわ。
軽く裾を持ち挨拶した。
「まあ!これは、フィー皇子様にカレン皇女様!本当に参加して頂きありがとうございます。主人であるレテル子爵に変わり、ルイージ・レテルがご挨拶させて頂きます」
レテル子爵婦人がにこやかに声上げた。
今日は約束のお茶会の日です。
婦人とクレス様がにこにこと、お2人を見ていたが、フィーもカレンも真顔で無言だった。
暫くの沈黙が流れた上に、この場を誰も動かなかった。
流石に様子がおかしいと思ったのだろう、不安そうな顔になりながら、婦人は口を開いた。
「本日は我が家のお茶会に来て頂き嬉しく思います。フィー皇子様、カレン皇女様」
「は?」
カレンの不機嫌な一声が空気を変えた。
周りの握やかな声が異様に耳に響く。
「・・・あ、あの・・・カレン皇女様?」
「ねえ、フィーこの人達馬鹿?それとも、私達が馬鹿にされてる?」
「俺達の事を馬鹿にしてるんだろ?」
怒っているな。
いや、怒って当然か。
「な、何を仰っているのでしょうか?気に触る事をしてしまったのなら謝罪致します!」
婦人が慌てて腰を低くしたが、全く気づいてないだろう。
だって、この人達にしたら、挨拶しかしてないもの。
でも、
挨拶したよね。
「ふうん。これって、また教えて上げなきゃいけない場面?なんかさあ、この間の誰かさんと一緒じゃない?スティング様、つまり、この方もご友人なのかな?」
「仰る通りでございます」
「やっぱりか」
私の返事にカレンが苦虫を噛み潰したような顔になった。
「お待ち下さい!誰とご友人でしょうか!?そのような浅はかな方と御一緒にされては困ります!」
「殿下です」
「・・・は・・・?」
即答の私に、絶句した。
「じゃあ教えて上げないと分かんないよね。このお茶会、私達招待されてないの。だって来て、と言われたけれど招待状貰ってないもの。つまり、ヴェンツェル公爵令嬢スティング様のお口添えで参加させて貰っているのに、何故、そのスティング様に礼を言わず私達に言うの?それってさあ、公爵令嬢を見下してる?たかが子爵のあなたが?それも、そこの女」
すっとクレス様を指さした。
「私達に対して、名も名乗らなかった」
笑いながらの高圧は怖い。
「低く見られたものね、帝国皇子、皇女も」
「・・・そんな・・・私・・・言いません・・・でしたか・・・?」
ああ・・・。
この空気を読めない返事、止めて欲しい。
「へえ」
うっわ、上からの笑いながらの声、怖いってば。
「では、私が嘘を言っているのかしら?」
「申し訳ありません!!私は名乗っておりません!!」
「認めればいいのよ。それで?」
カレンの言葉にまた、沈黙が流れた。
だから、気づいてよ。何故こうなったのかを。
こっちが胃が痛くなりそうだわ!
「・・・あ、あの・・・?」
婦人の分かりませんという顔と言葉に、
馬鹿!!
と思った私は仕方ないだろう。
「今日はお招きありがとうございます!」
語尾強く、また、言ってあげた。
やっと気づいたようで、はっと私を見た。
「こ、これはヴェンツェル公爵令嬢スティング様、フィー皇子様、カレン皇女様、お忙しい中、良く我が家のお茶会に来て頂き嬉しく思います」
はあ。
御正解です、レテル婦人。
「いいえ、ご招待ありがとうございます」私。
「ご招待、ありがとうございます」フィー。
「ご招待、ありがとうございます」カレン。
やっと次に進めたわ。
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