11 / 105
第1部
11
しおりを挟む
「学生、だから?」
「そ、そう、そうです。少しおふざけが過ぎただけです」
ああ・・・。
駄目ですってば、何故素直に謝れないのですか。
「そこの2人、名を名乗りなさい!」
カレンは叫び、殿下の背後にいる2人を指さした。
逆鱗に触れた。
なんて、相応しい言葉だろう。
黒髪と漆黒の瞳が燃えるように見え、襲い被さるようにとてもカレンが大きく見え、恐ろしくも綺麗だった。
「ド、ドレシャン・フィルタでごさまいます」
「コリュ・テレリナ。テレリナでごさまいます」
弾かれたように声を出し名を言った。
理解した。
カレンはわざと2人の名前を周りにいる生徒に聞こえるようにしているのだ。
帝国皇子と皇女の機嫌を損ねた2人だと、周囲に知らしめ、そうして殿下もいるのだと、より注目させる為に。
「王子、私達がこの国で過ごす日々のことは、全て帝国に報告する事になっている。一語一句詳細に。この国での処分が出来ないのなら、変わりに私がやってあげるわ。王子もろともご一緒に、帝国裁判に!学生のおふざけ!?そんな態度をこの国では公爵令嬢に平然とするとなれば、帝国皇女として見逃せないわ!!」
「申し訳ありません!!」
「座るな!」
膝をつこうとした3人を、フィーが鋭く止めた。
「カレン、少し落ち着こう。俺も納得はしないが、見る目のない王子がやっと自分の周りには無能な友人しか居ないと気づけたんだ。少し様子を見てやろう」
「はあ。そう?フィーがそう言うなら、仕方ないわねえ。じゃあ王子、そちらで処分を決めて、国を通じて帝国に書面を送って頂戴」
不謹慎ながらも少し笑いが出そうで、下を向いて一生懸命に我慢した。
2人とも急に演技っぽくなったのだもの。本気で帝国裁判にかける気は無いんだわ。
「え・・・帝国にですか?」
大袈裟だ、と驚くのと、この件に殿下本人が関わっているから、都合良く書けない。
「当たり前でしょ?今日の事は報告されるのよ。その報告と、この国での処分を照らし合わせて、本当に正しいものかを判断するわ。喜んでよ。わざわざ、皇后様から判断を頂くわ」
うわあ、絶対逃げられないようにしたわね。
皇后、つまりはお2人のお母様だ。何度かお会いしたことがあるが、お2人が留学の為、ご一緒に過ごす時間が少ないせいか、何かのパーティー等で久しぶりにお会い出来るととても嬉しそうで、いつもお2人に側にいて心配をしていた。
微笑ましかった。
という事は、その処罰にこの2人が納得しなかったら皇后様は頷かないだろうな。
「さ、じゃあ教室に戻りましょう?そろそろ授業始まるわよ。王子、スティング様」
「そう・・・ですね」
人は気持ちに正直なのだな、と殿下を見て感心した。
意思がないようなふらふらな足取りなのに、脱兎のごとく早歩きで何にもつまずく事無く歩いていった。
気持ちはわかるわ。
「俺達も行こう」
フィーの少し気を使ったような微笑みに、有難く、心が暖かくなった。
歩き出すと予鈴がなった。
普段こんな時間ギリギリに生徒はいないはずなのに、沢山の生徒が同じように早歩きしていた。
逆の立場だったら、私も気になって見てしまうわ。
「どうして分かったの?・・・私を助けに来てくたのでしょう?」
「・・・前から知っていたんだ。本当は前から助けたかったんだが、話もしていないのに助けるのはおかしいだろ?」
「でも、もう友達よ。私カッコよくなかった!?ビビを助ける親友!これ、小説に幾つも載ってて、やってみたかったの!!」
そっち?
「違うだろ!ほら、スティングが呆れてるだろ!!違うから。ずっと前から友達になりたかったんだ。だから」
「そうそう、ずっと前からね」
「う、うるさい!えーと、友達になったから、護れるように護衛つけた?あれ?違うな」
「落ち着きなよ、フィー。つまりね、前から気になってけど接点がない私達が口出すのはおかしいでしょう?でも、友達なら、困ってたら助けたいもの。だから、私達の護衛でついてる1人をスティングに回したの。その護衛から連絡が来たから急いで来た、という訳」
「いいの、そんな人を私につけて!?帝国の護衛と言ったら精鋭部隊でしょう?」
「いいんだ、友達なんだから」
フィーの微笑みが私の胸を突き刺した。
また、
胸が苦しい。
そうか、こんなに優しくされたのは久しぶりだからから、嬉しいのだ。
「ありがとう、フィー、カレン」
素直に言った言葉に、2人は嬉しそうに微笑んでくれた。
助けに来てくれて嬉しかった。
どうしてそう思ったのだろう?
私は、殿下に何をされても、これまで何とも思わなかったのに、何故、フィーとカレンの行動にこんなにも温かい気持ちになり、殿下に対しての気持ちが落ち着いているのだろう?
「そ、そう、そうです。少しおふざけが過ぎただけです」
ああ・・・。
駄目ですってば、何故素直に謝れないのですか。
「そこの2人、名を名乗りなさい!」
カレンは叫び、殿下の背後にいる2人を指さした。
逆鱗に触れた。
なんて、相応しい言葉だろう。
黒髪と漆黒の瞳が燃えるように見え、襲い被さるようにとてもカレンが大きく見え、恐ろしくも綺麗だった。
「ド、ドレシャン・フィルタでごさまいます」
「コリュ・テレリナ。テレリナでごさまいます」
弾かれたように声を出し名を言った。
理解した。
カレンはわざと2人の名前を周りにいる生徒に聞こえるようにしているのだ。
帝国皇子と皇女の機嫌を損ねた2人だと、周囲に知らしめ、そうして殿下もいるのだと、より注目させる為に。
「王子、私達がこの国で過ごす日々のことは、全て帝国に報告する事になっている。一語一句詳細に。この国での処分が出来ないのなら、変わりに私がやってあげるわ。王子もろともご一緒に、帝国裁判に!学生のおふざけ!?そんな態度をこの国では公爵令嬢に平然とするとなれば、帝国皇女として見逃せないわ!!」
「申し訳ありません!!」
「座るな!」
膝をつこうとした3人を、フィーが鋭く止めた。
「カレン、少し落ち着こう。俺も納得はしないが、見る目のない王子がやっと自分の周りには無能な友人しか居ないと気づけたんだ。少し様子を見てやろう」
「はあ。そう?フィーがそう言うなら、仕方ないわねえ。じゃあ王子、そちらで処分を決めて、国を通じて帝国に書面を送って頂戴」
不謹慎ながらも少し笑いが出そうで、下を向いて一生懸命に我慢した。
2人とも急に演技っぽくなったのだもの。本気で帝国裁判にかける気は無いんだわ。
「え・・・帝国にですか?」
大袈裟だ、と驚くのと、この件に殿下本人が関わっているから、都合良く書けない。
「当たり前でしょ?今日の事は報告されるのよ。その報告と、この国での処分を照らし合わせて、本当に正しいものかを判断するわ。喜んでよ。わざわざ、皇后様から判断を頂くわ」
うわあ、絶対逃げられないようにしたわね。
皇后、つまりはお2人のお母様だ。何度かお会いしたことがあるが、お2人が留学の為、ご一緒に過ごす時間が少ないせいか、何かのパーティー等で久しぶりにお会い出来るととても嬉しそうで、いつもお2人に側にいて心配をしていた。
微笑ましかった。
という事は、その処罰にこの2人が納得しなかったら皇后様は頷かないだろうな。
「さ、じゃあ教室に戻りましょう?そろそろ授業始まるわよ。王子、スティング様」
「そう・・・ですね」
人は気持ちに正直なのだな、と殿下を見て感心した。
意思がないようなふらふらな足取りなのに、脱兎のごとく早歩きで何にもつまずく事無く歩いていった。
気持ちはわかるわ。
「俺達も行こう」
フィーの少し気を使ったような微笑みに、有難く、心が暖かくなった。
歩き出すと予鈴がなった。
普段こんな時間ギリギリに生徒はいないはずなのに、沢山の生徒が同じように早歩きしていた。
逆の立場だったら、私も気になって見てしまうわ。
「どうして分かったの?・・・私を助けに来てくたのでしょう?」
「・・・前から知っていたんだ。本当は前から助けたかったんだが、話もしていないのに助けるのはおかしいだろ?」
「でも、もう友達よ。私カッコよくなかった!?ビビを助ける親友!これ、小説に幾つも載ってて、やってみたかったの!!」
そっち?
「違うだろ!ほら、スティングが呆れてるだろ!!違うから。ずっと前から友達になりたかったんだ。だから」
「そうそう、ずっと前からね」
「う、うるさい!えーと、友達になったから、護れるように護衛つけた?あれ?違うな」
「落ち着きなよ、フィー。つまりね、前から気になってけど接点がない私達が口出すのはおかしいでしょう?でも、友達なら、困ってたら助けたいもの。だから、私達の護衛でついてる1人をスティングに回したの。その護衛から連絡が来たから急いで来た、という訳」
「いいの、そんな人を私につけて!?帝国の護衛と言ったら精鋭部隊でしょう?」
「いいんだ、友達なんだから」
フィーの微笑みが私の胸を突き刺した。
また、
胸が苦しい。
そうか、こんなに優しくされたのは久しぶりだからから、嬉しいのだ。
「ありがとう、フィー、カレン」
素直に言った言葉に、2人は嬉しそうに微笑んでくれた。
助けに来てくれて嬉しかった。
どうしてそう思ったのだろう?
私は、殿下に何をされても、これまで何とも思わなかったのに、何故、フィーとカレンの行動にこんなにも温かい気持ちになり、殿下に対しての気持ちが落ち着いているのだろう?
875
お気に入りに追加
2,754
あなたにおすすめの小説
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
あなたたちのことなんて知らない
gacchi
恋愛
母親と旅をしていたニナは精霊の愛し子だということが知られ、精霊教会に捕まってしまった。母親を人質にされ、この国にとどまることを国王に強要される。仕方なく侯爵家の養女ニネットとなったが、精霊の愛し子だとは知らない義母と義妹、そして婚約者の第三王子カミーユには愛人の子だと思われて嫌われていた。だが、ニネットに虐げられたと嘘をついた義妹のおかげで婚約は解消される。それでも精霊の愛し子を利用したい国王はニネットに新しい婚約者候補を用意した。そこで出会ったのは、ニネットの本当の姿が見える公爵令息ルシアンだった。
私が産まれる前に消えた父親が、隣国の皇帝陛下だなんて聞いてない
丙 あかり
ファンタジー
ハミルトン侯爵家のアリスはレノワール王国でも有数の優秀な魔法士で、王立学園卒業後には婚約者である王太子との結婚が決まっていた。
しかし、王立学園の卒業記念パーティーの日、アリスは王太子から婚約破棄を言い渡される。
王太子が寵愛する伯爵令嬢にアリスが嫌がらせをし、さらに魔法士としては禁忌である『魔法を使用した通貨偽造』という理由で。
身に覚えがないと言うアリスの言葉に王太子は耳を貸さず、国外追放を言い渡す。
翌日、アリスは実父を頼って隣国・グランディエ帝国へ出発。
パーティーでアリスを助けてくれた帝国の貴族・エリックも何故か同行することに。
祖父のハミルトン侯爵は爵位を返上して王都から姿を消した。
アリスを追い出せたと喜ぶ王太子だが、激怒した国王に吹っ飛ばされた。
「この馬鹿息子が!お前は帝国を敵にまわすつもりか!!」
一方、帝国で仰々しく迎えられて困惑するアリスは告げられるのだった。
「さあ、貴女のお父君ーー皇帝陛下のもとへお連れ致しますよ、お姫様」と。
******
週3日更新です。
契約婚ですが可愛い継子を溺愛します
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
恋愛
前世の記憶がうっすら残る私が転生したのは、貧乏伯爵家の長女。父親に頼まれ、公爵家の圧力と財力に負けた我が家は私を売った。
悲壮感漂う状況のようだが、契約婚は悪くない。実家の借金を返し、可愛い継子を愛でながら、旦那様は元気で留守が最高! と日常を謳歌する。旦那様に放置された妻ですが、息子や使用人と快適ライフを追求する。
逞しく生きる私に、旦那様が距離を詰めてきて? 本気の恋愛や溺愛はお断りです!!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/09/07……カクヨム、恋愛週間 4位
2024/09/02……小説家になろう、総合連載 2位
2024/09/02……小説家になろう、週間恋愛 2位
2024/08/28……小説家になろう、日間恋愛連載 1位
2024/08/24……アルファポリス 女性向けHOT 8位
2024/08/16……エブリスタ 恋愛ファンタジー 1位
2024/08/14……連載開始
訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果
柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。
彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。
しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。
「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」
逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。
あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。
しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。
気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……?
虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。
※小説家になろうに重複投稿しています。
さて、質問です
さち姫
恋愛
ソカリナ公爵の長女として生まれたラヤは、出来の悪い第2王子イエーガーの婚約者。
だがイエーガー王子は女性好きで、いつもラヤではなく、ほかの女性といた。
その取り巻きの女性達が、自分の方が婚約者に相応しいと、ラヤに嫌がらせをしてくる。
私、婚約破棄希望ですが、
そんな幼稚な手で嫌がらせをしてくるなら、
受けてたちますよ
さて、
質問です。
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる