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Chapter02 色付く世界
Dream 033
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「この教会みたいな場所が……クエストの発生場所ですか?」
目の前にある小さな教会は見るからに廃れていた。
真っ白であっただろう表面は蔓草に覆われ、ところどころひび割れた外壁は苔むしている。
辺鄙な場所にあるし、よくゲーム開始3日にしてこの場所でクエストが発生することを突き止めたな、と素直に感心せざるを得ない。
「そうだ。クエスト発生条件の詳細までは知らない。とりあえず一人で中に入ってもらえないか?」
「この中に……ですか?」
不気味な雰囲気を放つ目の前の建物に入ることは、憚られた。
ここはゲームの世界。お化けなんていないと思うが、それでもやっぱり一人は怖い。いや、逆にゲームの世界の方が現実よりもお化けが出る可能性が高いのでは?
そんな想像が私の足を止めてしまう。
というかバルカンは私を嵌めようとしているのでは?
最初からクエストなんてなくて、この建物に閉じ込めるために私を連れ出した。本当はクロギリと仲間で……
「すまんすまん! 流石に一人は不気味だよな。俺も一緒に行く」
怖気付く私の横で、豪快に笑いながら教会の入り口へと進むバルカン。
なんだ、流石に私の考えすぎか……
というわけでバルカンと共に教会の内部へと進んだ。
カビ臭い部屋、何かの儀式に使われたかのような紋様、半分溶けかけた蝋燭。
小さな教会にはたった一つの部屋しかなかった。
「何も、起こらないですね……」
「そうだな。もしかして受注できるのは一人だけなのか──」
バルカンがそこまで言った時。
壁に埋め込まれた小さな神像が輝き出し、目の前にホログラムで投影されたような水色の人影が現れた。
「それはガルー家の紋章…あなたはガルー家の末裔か?」
突如喋り始めた人影。
明らかにイベント発生。
情報屋とやらの情報は正しかったみたいだ。
「違いますが…」
この疑問にはYESと答えるのが正解だっただろうか。
だがそんな判断ミスでクエストが破綻するような設定ではないだろう。
とりあえず嘘をつかずに話を進めてみる。
バルカンは横で腕を組んだ状態で、私とこの人との会話に口を挟むつもりは無さそうだ。
「ではガルー家は滅んだのか?」
「いいえ、この杖はガルー家のお爺さんから頂きました」
「そうか……ガルー家はまだ存在するのだな」
安堵したようなこの人の言葉に、私は胸をギュッと締め付けられた。
ガルー家の末裔であろう、あのお爺さんの孫はクロギリによって殺された。
私のせいで……ガルー家の血筋が途絶えるというこの人の憂う未来が実現してしまうかもしれない。
『ガルー家秘伝』という武器シリーズが存在する以上、私が出会ったお爺さん以外にもガルー家の人間がいるのかもしれないけど…それでも心に引っかかるものはある。
しかしそのことを話すことは出来なかった。
「ガルー家とはいったいなんなんだ? 『迷宮街』でも同じ紋章を見たが……」
口を噤む私を見かねたのか、ここでバルカンが口を挟んできた。
迷宮街? 知らない単語だ。
「ガルー家はエイテッド繁栄を促した五大家の内の一つだ。『世界樹の崩落』のせいで世界は5つに分断され、五大家も分断されてしまったがな」
「世界樹の崩落? お前は何年前の人間なんだ?」
目の前のホログラムに問いただすバルカン。
何年前のヒト、か。目の前の人はNPCであって、実際に大昔に実在していたわけではないだろう。
もちろんバルカンもそれを知っているだろうけど、そんな野暮なことを考えているのは私だけだろうか?
「何年前? わからないな。あれから何年経ったかなど。思い出したくもない。我々の過ちと、世界の崩落を──」
「その世界の崩落ってのについて詳しく教えてくれないか? 抽象的すぎてわからん」
「そうだな……今エンガルの街で『呪い』が流行っていないか?」
「呪い? 何のことだ」
絶妙に噛み合わない会話。やっぱり所詮はAIということなのだろうか?
それにしても呪い、ね。流行っているのかはわからないけど確かに私がこの杖を手に入れるにあたって受注したクエストは、少年の解呪だった。
だとしたら、『解呪』のスキルを持ったクレリックが圧倒的に有利なのじゃないだろうか?
最初に選べる職業が30もあって、このようなゲームは序盤が肝心だと思われるのに、そんな1つの職業を贔屓するようなイベントがあっていいのだろうか?
まだわからない。だから私はここで口を挟んだ。
「確かに私は街の少年にかかっていた呪いを解呪しました。流行しているのかどうかはわかりませんが……」
私は初めてスキルを使った時のことを思い出した。
この世界に囚われて、右も左もわからず駆け出した先で出会ったお爺さん。
……あまりに出来すぎている。ただただ運が良かっただけなのだろうか?
「やはり力を取り戻しつつあるか……」
ホログラムNPCの顔はよく見えないけれど、声がくぐもったのがわかる。力を取り戻す? よくわからない。
「それで、その呪いとやらがなんなんだ?」
話がややこしくなる前に、バルカンが重要そうなことについてのみを聞いていく。
なぜここで呪いについての話が出たのか。世界樹の崩落とはいったいなんなのか。
そして今回受注するクエストの詳細は。それが聞いておくべき内容だろう。
目の前にある小さな教会は見るからに廃れていた。
真っ白であっただろう表面は蔓草に覆われ、ところどころひび割れた外壁は苔むしている。
辺鄙な場所にあるし、よくゲーム開始3日にしてこの場所でクエストが発生することを突き止めたな、と素直に感心せざるを得ない。
「そうだ。クエスト発生条件の詳細までは知らない。とりあえず一人で中に入ってもらえないか?」
「この中に……ですか?」
不気味な雰囲気を放つ目の前の建物に入ることは、憚られた。
ここはゲームの世界。お化けなんていないと思うが、それでもやっぱり一人は怖い。いや、逆にゲームの世界の方が現実よりもお化けが出る可能性が高いのでは?
そんな想像が私の足を止めてしまう。
というかバルカンは私を嵌めようとしているのでは?
最初からクエストなんてなくて、この建物に閉じ込めるために私を連れ出した。本当はクロギリと仲間で……
「すまんすまん! 流石に一人は不気味だよな。俺も一緒に行く」
怖気付く私の横で、豪快に笑いながら教会の入り口へと進むバルカン。
なんだ、流石に私の考えすぎか……
というわけでバルカンと共に教会の内部へと進んだ。
カビ臭い部屋、何かの儀式に使われたかのような紋様、半分溶けかけた蝋燭。
小さな教会にはたった一つの部屋しかなかった。
「何も、起こらないですね……」
「そうだな。もしかして受注できるのは一人だけなのか──」
バルカンがそこまで言った時。
壁に埋め込まれた小さな神像が輝き出し、目の前にホログラムで投影されたような水色の人影が現れた。
「それはガルー家の紋章…あなたはガルー家の末裔か?」
突如喋り始めた人影。
明らかにイベント発生。
情報屋とやらの情報は正しかったみたいだ。
「違いますが…」
この疑問にはYESと答えるのが正解だっただろうか。
だがそんな判断ミスでクエストが破綻するような設定ではないだろう。
とりあえず嘘をつかずに話を進めてみる。
バルカンは横で腕を組んだ状態で、私とこの人との会話に口を挟むつもりは無さそうだ。
「ではガルー家は滅んだのか?」
「いいえ、この杖はガルー家のお爺さんから頂きました」
「そうか……ガルー家はまだ存在するのだな」
安堵したようなこの人の言葉に、私は胸をギュッと締め付けられた。
ガルー家の末裔であろう、あのお爺さんの孫はクロギリによって殺された。
私のせいで……ガルー家の血筋が途絶えるというこの人の憂う未来が実現してしまうかもしれない。
『ガルー家秘伝』という武器シリーズが存在する以上、私が出会ったお爺さん以外にもガルー家の人間がいるのかもしれないけど…それでも心に引っかかるものはある。
しかしそのことを話すことは出来なかった。
「ガルー家とはいったいなんなんだ? 『迷宮街』でも同じ紋章を見たが……」
口を噤む私を見かねたのか、ここでバルカンが口を挟んできた。
迷宮街? 知らない単語だ。
「ガルー家はエイテッド繁栄を促した五大家の内の一つだ。『世界樹の崩落』のせいで世界は5つに分断され、五大家も分断されてしまったがな」
「世界樹の崩落? お前は何年前の人間なんだ?」
目の前のホログラムに問いただすバルカン。
何年前のヒト、か。目の前の人はNPCであって、実際に大昔に実在していたわけではないだろう。
もちろんバルカンもそれを知っているだろうけど、そんな野暮なことを考えているのは私だけだろうか?
「何年前? わからないな。あれから何年経ったかなど。思い出したくもない。我々の過ちと、世界の崩落を──」
「その世界の崩落ってのについて詳しく教えてくれないか? 抽象的すぎてわからん」
「そうだな……今エンガルの街で『呪い』が流行っていないか?」
「呪い? 何のことだ」
絶妙に噛み合わない会話。やっぱり所詮はAIということなのだろうか?
それにしても呪い、ね。流行っているのかはわからないけど確かに私がこの杖を手に入れるにあたって受注したクエストは、少年の解呪だった。
だとしたら、『解呪』のスキルを持ったクレリックが圧倒的に有利なのじゃないだろうか?
最初に選べる職業が30もあって、このようなゲームは序盤が肝心だと思われるのに、そんな1つの職業を贔屓するようなイベントがあっていいのだろうか?
まだわからない。だから私はここで口を挟んだ。
「確かに私は街の少年にかかっていた呪いを解呪しました。流行しているのかどうかはわかりませんが……」
私は初めてスキルを使った時のことを思い出した。
この世界に囚われて、右も左もわからず駆け出した先で出会ったお爺さん。
……あまりに出来すぎている。ただただ運が良かっただけなのだろうか?
「やはり力を取り戻しつつあるか……」
ホログラムNPCの顔はよく見えないけれど、声がくぐもったのがわかる。力を取り戻す? よくわからない。
「それで、その呪いとやらがなんなんだ?」
話がややこしくなる前に、バルカンが重要そうなことについてのみを聞いていく。
なぜここで呪いについての話が出たのか。世界樹の崩落とはいったいなんなのか。
そして今回受注するクエストの詳細は。それが聞いておくべき内容だろう。
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