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2章
71(R-18)
しおりを挟む触れるか触れないか。
微妙な距離のまま指先がまた太ももへと戻っていく。
予想していた刺激が訪れなかった喪失感に、思わず残念そうな声が洩れ出る。
「……ぁ」
「ここは外なんでしょう?」
意地の悪い返しを涙目で睨む。しかし、彼はそれを面白そうに眺める。
その顔になんだか嫌な予感がした。
くるくると円を描くみたいに撫でられたかと思うと指先で突かれる。肉の感触を玩具にされて一方的に蹂躙されているような感覚。
けれど、彼の指が時折秘部を掠めるものだから、そのたびに次こそは触れられるのではないかと意識してしまう。
「っ……ん」
いつ訪れるか分からない刺激は精神と肉体をいやに疲弊させる。
今度こそは敏感な場所へ触れられるかもしれない。そう思って彼の手が近付くたびに身体が大袈裟に跳ねてしまっていた。
(あ、また……)
彼の指戯を身体で覚えているからこそのもどかしさ。やや汗ばんだ太ももを手のひらで下になぞるようにさすっていく。
せめてこれ以上、声は洩らすまいと唇をきつく噛み締めてはいた。だというのに白い太ももは興奮から桃色に染まり、いつの間にかしっとりと汗をかいている。これで感じていないと言い張るのは無理があるのだろう。
「そろそろココに触れられたくはありませんか」
長い指先で陰核を優しく突かれる。ほとんどその場所に触られていないにも関わらず、粘着質な水の音が狭い空間に響いた。
もしかしたら馬車を操縦する従者へ声が洩れている可能性だってある。
「ユリウス。やめ、て……」
「嫌がるのは僕があの男ではないから?」
違う。そうではない。
否定したくて首を横に振った。
だが、彼は面白くなさそうに眉根を寄せた。
「こんなに感じているくせに」
長い指先が眼前に垂らされる。指先には蜜が滴り、どれほどわたしが欲求不満を蓄積させていたのか。それを強引に見せつけられて、羞恥で身体を赤らめる。
「意地悪しないで」
浅く息を吐き出しながら、ユリウスに乞う。短く喋る間にも、喘いでしまわないか内心ヒヤヒヤしていた。
すっかり火照った頬を見られないように俯けば、ユリウスが顎を上向かせる。
「リーシャ。駄目ですよ。今、誰に触れられているのか貴女は思いしるべきだ」
苛立ちの篭った重たい口調。だというのに、彼の指はどこまでも優しいものだからこそ、混乱してしまいそうになる。
「わたしはユリウス以外に抱かれたりしません」
彼の不安を払拭したい。その一心で訴える。だけどそれは逆効果であった。
「貴女は先程も信じてほしい、と言っていました。けれど、結果はどうです?」
責め立てるようにして、陰核を転がされる。散々焦らされたその場所はユリウスの指を喜び、淫らな音を立てる。
「あ、あぁ……っ」
彼の指が動くたびに背中を小さく痙攣させて悦ぶ。ジンとした甘い痺れ。酔いしれそうになりながらも、ここが外であることを意識して懸命に耐えようとする。
眉根を寄せてひたすらにと堪えた。
しかし声が洩れ出ることは抑えられても、身体の反応は自分が思うよりも正直だ。
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