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1章
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ゲーム通りであれば、初夜のシーンの描写があったはずだ。だというのに、ユリウスから触れられることがないまま、彼は去っていった。
(何か嫌われるようなことをしちゃった?)
ゲームのリーシャであれば、ほとんど初対面に近いユリウスに押し倒されて、怯えていた。
わたしと『リーシャ』の決定的な違いはそこだろうと推測する。
推しに会えて浮かれていたとはいえ、あんなにもグイグイ迫ったことに、彼は引いていたのではないか?
(……次にユリウスと会う時はもう少しお淑やかにしよう)
だけど果たして本当に我慢出来るのだろうか。
だってずっと好きだったユリウスが実際に触れる距離に居るのだ。それも夫婦となって。
あのユリウスとコミニケーションを取れるだなんて。こんなに嬉しいことはない。
(名前で呼ばれてみたいなぁ)
彼の口からわたしの名を呼んで欲しい。
もっと彼と話がしたい。
普段彼がどのような生活を送っているのかこの目で見てみたい。
彼をもっと知りたい。
夫婦として仲良くなりたい。
想いがとめどなく溢れ出る。
しかし、今夜は失敗してしまった。
挽回のチャンスはあるのだろうか?
(とりあえず、いつユリウスが訪ねてきても良いように準備を万端にしなくちゃ!)
それならば、今夜は大人しく寝ておこう。
寝不足で彼に会うのは勿体無いのだから。
明日、起きた時にはドレスを着飾って、メイクもして貰おう。
彼はどんな髪型が好きだろうか、と考えながら眠りつく。
***
朝食を終えたわたしは早速、年若いメイドに何着かのドレスを持ってくるように頼んだ。
てっきり屋敷から持参したドレスを抱えてくるものだろうと思っていたのに、用意されたのは見たことのない新しいドレス。
「これは?」
「ユリウス様がリーシャ様にとご用意されたものです」
淡々と答えたメイドは愛想がなく、わたしが聞いたことしか話してはくれない。
(確かその理由はユリウスに命令されているからよね)
ユリウスはリーシャを監禁した上、自分しか頼れない状況を作り出すために、使用人に対して必要以上にリーシャと関わることを禁じた。
一方的に閉じ込めたことですっかりリーシャに嫌われてしまっているからこそ、彼はそのように命じてしまったのだ。
その事情はシナリオを通して知っているがゆえに、今は必要以上に関わることを止めておく。もしもユリウスにメイドと雑談している姿を見られでもしたら、メイドにお咎めがいってしまうだろうと判断したからだ。
(そのうちユリウスの態度が緩和したら、仲良くなれたら良いけれど)
それにしても、ユリウスルートを何周も回っておいて良かった。
さすがにこれが初見では心が折れる。
苦笑しながら、ドレスを選ぼうとしたーーそのタイミングでユリウスが訪ねてきたのだった。
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