監禁から始まる恋物語

秋月朔夕

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夜の監禁室

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 わたしに抵抗する意思がないと分かると男は嬉しそうにうっそりと微笑む。
 「ナナ……」
  いつの間にかスーツの上着はソファーの下に落とされ、ブラウスのボタンは開けられていく。その間にも甘い口づけは止まることはない。
  欠点なんかなさそうな男の肉体の前で、少しずつ露わになっていく肌をさらけ出す羞恥に悶えたくなるのに、男の口付けは考えることすら許さないとばかりに責め立てていく。
 「ぁ、んっ……はぁ、やだぁっ」
 「なにが、嫌なんだ」
  首を舌先でたどりながら、甘やかすような声音で尋ねられる。
 「だって、わたしばかり、服が脱いでる……」
  正確には脱がされてるんだけど。先ほどのキスの間で、もうわたしが纏っているのはボタンが全部外されたブラウスにピンクのブラが丸見えの状態で下はスカートこそ脱がされていないけど、ストッキングとショーツはそのまま剥ぎ取るように下に落とされてしまっている。
 (手際良すぎるでしょ……)
  対する男は、ネクタイを緩めただけで上着すら脱いでもいない。
 「なんだ、そんなに俺の身体が気になるのか?」
  ニヤリと音が付きそうなシニカルな笑みを浮かべ、頬を撫でる男にそれだけで色気を感じてしまう。
 「違っ! わたしだけ着てないのがイヤなだけだもん」
  男のフェロモンにやられてしまい、余裕がなくなって子供ぽい口調になったけど仕方ない。男はわたしの言葉を聞くやいなや、脱ぎ捨てるように服をソファーの下においやり、あっという間に裸体がさらされる。
 (…………なっ、なんで、こんなにでかいのっ!)
  既に半分ほど起ち上がりかけた男の性器は馬並みという表現がピッタリだ。思わず逃げ打つ腰はすぐに捕まえられ、思い切り睨みつけられる。
 「なに、逃げようとしてんだよ」
 「むり、むりっ! こんなの入らないわよ」
  かなりあけすけな物言いなのに男は嬉しそうに笑う。
 「大丈夫。入るまでじっくりと解してやるから任せろ……」
 「いやー!」
  馬並みなんて表現はてっきり小説の誇張だと思っていた。
 (ああ、あんなの凶器よ……)
 「ほら、もう黙ってろ」
 「ぁっ、んん、ふぁっ」
  口付けとともに胸をやわやわと揉まれると甘い痺れがわたしを苛み、腰に力が入らなくなってくる。
 「ほら、大人しくしていたらもっと気持ちよくさせてやるぞ?」
 (――もっと気持ちよく……)
  トロンとギリギリよみがえった理性があっけなく溶けきり、欲望のままに力を抜くとわたしを起こし、男の膝の上に乗せ、背中を撫でられる。それだけでゾクゾクとした快感が襲ってくる。
 「こんなことで感じるのか?」
  からかうように笑われるが、わたしも内心ビックリした。普段背中なんか触られても、意識することなんかなかったのに、この男はそれすらも快楽に変えてしまう。
  背中に気がとられている内に今度は胸の頂点を甘噛みされ、舐められる。一瞬の痛みとそれを上回る快感に意味がない悲鳴が洩れる。
 「ひっ、んっ、やぁ……」
 「嫌? もうこんなに硬いのに……」
  耳に息を吹き込みながら、男の手は下に伸びる。
 「ほら、触ってもないのに濡れているぞ」
  グチュリとわざと音を立てるように秘部を弄られれば、羞恥で全身の血が沸騰しそうになる。
 「…………さらに蜜がこぼれた。恥ずかしいことを言われるのが好きなのか?」
 「違っ! そんなこと、ない」
 「ん? こんなに濡れてるのに」
  見せつけるようにわたしの目の前に指を持ってくる。
 「嘘をついた罰だ。舐めろ」
  イヤイヤ、と首を振って逃れようとしたけど無理やり顔を掴まれて、口にねじ込まれる。苦く酸っぱい味が口に広がり、生理的な涙が溢れる。
 「どうだ、自分のいやらしい味は……?」
 「っふぅ、んん……」
  この状態で答えられるわけがない。ただわたしがどんな反応をするか知りたくて虐めているのだ。
 (…………陰険サディスト)
 「その反抗的な眼していられるのも今の内だけだ」
  言うが早く、わたしの口から指を抜いてすぐに秘部を弄り始める。唾液で濡れた指は中指と人差し指の日本すぐに奥まで入った。
 「やぁ、そん、な……急に、っ」
  ただでさえ、いきなりの圧迫感に悶えているのに、親指が秘豆に触れれば電撃が走ったように身体中が痙攣する。
 「ぁんっ、ふっあ、んん」
  こっちは息をするのでさえやっとなのに、男は乳首を吸い上げわたしを乱そうとする。
 「もっ、むり、へんにっ、なる……!」
  いつの間にか三本目の指が入り、どこまでも上り詰めていく未知の快楽が恐ろしく支配者に赦しを請う。
 「仕方ないな。抜いてやるか」
  その一言に安堵の息を漏らした瞬間、ただし俺のモノは入れるけどな、と耳に不吉なことを囁いて、逃がさないよう腰をガッチリ抑え込まれ男の欲望を一身に咥え込まされる。
 「ひっ! やぁあ……うそつきぃ」
 「指は抜いてやっただろう? それにうそつきなのはナナだ」
 「うそなんか、ついてない」
 「いいや、だって前に……」
 「まえ?」
 (間違いなく今日初めて会ったのに……?)
 「…………いい、自分で思い出せ。とりあえず今は快楽に溺れていろ」
  言葉を取り消すように激しい腰の動きにソファーから落ちないように必死に男の背中に掴まる。男は先程の余裕がなくなり、なにかに苛立っているように突き動かしていく。それでも指で感じたポイントを責め立てられるから堪らない。
 「やっ、はげしっ……あ、ん、」
 「ここがいいんだろう。胸も軽く噛まれるのがすきだったな」
 「ひんっあ、ああっー」
 「なんだ、もうイッタのか?悪いがまだ終わらないぞ」
  達したばっかりで敏感になっているのに男は容赦なくわたしを責め立てていく。
 「やっ! もう、むりだよぅ」
  意識が朦朧としているのに、男が与える快楽だけはハッキリとわたしを支配していき、細胞の一つ一つが歓喜しているわたしはもう狂わされているのかもしれない。どんどん早くなっていく腰の動きに、翻弄され溺れていく。


  ――最後に覚えているのは男の愛している、という言葉だった……
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