上 下
11 / 20

11

しおりを挟む


 初夜を迎えなかったこと以外、ゲームの大筋通りに進んでいる。
 それに気付いたわたしは自身の行動が見えざる神の手に動かされていたような不愉快さに、扉を睨む。


(ゲームの強制力が働いているみたいで気持ち悪いわね)


 まずは落ち着いて考えようと、長椅子に浅く座る。
 次いでベルを鳴らして、使用人を呼ぶ。
 すぐさまやってきたメイドにお茶を飲みたいとせがんで、彼女の動きを観察する。
 紅茶の用意をするため部屋を退出したメイドはユリウス同様、施錠することはなかった。
 その様子から、既にユリウスが使用人達に対し、部屋の鍵についてなんらかの通達を出したことを知る。 


(随分と仕事が早いのね)

 彼を相手に皮肉めいたことを思うのは、自分自身がゲームのヒロインそのものとして動いている既視感への焦りゆえか。
 どちらにしろこれでは八つ当たりだ。
 ひとまず落ち着こうと深呼吸をして、こめかみを揉む。
 そうしている内に運ばれた紅茶にミルクを入れ、次いで砂糖をたっぷりと入れて、それを飲む。


(このままゲームのシナリオ通りに進むとなるとまずいわね)

 とりあえず状況を整理しよう。
 まずユリウス・エルガーという人物は主人公がノーマルエンドを迎えた時にのみ、現れるキャラクター。
 終盤にのみ、それも部分的に絞られて現れる隠しキャラゆえ、他の攻略キャラよりも情報が薄い。
 そしてユリウスのルートも監禁エンドの一択のみだ。
 その彼のシナリオを思い返す。



***

 学園に居る間に異性と仲を深めようとしたが、彼らとの関係は『友情』で終わってしまった。
 ゆえに約束通り両親が決めた相手と結婚することになった。
 けれど、結婚は書面上のみ。式も挙げずに、その相手の屋敷に直接向かうのは意外であると感じていた。

 執事によって通されたのは広い屋敷の奥まった場所にある部屋だった。そこに通されるとガチャリと外側から鍵が掛けられる。


(なんで、鍵なんか……)

 不審に思ったリーシャが部屋を見渡せば、窓が一つもないことに気が付く。
 閉じ込められたのだと知り、本能的な恐怖から扉を叩いた。


『どうしてわたしをここに閉じ込めるの。お願いだから出して頂戴!』

 何度も、何度も、叩いては叫ぶ。
 だというのに、誰もやってこなかったことに絶望が胸に広がる。


(わたしはただ嫁いできただけなのに……)


 その相手が誰か知らされていない。両親が頑なに秘匿していたから。それゆえなんの情報もないまま、愚かにもここに来てしまった。


(けれど、急にわたしを閉じ込めようとしている相手なんて聞いていないわ)

 こんなことなら学園に居る間、もっと死に物狂いで結婚相手を見つけるべきだった。 
 後悔からボロボロと涙が頬に流れる。
 だが、それを優しく拭き取ってくれる相手なぞ、ここには誰も居やしないのだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた

愛丸 リナ
恋愛
 少女は綺麗過ぎた。  整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。  最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?  でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。  クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……  たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた  それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない ______________________________ ATTENTION 自己満小説満載 一話ずつ、出来上がり次第投稿 急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする 文章が変な時があります 恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定 以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください

恋心を封印したら、なぜか幼馴染みがヤンデレになりました?

夕立悠理
恋愛
 ずっと、幼馴染みのマカリのことが好きだったヴィオラ。  けれど、マカリはちっとも振り向いてくれない。  このまま勝手に好きで居続けるのも迷惑だろうと、ヴィオラは育った町をでる。  なんとか、王都での仕事も見つけ、新しい生活は順風満帆──かと思いきや。  なんと、王都だけは死んでもいかないといっていたマカリが、ヴィオラを追ってきて……。

見知らぬ男に監禁されています

月鳴
恋愛
悪夢はある日突然訪れた。どこにでもいるような普通の女子大生だった私は、見知らぬ男に攫われ、その日から人生が一転する。 ――どうしてこんなことになったのだろう。その問いに答えるものは誰もいない。 メリバ風味のバッドエンドです。 2023.3.31 ifストーリー追加

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする

カエデネコ
恋愛
※カクヨムの方にも載せてあります。サブストーリーなども書いていますので、よかったら、お越しくださいm(_ _)m リアンは有名私塾に通い、天才と名高い少女であった。しかしある日突然、陛下の花嫁探しに白羽の矢が立ち、有無を言わさず後宮へ入れられてしまう。 王妃候補なんてなりたくない。やる気ゼロの彼女は後宮の部屋へ引きこもり、怠惰に暮らすためにその能力を使うことにした。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

人生の全てを捨てた王太子妃

八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。 傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。 だけど本当は・・・ 受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。 ※※※幸せな話とは言い難いです※※※ タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。 ※本編六話+番外編六話の全十二話。 ※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

処理中です...