記憶喪失のフリをしたら夫に溺愛されました

秋月朔夕

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 エドモンドと次に会う機会は思いの外、短いものであった。
 最悪な出会いだと自覚しているし、出来ることなら自分のことなんか忘れてほしい。そしてもう一度出会いをやり直したいと願って俯く。
 ――もしも、目が合ってまた彼に顔を顰められでもしたらと想像するだけで胸が締め付けられそうになる。

 あの日からずっと彼のことばかり考えていた。次に話せる機会がある時のために、何度も謝る練習もして、少しでも立派なレディに見えるように淑女教育も頑張ってこなしてきた。
 だというのに、いざエドモンドを直接目にするとどう対応したら良いのか分からなくて、その場から離れてしまう。
 だってエドモンドを見つけてから頬が熱いし、心臓がドキドキする。こんな状態で謝罪に行ったところで、更なる醜態を晒すだけだ。それならば、ちゃんと落ち着いてから彼に声を掛けようと思ったのだ。


(大丈夫。あれだけ練習してきたんだもの。きっと上手く出来るわ)


 自分を鼓舞して会場に戻ろうかと身を翻そうとした時、いつの間にかシリウス殿下が横に居た。挨拶され、次いで姉の居場所を尋ねられる。
 きっとこの質問をしたいがために、わたしに話し掛けたのだと分かるとあからさま過ぎて逆に緊張が和らぐ。
 そして軽く世間話をした後に、殿下は姉の元へと向かおうとする。なんとも分かりやすい態度だ。そう思ったことが彼に伝わったのだろう。彼はニンマリと人の悪い笑みを浮かべる。


「きみだって随分と分かりやすいものだよ?」
「え」
「アシュレイ公爵家のエドモンド。随分と彼に視線を送っていたじゃないか。それも頬を染めて。あんなに分かりやすいものはないよ」


 彼の指摘に頬どころか全身がカッと熱くなる。そしてその言葉を否定するよりも早く、彼は姉を探しにいってしまった。

 そのタイミングでエドモンドがやってきたものだから、せめて彼にだけは自分の想いを隠そうと、つい俯く。
 まずは先日の件の謝罪をしなければならないのに、混乱した状態になったわたしは挨拶の言葉すら上手く紡げない。そんなわたしに彼は溜息を吐き出して、不躾なわたしの態度を咎めたのである。

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