蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第二十章 悪女の素顔

20-1 ナギサイド

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 プロットを倒して、奴によって捕らわれていた小人族を解放したカチュア達。

 情報員としての役割を行っていた、プロットを失った帝国軍の進行速度が弱まっていき、レティの采配で進撃する同盟軍によって押されて行っている。

 レティの采配は容赦がない。一歩間違えれば、味方に被害が出てしまう。そのリスクを補える采配を行えるってことか。さすがは、軍神と呼ばれることはある。いや、攻め方が恐ろしぎるよ。もう、走る猪の大軍を真正面で相手にしているみたいだ。有利な盤面を整えてから、攻めるスタンスみたいだ。これが、軍師の皮を被ったバーサーカーと呼ばれる由来か。

 それでも、帝国軍は魔物を使っている。魔物を相手にするのは限り、苦戦は免れないか。その魔物を解き放った帝国軍が、魔物に食べられているが。



 そんな戦争の中、依頼を終えた、カチュア達はというと、ロランス側の陣地で滞在している。

 その陣地では、救助された小人族を保護している。とはいえ、小人族の存在は帝国軍に知られてしまっている。エドナ同等に狙われる対象の亜種だ。
現在進行で戦争中のため、まずは勝つために動くはずだと思うが、レティ曰く、どさぐさに紛れて、貴族の誰かが、小人族を狙って襲撃する可能性があるらしい。

 この世界、協調性の欠片がない連中が多すぎないか? 人間だから、そういうものか。

「見て見て! 小人族の村長さんに、あたしの弓、新しく作り直してくれたんだよ!」

 新しい玩具を買ってもらった子供のように、はしゃぐエドナ。玩具にしては、物騒な代物だけど。

 何でも、弓玄を強めて、放った矢をさらに貫通力を高めているらしい。それは、エドナが得意とする風の矢も対象だ。これで、以前よりも上級魔物が倒しやすくなるでしょうね。

 でも、エドナは気乗りはしなかった。何故なら、貫通力を高めたら、狩りで、獲物を矢で仕留めたら、肉が削れて、食べる部分がなくなってしまうらしい。

 エドナの弓技は、戦うためのではなく、狩りをするための弓技だから、食材を粗末にする狩り方は本来しないのだ。まあ、最近は、自分の技を教えたがる『災雷』に教えられて、現在のエドナは戦闘のバリエーションが増えてしまい、もはや、狩人じゃなく、バーサーカーに転職してしまった。

 ちなみに、弓玄を強めても、様々な武器を扱うカチュアには、その弓を使うことが出来なかった。カチュアはバカ力の持ち主で、弦を引いてる途中で、弦がちぎれてしまう関係で、唯一、弓だけは使えなのだ。

「それにしても、同盟軍には、人間も所属しているのに、小人族は、よく協力してくれたね。人間に酷いことされているのに」
「元を辿れば、亜種は人間の突然変異。そして、失われた心術は、亜種の個体能力として残っています。酷いことされても、恨むなら加害者で、その加害者の種全体を恨むことは全くないです」

 常に人形の中に隠れていたミラだけど、同盟軍には、小人族を狙うものがいないため、生身で外に出られている。

 でも、日差しに当たっているミラは、とても暗い、消極的な性格になってしまう。全身からネガティブなオーラが放出されている……。

「カチュアか。ここにいやがったか」

 マリンがこちらへ向かって来た。

「マリンちゃん、どーしたの~?」
「その~。これからのことなんだけど……」

 すると、その場にいた、アンリが鋭い目つきで、マリンを睨みつけた。

「また、チーちゃんに戦わせるつもり?」
「いや、その逆だ」
「逆?」
「妾達はカチュアに頼り過ぎているところがある。だから、今後、戦いに参加しないで欲しい」
「それは、当然だけど、あなた達で、勝てるの? 相手は、あのメリオダスの技術を悪用している連中と手を組んでいる可能性があるんでしょ?」
「妾が築いていないと思うか? それどころか、二人も危ないんじゃないか?」
「あら。でも、わたし達は、チーちゃん程、力は持っていないわ」
「それでも、負の気に影響はされているだろ? 特にカチュアなんて、歩くたびに揺れているし」
「それは、チーちゃんは、大きいから」
「誰が胸の話をしていると思った?」

 確かにカチュアは大きいから歩くたびに、胸が揺れて……じゃなくって。恐らく、マリンが言いたいのは、最近のカチュアは、歩くたびに、『ドスン! ドスン!』と音を立てながら、歩くことだろうね。これも、負の気の影響か? ヴァルキュリア族が戦闘力は高いけど、負の気に弱い性質を持つ。戦場に舞う、負の気でカチュアは苦しんでいるのか。その反動で、歩くたびに、『ドスン! ドスン!』と音を立ててしまうってことね。

 その内、地震が起こしてしまうのでは?

「カチュアの胸は大きいけど、今はそれは置いといて……」
「結構重要だと思うんだけど……」

 どこに、戦争よりも重要な、カチュアの胸の話があるんだよ。

「カチュアがいないと勝てないのは、事実。だけど、カチュアは戦いの道具でない。これ以上、カチュアには、戦いに巻き込みたくない」
「マリンちゃん」
「どうしてもっていうなら、エドナの側にいてくれ。ゲス兄の狙いはエドナだから」
「分かったわ~」
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