蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第十八章 闇に染まった英雄

18-5 スイレンサイド

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 何とか、国都の外に現れた魔物の集団を討伐した私達。

 他の街で救助していた仲間も終わったようで、現在は国都に集結しているッス。



「これで大丈夫なんだよ」

 エドナちゃんが怪我を負った人達を、治癒術で、怪我を治しているッス。治癒術を使える方は希少だから、助かったッス。

 実は、私はさっきまで、エドナちゃんが治癒術を使えることを忘れていたッス。エドナちゃんは、転んで奇跡を起こすのと、規格外の風の矢を射るイメージしかなかったッス。
 
「ふう。……いつかの賭博事件を思い出しますね」

 ロゼッタさんが、魔物の死骸を見ながら、ため息を付きながら、

 一方、ルナちゃんが、魔物の死骸を、じーと見つめているッス。

「ルナちゃん、どーしたの~?」

 カチュアさんが声を掛けたッスが、ルナちゃんは反応がないッス。真剣に魔物の死骸を観察している見たいッス。

「ルナちゃーん~。ルナちゃ~ん……」

 カチュアさんが何度呼んでも、反応がないッス。

「聞こえないかしら~? それなら~……、スゥ~~」

 カチュアさんが大きく息を吸ったッス。

「ルナちゃーーーん!!!」

 カチュアさんが大声で、ルナちゃんを呼んだッス。

「いやああああああ!!!」

 ドーーーン!!! ドーーーン!!!

 カチュアさんの大声で、驚いたルナちゃんが、後方へ転んで、お尻を強く地面にぶつけたッス。

「何しているんですか!!!」

 起き上がったルナちゃんが、すぐさま立ち上がって、カチュアさんに怒鳴ったッス。

「も~。呼んでも、ルナちゃんが、返事してくれなかったもん~」

 カチュアさんが頬を膨らませたッス。

「それは、すみません。……で? 何で、エドナさんまで転んでいるんですか?」

 本当ッス。エドナさんが地面にお尻を付いていたッス。

「はうう。カチュアさんが、急に大声を出したから驚いたんだよ」
「ごめんね、エドナちゃん」
「あたしは平気なんだよ」
「ところで、何のようですかカチュアさん?」
「あ~! そーだったわ~。ルナちゃん、魔物の死骸を見ていたから、どーしたのかな~って」
「ああ……そうでしたか。……襲って来た魔物達を見ていると、こうも、ありえない光景なんて、そうそう見れるものではありませんと思って……」
「何か、問題あるんですか?」

 エドナちゃんが尋ねたッス。

「襲った魔物の、型が違い過ぎるんですよ」

 そうッス。都を襲った魔物達の種類が違い過ぎるッス。魚型の魔物は陸でも生殖は可能ッス。でも、だからといって、別の魔物同士に一緒にいることなんて、ありえないッス。

「……気になりますね」
「ルナちゃん?」
「前回のセシルの奇襲もそうですが、急に魔物を利用し始めましたね」
「人不足かな?」
「だとしても、リスクがあり過ぎです」
「魔物を調教できる確信があったからかな? それでも、型の違う魔物を同時に使うことなんて、まずしないはずッス」

 確かに、此間のセシル侵攻は、コルネリア兵自体攻めに行かないで、魔物を使って進行していたッス。

 魔物を使うこと自体は、珍しいことではないッス。だけど、自分の飼いならしたはずの魔物に食べられるのが、よく聞く話ッス。それに、型の違う魔物が強力することなんてないッス。寧ろ、互いを食べようとするッス。それ以前に、魔物の体内には、魔石があるッス。その魔石を食べたら、さらに凶悪な魔物が生まれるッス。だから、まず型の違う魔物を同時に放つことはしないッス。

 これは尋常じゃないッス。明らかに、コルネリア軍は魔物の調教術なのか、それとも、サリナさんが昔、亜種を使った人体実験を行っていたと言われていたアルタミストの生き残りが提供したッスっかな?

「でも、どうします? 魔物討伐は必要だけど、ゲブンを捕らえなければ、また、魔物を使ってまた襲ってくるかもしれない。だから、魔物討伐しつつ、ゲブンを捕らえる必要があるんです」

 確かに、すでに解き放たれた魔物は、どうすることはできませんが、

 すると、都の出入口に向かって、ロランス兵達が向かって来たッス。その中央にいたのは……。

「お兄様! 兵を連れてどこにいるんですか?」
「ああ。ゲブンの隊が、どこに陣地を構えているか、分かったんだ。今から、ゲブンを討ち取りに行く」
「なら、私も行くッス」
「いや、スイレン。時期、聖王になるお前を危険にさらすに訳には……」
「十分、危険な目に会っているんだから、今更ッス」
「そう言うわけには……」
「そうと決まれば、行くッス! 早くいくッス!」
「強引ですね~」
「それなら、私も行くわ~」

 すると、ロゼッタさんが、カチュアの前に立って、首を横に振ったッス。

「カチュア、すまないが、ゲブンは私が捕らえる。カチュアは魔物から民を守ってほしい」
「いいのかしら~? ゲブンを捕らえないと、この戦は終わらないわ~」
「敵将を倒すだけが戦いではない。民を守り切るこそだ。だから、ロランスの民を魔物から救ってやって欲しいわ」

 ロゼッタさんの言葉で、カチュアさんが沈黙しちゃったッス。そして……。

「分かった~、でも、あのオークには気を付けて~。オーク見たいだから~」
「ゲブンのこと? 確かに見た目は、オークだけど、それは見た目だけで、魔物じゃないよ、ゲブンは。でも、周りは魔物だから気を付けるよ」

 

 私達は、お兄様引き連れたロランス軍と共に、ゲブン討伐に向かうッス。

 しかし、この時は、思いもしなかったッス。カチュアさんの、忠告の本当の意味を。
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