蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第十四章 親と子

14-10 エドナサイド

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 ガロンを倒した、あたし達は、引き続き、ダグザへ向かっているんだよ。

 力尽きたカチュアさんは、メリアさんの、首のないお馬さんに、乗っているんだよ。

「カチュアどうした!」

 カチュアさんは来た道を眺めているんだよ。

「よくわからないけど、ガロンに何かあったじゃないかな~って」
「あいつがこっちにくるのか?」
「いいえ。そーでは、ないけど、それよりも、それ以上に危険な感じがするわ~。とても、気分が悪くなりそうな、何かが」

 カチュアさんが言う、危険な感じっていうのは、よく当たるんだよ。そう考えるとなんだか怖くなってきたんだよ。

「でも、今は無事を喜ぶべきね~」
「はうう?」
「よかった無事で!」

 あ! サリナさん達だ! 無事だったんだね。でも、見慣れない人もいるんだよ。誰だろう?

「よかった! 無事にカチュア達に追いついて」
「ところで、その人は?」

 あたしが尋ねると、マリンさんが驚いた顔をして、口を開いたんだよ。

「ディアじゃないか」
「知っている人」
「八騎将の一人、レティの部下だ。最近所属されたばかりだが」

 八騎将の側近の人なんだ。でも、どこかで、会ったことがあるような。

「カチュアは、どうしたんだ? バテバテじゃないか」
「さっきまで、ガロンと交戦していたんだ」
「ガロンと!」
「危なかったが、何とか倒した」
「八騎将を倒すなんて、さすがね」
「ガロンと相手にする自体は、問題はなかったんだが、カチュアが色々とやばい状態だったんだ」
「話を聞きたいが、それどころじゃないか。急いでダグザに……」
「それよりも、誰か来るわ~。それも沢山の……」

 あたしが、遠くを眺めると、帝国兵と同じ鎧を身に着けた人達が、こっちに向かって来たんだよ。

「追ってか?」
「はうう。帝国軍なんだよ!」
「く! もう少しで、ダグザへ着くのに」

 すると、ディアって人が鞘から剣を抜いたんだよ。

「ここは、私だけで引き留める。君達は早く、ダグザへ」
「何のつもりだ?」
「私がここに来たのは、娘を守るためだから」
「娘って、この中にいるのか? 誰のことだ?」

 マリンさんが首を左右に振っているんだよ。

「エドナちゃんのことでしょ?」
「はわ? 娘って、あたし?」

 驚くあまり、大きな声が出ちゃったんだよ。この人が、あたしのお父さん? 

「何で、会ったばかりなのに、わかるんだよ!? まあ、そうなんだ。ディアは妖精族で、エドナの娘なんだ」
「お前が妖精族!?」
「あなたがあたしのお父さん?」
「ああ。妖精族は人里はなれた場所で暮らしていた。私達の場合は、ライム村で隠れながら暮らしていた。エドナのお母さんが病気で死んだ後、私は村長に娘を預け、妖精族の特徴ともいえる尖った耳を斬り落として、帝都に向かった」

 はうう。耳を切ったって、恐ろしくって、思わず両手で口を塞いだんだよ。

「ぐ、何でそこまでして、帝都に向かったんだ?」
「村長は以前から、厄災の存在は人為的に生み出しているのではないかと、推測されていた。全部ではないとはいえでも、少なくとも悪帝は何者かに仕組まれていたのではないかと。そして、近いうちに、また、厄災が出現する恐れがあった。エドナの未来を守るため、帝都に向かったんだ」 
「そうだったのか」
「時間がありません。皇女様これを」

 ディアさん。いいえ、お父さんが手帳見たいのを、マリンさんに渡したんだよ。

「これは日記帳?」
「私が調べたことが、それに記されています。後はそれを読んでください」
「お父さんも逃げよう!」

 あたしは、お父さんの手を掴んだんだよ。

「エドナ。父親らしいことをしてやらなくって済まない。でも、最後にお前に合えて嬉しかった。これから、幸せに生きるんだ」
「そんなこと言わないで! 逃げよう! お父さん!」

 お父さんは、カチュアさんの方へ向いたんだよ。

「カチュアと言ったかな? エドナを頼む」
「わたしは納得していないわ。でも、悔しいわ~。今のわたしは足手まといになるから~」
「本当にすまないな、我が儘なおっさんで」
「お父さん!!」

 お父さんの手を掴んでいた、あたしだったんだけど、背後から、レオさんに引っ張られて、思わず、お父さんの手を離しちゃったんだよ。

「離してください!」
「エドナ暴れるな!」

 レオさんの抱えられてしまい、カチュアさん達は、ダグザに向かって、走っていったんだよ。

「お父さん!!」

 段々とお父さんが見えなくなっていったんだよ。なんで、こうなったんですか? あたしが旅に出たかったのは、まだ生きているお父さんに会いたいことも、あったからなんだよ。折角、会えたのに……。

「行ったか。最後は父親らしく振舞わりたかった。さあ、最後の舞台だ。暴れてやろう」
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