蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第十四章 親と子

14-5 ナギサイド

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「はあ、はあ、はあ、何とか、倒したのは良かったが……」

 ピッグを倒した、私達は、先に進んだカチュア達を追いかける。だが、勇能力相手と交戦した私達は歩くすら困難だった。特にダメージを大きく受け、体力が殆どなくなったレオとメリアはというと、ミラの犬人形の上に乗っていた。

 私も戦いで疲れているが、ピッグの攻撃をもろに食らったレオとメリアよりかは、体力は消耗していないから、二人よりかは、歩いてはいられた。

「ぐっ、今度は、重量関係なく走れるように改良しなければか」

 本来のミラが入っている人形は、速く走れるが、二人を背負っていることで、重量がオーバーしてしまい、速く走ることができない。元は、小人族が人間から身を隠すための、隠れ家見たいな物だから、小人族が入れるスペースと重量制限しか、考慮ができなかったらしい。

「カチュア達、無事にダグザへ着いたかな?」
「いや! それよりも、あたし達が到着できるかって話だ」

 確かに、エドナやユミルがいないから、誰も治癒術が扱えない。下手したらダグザへ辿り着く前に力尽きてしまうだろう。

「誰だ?」

 叫びながら、後ろへ振り向くレオ。誰かいるのか?

「怪しい者ではない。と、いいたい、ところですか、急に現れた者を敵ではないと、いうのは、説得力はありませんね」

 いや、誰だよ。急に私達の背後に立っているなんて。見た感じお兄さんと呼ばれる年齢に見えなくないが、それに反して、声が渋いから、見た目が若々しいが、見た目以上の年齢の男性ってことかな?

「とにかく、あなたは、私が信用するまで、警戒してください。ですが、この二人の治癒をしなければ」

 レオとメリアに治癒を扱う時と同じ光を当てった。みるみるうちに、傷が塞がっていく。

「体が楽になった!」

 犬人形から、降りた二人。もう立てるのか。あれほど、ばてていたのに。治癒術使っても体力までは回復しないはずなんだけど。

 ふっと、ティアの治癒術を使った時のことを思い出してしまう。ティアの治癒術の場合は、傷が塞げても、心臓が止まりそうな、治癒術なんだよな。

「誰だが、わからないが、ありがとう」

 それよりも、何で、この男性は、私達を助けたんだ? 見た目は、悪い人ではなさそうが。見た目は……。ここが一番気になるところ。男性としては、髪を伸ばしている方なんだ。耳が隠れるほど。ん~、特におかしくはないが、何故か気になる。だって、今は妖精族狩りの騒ぎがあって、耳が見えないとなると気にはなるんだよな。妖精族のエドナも耳隠しているし。……ん? 耳?

「なあ! あんたは、亜種か?」
「え? そうですよ」
「もしかして、あんたは、妖精族だったりするか?」
「よくわかりましたね。といっても」

 男性は髪を上げた。しかし、その耳はというと。

「あんた! 耳はどうしたの?」

 そう、男性の両耳は切れていた。

「どうしたんだよ! その耳は!?」
「人里で暮らすとなると、妖精族の特徴である尖った耳でバレる可能性があったから、耳は切ったんだ」

 えげつないな。確かに、これなら、人里に入っても、耳が切れているから妖精族の判別が難しい。しかし、そうまでして、やり遂げたいことがあったから、耳は切り落としたのかな?

「ところで、なんで、私達を助けたんだ?」
「帝都で、ある妖精族の噂があって、追いかけてきたんだ」
「そうだったんだな」
「その妖精族の特徴は緑髪という話なんだ。もしかして、エドナじゃないかなって」
「何であんたが、エドナを知っているんだ?」
「君達もエドナを知っているようだが、あの子に会ったことがあるのか?」
「私達と一緒に旅をしていたんだ。今は、帝国兵から逃げていて、私の仲間と一緒、ダグザへ向かっていたんだ」
「無事だったんだな。ライム村の悲劇の知らせを聞いた時に、絶望していたが、あの子は生きていたのか。よかった」

 ライム村。エドナの故郷の村。ヴァルダンという隣国の侵略に巻き込まれて、壊滅した村だ。エドナを知っているどころか、エドナの出身地まで、知っているなんて、こいつ何者だ。少なくとも、エドナとライム村に関係する人なのは、確かだ。ライム村は確か、妖精族だけの村ではない。そうなると、エドナと同じ妖精族の男性は……。

「あんたは、エドナと関係ありそうだな。これまでの話を聞いている限り、あんたは、エドナの……」

 私の予想は当たっていた。
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