蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第十一章 ヘルディアの傭兵

11ー8 ナギパート

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「取り敢えず、今日はここで、休みましょ」

 目の前に見えたのは、例の砦か。

「こんな事している場合じゃないのに」
「休憩も大事だし、それに外は暗いし、反乱軍何で見つからないよ」
「あたしも、暗い中では見にくいんだよ」
「分かったよ」


 
「成程、それで、あなた達は」

 砦の中で、カチュア達がコルネリアとヘルディアの戦いを止めるために動いていることを伝えた。

 カチュアは信用できそうといっているが、私のことは取り敢えず、話さないことにしている。

 メリア達の話も聞いてみたが、

「ここは彼女達と協力したら。ここで争っても」
「うん。……カチュアだっけ? あなたの実力は本物よ。協力お願いします」
「分かったわ~」
「しかし、久しぶりですね。あのやんちゃなお姫様が立派に育って」
「あなたはおとなしくなりましたわね」
「それは、お互い様です。私は、あれはあれで、いい思い出でしたよ」
「どこがよ。あなたは一度戦えば、手がつけられなかったのよ。戦いがなかったら、なかったで、うるさいし」

 もしかして、ヴァルダンの戦いで見たソフィアが昔では、一般だったの? 

「それも、いい思い出でしたよ」
「何事もなかったかのように、クールに振る回っちゃって。デクスも苦労していたわね」
「ねぇ、デクスって?」
「確か、ソフィアさんの弟さんの名前ですわ」

 弟もいたんだ。合流したばかりの今日だけで、ソフィアの過去が明らかに、なり過ぎだ。

「わたくしは、弟さんには、会ったことありませんですわ。そう言えば、ソフィアさんが傭兵時代は弟さんの話をよくしてくれましたが、わたくしに仕えるようになってからは、一度も話させていませんわ」
「そう言えば、ソフィアさんは竜人族って、本当ですか? 竜人族なら頭の両サイドに角があるはずです」

 竜人族に外形の特徴あったんだ。

「わたくしが初めて会った日には、既に角がなかったですわ」
「こいつ、武器を豪快に振っていたら、角に合って折れたんだ」
「ソフィアさんも、ドジすることがあるんだね」
「人生失敗することなんて、一つや、二つは、あります。まあ、エドナ程、ドジをやらかしたりはしませんよ」
「はうう……」
「でも、その時、折ったのは、片方だったはず」
「片方残っても、バランスが悪いので、もう片方も折りました」
「軽い気持ちで折っていいものだっけ?」
「まあ、竜人族も人間から狙われる対象にはなりますが、奴らは、角が欲しいですから、角のない竜人族には価値はないですよ」
「まあ、不自由に感じなければいいのかな?」

 いいんかい!

「いや、角のない竜人族には価値がないといいますが、角が無くたって竜人族はドラゴンブレスが吐けますよね」
「吐けますよ。角が無くなったから、威力は弱まりましたが」

 いや、吐けるんかい! そして、その口振だと、角がブレスの威力の源に聞こえるんだが。その角を片方だけだと、バランス悪いからという、軽い気持ちで、取ったのかよ! 



 その夜。明日に備えて、カチュア達は寝ていたが。

「はわ~。何でカチュアさんと外にいたんだろう。建物の中で出ていたのに」
「不思議だわ~」

 眠そうな顔をした、カチュアとエドナは通路を歩いた。この二人は早く休んでいた。勿論、砦の中で。だけど、二人が目を覚ますと、砦の外にいた。原因は恐らく、エドナの寝相の悪さだろう。カチュアを抱いて外に出たと思われる。

「あれ? あれは~」

 そこにはルナとマリンの姿が。隠れながら様子を見ているようだ

「ルナちゃんと、マリンちゃん、どーした……」
「シー!」
「何のようですか?」

 通路の曲がり角の先を見るカチュアとエドナ。その先に見えたのはソフィアだった。それと、誰かいる。あれは確か、ギルティとかいう女性だっけ? 二人きりで、話しているみたいだ。

「ソフィアだっけ? 確か、あんたは、六年前のあーしの兄と一緒にセシル王家の護衛任務をしていたらしーね。そして、唯一の生き残り」
「あなた様は、エルトの妹でしたね。奴から聞いています」
「あの日何があった? 何で、あんただけが生き残れた? あの事件は護衛していた、王家も死んだというのに。確か、話では、族に襲われた時に、あんた一人が囮として残って、族の相手をしていたとか」
「そうだ。当時な、私は戦い好きだが、最善な方法を取っていたつもりだ」
「アニキも、そこは評価していた。凶暴だけど、傭兵の思念としては一流だって」
「何があったの?」
「まあ、話していいか。ただし、ユミル様には言わないようお願いします」
「いいけど」
「裏切られた。私の弟に」
「え? でも、その任務では、あんたの弟は参加していなかったはず」
「私が倒そうとしていた族に思いが、あったのか、私が止めをさせうとしたところで、不意をつかれたんだ。怪我を負った私はそのまま、倒れてしまった。相手が弟だったのが、峰打ちだった。私はシグマの部下に見つけてもらって一命を食い止めた。だけど、あんたの兄と、その仲間、セシル兵に、王家全員何者かに殺されてしまった」
「あなたの弟が、その族の仲間になったわけ?」
「可能性はある」
「この事国王には」
「知っている。弟が裏切ったことも。そして、私はヘルディアを去ったんだ。途中でユミル様に拾われて、臣下になったんだ」
「奴らの狙いは王家。何故、狙われてたんだ」
「私が護衛だが、狙われそうな話は聞いていない」
「そうですか。すいません。色々聞いてしまって」

 ギルティが去ると、ソフィアはカチュア達が隠れているところに目を向ける。

「さてっと、あなたは気配には、敏感に感じる割には、気配を隠すのは苦手のようだね」

 ドーーーン!!

 エドナが転びながら、出てきた。その次にマリンが出てきて、その次に、ルナも出てきた。そして、遅れて出できた、カチュア。

「バレたか~」
「ソフィアさん。今の話」
「……族は恐らく、あんたらの父親の死の原因を作った連中だろうね」
「それなら、誰かしら、奴らに都合の悪いもの、殺された人達の中の誰かが持っていたことになる」
「でも、おかしくないか? 今では、そいつらの存在がバレているじゃないか。探りを入れているアルヴスがいるじゃないか。何で、全力で消さないんだ」
「……組織自体バレてもいいのか。いや、その組織に取って、世間に知られると、都合の悪いことを知った者しか、消さないのか。あんたの、父親が研究者なら、その研究で偶々、その都合の悪いものを発掘してしまったのか。いづれも、あの遠征で、奴らが死ぬほど殺したい人がいたってこと」
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