蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第九章 渓谷の発明少女

9-4 エドナパート

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「険しい山、何だよ! 緑が見当たらないんだよ」
「ここで、小人族が見つかればいいのだけど……」

 あたし達はクレイジー渓谷と呼ばれる山の入り口辺りに着いたんだよ。

 あたしの知っている山と違って、鋭くとんがった山が沢山見えるんだよ。

「エドナ、鳥らしき物体は見えないか?」

 あたしは遠くから眺めてみたんだよ。

「ん~、ここからじゃ、見えないんだよ」
「カチュアはどう?」
「……鳥らしき鳴き声は聞こえるわ~。それも大きい鳥の~」
「少なくとも、危ない鳥がいるのは、確かってことか。これは先に、退治の方がいいかもしれないか。その鳥を野放しにした状態では小人族探しは危険すぎるな」
「見つけ次第、弓で射向けばいいの?」
「渓谷と呼ばれるところは大半は危ないところだが、ここは、クレイジー渓谷と呼ばれる程、危険な渓谷だ。戦うなら場所を選ん方がいい。出来ればな話だけど」
「じゃあ、早速登りましょ~」



 あたし達は渓谷へ足を踏み入れたんだよ。

「はうう……、落ちそうなんだよ」

 足場が足の横幅しかないから、足を横にしないと足場が収まらないんだよ。おまけに、あたし達は、落ちないように、岸壁がんぺきの掴まれるところを掴んで、背中を岸壁がんぺき側にして進んでいるんだよ。進みにくいんだよ。それに崖側を見ながら進むのは怖すぎるんだよ。だけど、そうでもしないと進めなかったんだよ。岸壁がんぺき側を向いて進むと、胸が邪魔で落ちそうになったからなんだよ。

「風が強いな、気を付けろよ!」

 「ビューー-ン」と風が吹いているんだよ。

「結構押されるな……皆、大丈夫か? 特にエドナは」

 はうう。真っ先にあたしの心配をされているんだよ。確かに、あたしは、よく転ぶんだよ。だけど。

「風は当たるだけど、押されている感じはしないんだよ。普通に進めるんだよ」
「え? そんなことがあるのか?」
「そう言えば、エドナは主に風の魔術を得意にしているんだけ? だからか?」

 確かに、あたしは村にいた頃、大きな台風が来た時があって、その時、偶々、家の壁を壊して、風が入ってきたんだよ。だけど、あたし自身飛ばされていなかったんだよ。だけど、家具や食料は飛ばされちゃったんだよ。はうう、あたしのご飯が……。

「……まずいわ~。何か来るわ~」

「ピーーーーーー!!!」と鳥のような鳴き声が聞こえたんだよ。

 すると、あたし達のいる手前まで、大きな鳥が飛んできたんだよ。

「あれが、最近現れた、鳥か!?」
「は~、やっかいだな」

 レオさんがため息を付いたんだよ。

雷鳴鳥らいめいどり。電気を得意とする、上級系の魔物だ。全身から電気を起こすんだ。無差別放電といって、電気を操ることが出来なくって、体内の電気を放出しかでないが、強力だ。ちなみに、そいつの体は電気を通さないよ。逆に雷系魔術を放ったら、吸収されてしまう」

 「ぴゅぎゃあああああああ!!!」と大きく鳴くと、全身から電気が出たんだよ。

 放出された電気は槍のように岸壁がんぺきに突き刺さっているんだよ。

「あらあら~。どーしましょ~?」
「こんな状況なのに、なんで、そんなに呑気な顔が出来るんだよ!?」

 ドカーーーーン!!!

 電撃があたしの真下の足場に命中したんだよ。

「はわわわわわ!!!」

 足場が崩れて、あたしは谷へと落ちて行ったんだよ。

 目を思わずつぶってしまったんだよ。何が起きたかは、わからなかったんだよ。だけど、誰かに抱かれている感触があったんだよ。

 目を開けてみると。

「アイラさん!」

 そう、アイラさんがあたしを助けてくれたんだよ。

 アイラさんは剣を取り出して、剣を振ったら、鎖のように、伸びたんだよ。伸びた剣の先が岸壁がんぺきに突き刺さったんだよ。

 鎖の剣、蛇腹剣っていうんだよね? 突き刺さった剣先の真下へ移動。

 このままじゃ、岸壁がんぺきにぶつかるんだよ!

 アイラはさらに、鎖を取り出して、反対側に鎖は投げつけたんだよ。その鎖の先が岸壁《がんぺき》刺さって。あたしたちは左右の岸壁がんぺきに突き刺さった鎖の間で止まったんだよ。

「助かったんだよ……」

 岸壁《がんぺき》に激突しないで済んだんだよ。

 アイラさんはどれぐらいの長さがあるか、わからないほど、長い鎖を、伸ばしながら、ゆっくりと、蛇腹剣の先を刺さっている岸壁《がんぺき》の方へ向かっていったんだよ。

「そうだ! カチュアさん達は?」

 蒼い炎を纏ったカチュアさんは、岸壁がんぺきを蹴って雷鳴鳥へ飛んで行き、雷鳴鳥目掛けて剣を振り下ろすんだけど、電撃を纏った翼に防がれたんだよ。カチュアさんは、剣で力一杯押して、カチュアさん自身、後方へ飛んで行ったんだよ。それから、再び、岸壁がんぺきを蹴って、雷鳴鳥へ飛んで行く感じで、繰り返し行われていたんだよ。

 よく見たら、蒼い炎を纏った剣で電撃を纏った翼を当てるたび、電力が弱まっている気がするんだよ。

「まずいな。足場が安定しない、ところでは、いくらカチュアでも、戦いにくいだろう」
「おーーーい! アイラー--!」

 マリンさんが大声で叫んでいるんだよ。

「エドナは無事かーーー!!!?」
「ああー--!!!」
「悪いが、こっちはこっちで何とかする。後ほど、落ち合おうー--!!!」
「ああー--!!! 気をつけてくださいー--!!!」

 アイラさんは岸壁がんぺきに手を当てた。

 そして、「すーう、はー」と深呼吸をしたんだよ。すると、岸壁《がんぺき》から鎖が出てきたんだよ。たぶん、こっちの鎖は魔術で構成された鎖なんだよ。

「降りるよ」

 アイラさんは蛇腹剣を力一杯引いて、真上で岸壁がんぺきに突き刺さっていた剣先を抜いたんだよ。その後は、魔術で構成された鎖を伸ばしながら、ゆっくりと降りていくんだよ。

 
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