蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第七章 守るべきもの

7-6 ナギサイド

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 やる気が奪われるような、歌を歌いながら誰が来たよ。

 しかも、一人。

「やれ、やれ。侵入者なんて、かったるいなー」

 女性? それに気になるのは、オレンジ色の髪に、獣のような耳が、付いているということ。付け耳か? いや、一瞬、左右に動いているのが見えた。本物の耳のようだ。てことは亜種の一種か。この子は?

 敵が現れたというのに、眠たそうな表情しており、やる気が無さそう。大きな欠伸もしているし。

「侵入者は五人。色々いるが、その中には蒼い髪と瞳といった、伝説の女将軍見たいの人がいるようだ。子孫かなんかか?」
「侵入者じゃないわ~、カチュアよ~」
「エドナです」

 だから、名前を聞いているんじゃないから。もう、恒例行事になっている。しかも、相手の質問に全く答えてないし!

「その耳は獣人族? 何でここに?」
「猫さん見たいな耳なんだよ」
「いや、猫耳に見えるが、少し違う。テメェーは獅子の獣人族か?」

 マリンが尋ねると、猫耳娘は欠伸をしながら答えた。

「当たり」
「獅子は獣人族の国では代々王位を継承する。テメーは現獅子王の血族か?」
「……その娘だ」

 それって、このやる気が、無さそうな、猫耳娘はお姫様? その娘が何で、雇われているかは知らないが、ここで働いているんだ?

「何で、獅子王の娘さんがここに?」
「そんなのは、どうだっていい。これも仕事だ。悪く思いうな」

 眠そうな目つきだが、武器らしい物は持っていないが、拳を手前に出して構えていた。

「……」

 やる気はないが戦う姿勢をする相手が目の前にいるのも関わらず、カチュアは剣を抜こうとしない。

「どうした? 早くこな」
「……あなたはあんまり気乗りはしてないようだわ~」
『まあ、やる気無さそうだし』
「何でそう思う?」

 獣人族の娘が尋ねる。

「見れば分かるわ~」
「だから、どこをどう見れば、そう思えるんだ?」

 同感。確かにやる気は無さそうだけど。それに相手の心? というべきか、見てわかる人はあんただけだ。

「え? ん~、見ただけで分かるわ~」
「いや、いや、理由になっていないから」

 詳細はわからなが、カチュアは人の心が読めるではないかと、思うほど相手の考えていることを当ててしまう。

 だけど、本人曰く、相手の考えていることを読んでいるわけではないとのことだ。

「確かにこの人、やる気無さそうだけど」
「まあ、やる気はゼロだな」
『否定しないのか!?』
「そうじゃないわ~。やらないと行けないという使命というものを感じがするのよ~」
「成程。確かに、マイクランは人望はない。好き好んで、仕える者がいるとは思えない。何か事情があるのか?」
「そんなの関係ない」
「考えられるのは、金か? それとも、人質か?」
「……」

 一瞬、「人質」というワードのところで、ピクリと動いたような。

「どうやら、人質がいるようだな」

 アイラも察したようだ。

「……」
「じゃあ、あたし達が助けに行けば、あなたと戦うことはないんですね?」
「……見ず知らずの相手だよ?」
「ん? 人助けに、理由が必要なの~?」

 頭にハテナを浮かべているカチュア。そして、エドナ。

「いや! 助かるけど……」

  カチュアとエドナの反応に困惑しているよ。

 まあ、中々いないよな。会ったばかりの人を助けようとする人なんて。

「エドナちゃん達もいいよね?」

 カチュアはエドナ達に尋ねる。

「分かったんだよ」
「わくしも大丈夫ですわ」
「人助けは妾の責務だ」
「皆んながやるなら、文句は言わない」

 全員、意見が一致した。

「真実ていいのか?」
「もちろん」
「初対面なのにどうしてだろう。あなたならと思ってしまう。……信じてみよ。人質は亜種だが、獣人族ではなく、人魚族の女の子だ。関係は腐れ縁……幼馴染だ」

 人魚? て、あの下半身魚の様な体をしたあの人魚か? 陸では歩けないよな?

「わかったわ~。今すぐ、その人を助けにいくわ~」

 カチュア達が動き出そうとしたが。

「待ちな! 話はまだ終わっていない」

 獣人族の娘に止められた。

「どーしたの? 早く助けに……」
「それは勿論。ただ、ここで、あんた達見逃したら、あの子に危険が及ぶ可能性がある」
「そーなの?」

 そうだろうね。人質の人魚族はこの獣人族の娘を従わせるのに必要だ。そのマイクランが外道なら、裏切れば人質の人魚族は用済みとして始末される恐れがある。

「じゃあ、どうするのですか?」
「だから……、誰かとあたしと戦って、敵を欺くのよ」
「えー! 戦うんですか!」
「安心して。殺し合いはしない。手合わせみたいなもの、と思えばいい」

 成程。相手を欺くために、戦うのか。しかも、下手の演技は相手に不信感を抱いてしまう。

「……成程、やむ思えないな。しかし、誰か……」

  すると、鞘から剣を抜き取ったカチュアが。

「じゃあ~、わたしがやるわ~」

 カチュアが名乗り上がった。確かに、カチュアとエドナは演技が苦手。良く言えば、純粋。悪く言えば……、いや! やめておこう。

「あなたの名前は?」
「レオよ」
「よろしくね~」
「カチュア! ここは任せた」
「うん、頑張ってね~」

 エドナ達はカチュアを残して、人質を探しに走り出した。

『カチュア。一応聞くが、やることわかってる?』
「戦えば、いいでしょ~」
『相手にレオとの繋がりを疑わせないために、演技するんだよ』
「ん? 手合わせに命懸けとかあるの~」
『手合わせ認識じゃ、相手に不信感持たれるよ』
「ん~。難しいから、とにかく、戦えばいいのよ~」
『もう、それでいい! 良く考えれば、あんたは、まず命を取ることをしないから、気が済むまで戦ってくれ!』
「任せて~」
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