蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第三章 翼を持つ者

3-6 ユミルサイド

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 ソフィアさんがいるにも、関わらず、わたくしたら、思わず、皆様が集まっている場から、逃げてしまったわ。まだ、凶暴な魔物がいるかも、しれない、森の中に入ってしまいましたわ。

 現在、わたくしは木の上に、ある茂みの中に、隠れていますの。

 それにしても、さっきの三人の女性のうち、お一人。綺麗な蒼髪をしていましたわ。ほんの一瞬だったけど、瞳の色も綺麗な蒼だったわ。まるで、伝説の女将軍シェリアですわ。

「ユミル様ーーー! どこですかーーー!?」

 あ! さっきの人ですわ。出ないと。でも、怖いですわ。

「ユミルちゃーん~。そこにいるでしょ~? 出ておいで~」

 茂みから、除いて見ると、蒼髪の女性が、わたくしが隠れている茂みを見つめていましたわ。

 その蒼髪の女性と、目が合ってしまいましたわ。

「え!!!? ふぇーーーーー!!!? なんで、分かったんですかぁぁぁぁぁ!!!?」

 慌てていたら。

 バキバキ。

「わわわわわわわわ!!!」

 落ちて、いきますわ!! 翼を広げて、飛ぶ暇が、ありませんでしたわ!

 ドーーーン!!!

 あれ? 痛くないですわ。助かったのかしら? 落ちたはずなのに、どうしてかしら?

 ん? 柔らかいですわ。これはクッションでしょうか? わたしく、どうやら、この柔らかいクッションの上に落ちたから、助かったんですね。助かったのはいいのですが、そのクッションらしき物体に、頭を挟まれていましたわ。辺りも、真っ暗で、ちょっと怖くなってきましたわ。

 ……でも、何で、こんなところにクッションなんてあるのかしら?

 それよりも、何だか、段々と息が苦しくなってきましたわ。このクッションの中から脱出しないと、いけませんわ。わたくしはクッションらしき物体に手を置きましたわ。とても柔らかいですわ。でも、この感触は、クッションではなく、人の体ですわ。でも、どの辺りでしょうか?

「ちょっ、ちょっと~。ユミルちゃん~。そこは……、だめ……だよ~」

 蒼髪の女性らしきの声を聞きこえましたわ。

「い、いやーーーーーーーー!!!」

 その声を聞いて、思わず、騒いで、手足をジタバタ動かして、しまいましたわ。

「暴れないで~、胸がやだ……、何だか……、とても……」
「カチュアさん! なんという、声を出しているんですか!?」
「だって……、もう……、だめ……」
「カチュアさん! 胸が見えますよ! 出しちゃいけないものが見えてしまいますよ」
「そんな、こと……言ったって……、もう、やめてーーー!!」
「いやーーーーーーー!!! どうなっているですのーーーーー!?」
「や、やばいわ。ユミルちゃんの翼が服の中に入って……、その翼で……先っぽに当たって……、くすぐったい……、はあ、はあ、はあ」
「いやーーーーーーー!!! いやーーーーーーー!!! いやーーーーーーー!!!」
「カチュアさんの体が段々赤くなっていきます」
「もう……、もう……、もう……、だめ……よ~……」
「まずいです! 何とかしないと!」

 何とか、わたくしの頭を挟まっているクッションの山から脱出しないと、いけませんわ。だけど、脱出しようと、手足を動かすたびに、女性の叫び声が聞こえてきますわ。一体、どうなっているのですか?

 

 それからしばらく時間が経った頃。

「だいじょぶ?」
「え!? あ!?  すみません! わたくしったら」
「いいのよ~」

 助かったわ。何とか、脱出しましたわ。

 女性は風邪のある方のように、体を赤くなっていますわ。こうなったのも、わたくしのせいですわ。

 どうやら、わたくしは、木から落ちた時に、この蒼髪の女性の、大きなお胸の谷間に、わたくしの頭が挟まってしまったようなのです。だから、辺りが真っ暗なのでしたわ。そうとも、知らずに、わたくしは、この方のお胸に挟まり、逆さまな状態で暴れていたのですわ。

「しかし、カチュアがここまで騒ぐなんて」

 あれ? 蒼髪の女性の方の口調は、こんなんでしたかしら? もっと、ゆったりした、口調な気がしますのよ。

「ナギさん、気をつけてください。表に出ていますよ」
「あ! つい。なんか、最近、こういうのばかりで」
「あまり、口に出さなくっても、心の中で叫びようなことは控えた方がいいですね」

 状況がよくわかりませんわ。だけど、蒼髪の女性には、まるで、二人の人格があるかのように、性格が変わっていましたわ。

「もしかして、二重人格の人ですか?」
「似たようなものです」

 不思議なことがあるのですね。それとも、他国では常識かしら?

「ユミルちゃんを見つけたし、皆のところへ戻りましょ~、エドナちゃん、ルナちゃん」

 あれ? 今、二人の名前が上がりましたわ。でも、ここにいる、人数は……。

「その……、そこにいるのは、カチュアさんとルナさんと……、後は誰かいたのですか?」

 この場にいるのはわたくしと、カチュアさん、それと、ルナさんの三人。

「どーしたの? いるでしょ~? エドナちゃんが……」

 カチュアさんとルナさんが首を横を左右に振る。

「あら? あらら~?」
「エドナさんがいませんよ!?」
「どーしよう~?」
「もー、世話が焼けますよー。探しましょ」

 ルナさんが怒鳴り声をあげましたわ。一瞬、ビックリしましたわ。ここは我慢ですわ! また、迷惑を掛ける訳には、いけませんわ。

「待って、聞こえるわ~。この声は……エドナちゃんだ~!」

 カチュアさんは急に走り出した。

「カチュアさん! 待ってください! ユミル様もご一緒に」
「あ! わかりました」

 わたくしとルナさんはカチュアさんの後を追いかける。



 エドナさんという方を探すために、走るカチュアさんの、後に、ついていきますわ。

「いたわ~」

 あそこに見える、小さな子がエドナさんね。……だけど。

「助けてーーー!!!」

 エドナさんという方は、木の枝にぶら下がっていましたわ。しかも、その真下、は流れが激しい川ですわ。セシル王国にある、殆どの川は、他国からは、滝と言われるほど、流れが激しいらしいわ。落ちたら、一溜りもありませんですのよ。

「なんで、そんなことになっているんですか!?」
「カチュアさんたちを探していたら、転んじゃったんだよ! そしたら、こんなことに!」
「どーする? わたしが、この木を川の反対方向に倒す?」

 今、エドナさんが捕まっている、この樹木のことですね。

「この樹木を倒す時の衝撃で、エドナさんが、川に落ちるかもしれませんよ」
「ん~。どーしようかかな~?」
「わたくしが飛んで、あの方を運びますわ」
「それしか、ありませんですね。ユミル様、申し訳ございませんが、お願いします」
「任せてくださいませ」

 わたくしは翼を広げて、空を飛ぶましたわ。そして、飛んで、エドナさんのところへ向かっていきましたわ。

「エドナさん、今、支えますね」
「すいません。ありがとうございます」

 バキ! 

「はわ!?」

 バキ! バキ! バキ! バキ!

 エドナさんが掴んでいた枝が折れましたわ。

「はわわわわわ!!」
「エドナさん!!」

 わたくしは、落ちていくエドナさんを追いかけましたわ。そして、川に落ちるギリギリなところで、エドナさんの体を抱き着くように掴んみましたわ。

「危なかったです」
「あの……ユミル様……」

 あれ? 手元がなんだか柔らかいですわ。この感触、ついさっき触ったような気がしますわ……。

 わたくしの手元を見ると、掴んでいた場所はエドナさんの胸だったですわ。

 またなのですか!
 
「ちょっと……、そこは……」
「エドナさん、すみません。でも、ジッとしていてください」
「ごめんなんだよ。でも、なんだか……」

 エドナさんは胸を掴まれて、動揺して少々、暴れている。

「あたし……、胸は……、弱いんだよ……」
「すみません。でも、我慢してください。このままでは落ちてしまいます」
「わかっています。……でも。くすぐったいんだよ!!」

 必死に支えています。何とか、足場まで、飛ぼうとしましたが、エドナさんが暴れて、中々、進みませんですわ。

「大変そうだけど、手助けしないでいいのかな~?」
「悔しいですが、ルナ達が飛べない限り、手助けはできないですよ」


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