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第三章 翼を持つ者
3-5 エドナサイド (場面変更)
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あたし達は、国境で出会った、セシル兵の方々に案内してもらっているんだよ。
「この先にはアルト村があります」
「わかりました」
距離はまだ、あるようだから、あたし達は、歩きながら、話の続きを……あれ?
「そう言えば、何の話していたんだっけ?」
「ん~、亜人だっけ? それの話だったような~」
あ! そうだったんだよ。忘れていたんだよ。
「このセシル王国は鳥人族の国って、話をしていた途中だったんだよ」
「エドナさん、国の名前は知っていたのに、どういった人たちが住んでいるのか、分からなかったんですね」
はうう。確かに、村長さんから聞いた覚えは、あたんだけど、頭に入ってこなかったんだよ。
「他にも、亜人って、いるの~? って、ナギちゃんが」
「あれ? 表に出ないんですね?」
「最近、疲れ気味になっているらしいの~。でも、わたしたちの会話を聞いているから、だいじょぶよだって~」
ナギさんも大変なんだね。
「あ~、そうですか。え~と、ルナ達は人間で言われていています。鳥人族の翼のように人間とは違った外見を持っているのが特徴です。他には……獣人族、竜人族、小人族、巨人族、妖精族、魔人族、人魚族、まだまだ色々います。」
「結構いるんだね。他の亜人にも、会ってみたいかも。そういった人たちには、まだ、人間しか見たことがなかったんだよ」
「そんなはずはないですよ。……でも、それはエドナさんの目線での、話か……」
あれ? 途中から声が小さくなって、聞き取れなくなったんだよ。
「何かいったかな?」
「ううん、何でもないです。ただの独り言です」
「ん?」
変なルナちゃん
「ん!?」
「カチュアさん!? どうしたんですか!?」
「ちょっといいですか~」
カチュアさんは、あたしたちの真上にいる、セシル兵に尋ねた。
「この先に村って、あるかしら~?」
「あ! はっい! でも、それが、どうなされましたか?」
「そっか~、じゃあ、急いで向かった方がいいかもよ~」
「のんびり屋さんの、カチュアさんが『急ぐ』なんて使うぐらいだから、本当に向こうに何かあったんですか?」
ルナちゃんが尋ねると、カチュアさんは、ゆっくりと、うなずいたんだよ。
やっぱり何か起きているんだね。
「ルナちゃんはわたしと一緒に」
「え!? ちょっと!? ルナは後から……」
カチュアさんはルナちゃんを背中の上に乗せたんだよ。
「遠慮しないで~」
「それでは、あたしは先に行きます」
「気を付けてね~」
あたしはカチュアさんより先に走り出した。
「それじゃ~、わたしも行くよ~」
カチュアさんも続けて走り出したんだよ。
「いやーーーーー!!! もう、嫌ーー-ーー!!!」
後ろからルナちゃんの叫び声が聞こえるんだなよ。大丈夫かな? ルナちゃんのことは気になるけど、カチュアさんに任せれば大丈夫なんだよ。だから、急いで向かわないとなんだよ。
ここが目的地かな? はうう。ここに来るまで、何回か、転んじゃったんだよ。
……それにしても。
「酷い……」
あたしの住んでいたライム村や此間訪れたロプ村のように家が壊れていたり、治癒の必要な人な怪我人がいるんだよ。
「そうだ! 敵は!?」
辺りを見渡すと、危険種らしい死骸はあったんだよ。
「だいじょぶよ~。敵らしい、気配は感じなくなったわ~」
カチュアさんと、ルナちゃんが追いついてきたんだよ。だけど……。
「それは……、よかったです……、ルナは気持ち悪くって……、戦えません……」
ルナちゃん、なんだか、凄く具合が悪そうなんだよ。さっきまで元気だったのに。カチュアさんの背中から降りた、ルナちゃんは地面にうずくまっているんだよ。
「さっきまで、居ましたが、もう退治しました。この村人の応急処置ですが済まされています。後は安全な都まで誘導を行っているところになります。ここにはユラ村からの避難民もいます」
誰か来たんだよ。黒い……あれって、エプロンかな? それを着たていたんだよ。この国の人かな?
「貴方は?」
あたしが尋ねると、ルナちゃんが。
「あれ? もしかして、ソフィアさんですか? ユミル姫の付き人の」
さっきまで、うずくまっていたのに、もう、立ち上がっていたんだよ。大丈夫かな? まだ、体がふらふらしているんだよ。
「もしかして、アルヴス殿の妹さん? 名前は確か……、ルナ殿でしたか?」
「はい」
「知り合いなの~?」
「すれ違った程度でしたけど、ルナは一度、セシル王国に来たことがあったんです。会ったのはお城です」
ソフィアさんと呼ばれていた人は、カチュアさんをジーっと見つめているんだよ。
「蒼い髪に蒼い瞳? あなたは……?」
「カチュアよ~」
この国でもカチュアさんの容姿は珍しいのかな。会うたびに「蒼」って口にしているのが聞こえるんだよ。
「そちらの可愛らしい方も、ルナ殿の連れですか?」
可愛いって、誰のことかな? すると、ルナちゃんがあたしの肩に指を突っつく。
「エドナさんのことですよ」
小声でルナちゃんが、教えてくれたんだよ。……あたしのことだったんだ。
「エドナです。よろしくお願いします」
なんだか恥ずかしくなったんだよ。
「ところで、ユミル様を見ませんでしたか?」
「ユミル様も来ているんですの?」
「はい、皆の治癒のために」
あ! だから、怪我を負ったいたかも、しれない、人達の傷が塞がっていたんだね。
「確か、ユミル様も治癒術が使えましたよね」
「治癒術って、エドナちゃんが前に使っているのだよね~」
「そうだよ。治癒術の場合は、この聖石が必要なんだよ」
あたしはカチュアさんに見せるように、右腕に嵌めてある、魔道具に付いている、二つある綺麗な石の内、一つに指を刺したんだよ。
もう一つある石は、風の魔術を扱う、魔石なんだよ。
「でも、……お姫様がわざわざ、ここまで来てくれるなんて、凄いです。治癒のために来られたなんて」
「うちの姫様は凄い方です。……だけど」
ソフィアさんは軽く息を吐き出したんだよ。
「どこかに、いなくなってしまいました」
「え!!!」
ルナちゃんが、驚いた声を出しているんだよ。
「そろそろ。皆を避難しないと、ならないのに、どこに行ったんだが。まだまだ、都まで距離はあるし」
「翼はあるわね。移動する時は飛んでいかないのかしら~?」
カチュアさんの言う通りだよね。飛べれば早く着くのに。
「翼に怪我した者が多くいて、長距離も飛べるものは、ほとんどいないのです。だから、飛べない者を担いだりして、休みながら誘導しているのです」
「それに、魔物は色んな種類がいるなら飛べる魔物が出てくる可能性があります。飛んでいったら格好の的になります」
「そうなの~?」
「はい」
ん~、ルナちゃんって、やっぱり凄いんだよ。あたしよりも年下なのに、そこまで予測できるんだよ。
あっ! そう言えば
「ところで、なんでユミル様はなんでいなくなったんですか?」
「悪い癖が出てしまったようで」
「え?」
「その姫様は皆様が来た辺りから、姿が見えなくなりました」
「そうですか? またですか?」
ルナちゃんが大きな息を吐いたんだよ。
「ユミル様は人見知りなお方で、知らない方を見ると、どっかに隠れてしまうんです。だから、現在、我が兵たちは、怪我人を見ながら、ユミル様を探しているのです」
あの、探し物を探しているような動きをしているセシル兵達は、そのユミル様を探していたんだね。
「あっ~。そうなの~」
カチュアさんが、ぼっーとしながら、森の方を眺めていたんだよ。
「あの~、さっきから気になっているんだけど、あれは何かしら~?」
カチュアさんの指先の方にあったのは、茂みだったんだよ。あれ? その茂みから、鳥さんの翼らしきものが見えたんだよ。
「翼だね」
「あのー。そこに隠れている人……」
カチュアさんが声を掛けると。
「きゃあああああ!!! 」
草むらから、女の子が騒ぎながら出てきたんだよ。よく見たら、綺麗な金色の長い髪をした女の子なんだよ。
「な! なんでわかったんですか!? 隠れていたのに!!!」
「いや、いや、いや、いや! 翼が丸見えでしょ!? というか、あれで、隠れているつもりだったんですか!?」
ルナちゃんが叫んだんだよ。
「ユミル様!! そちらに、いらっしゃったんですね」
ソフィアさんが、多分、この女の子の名前を呼んだんだよ。ユミルって、言っていたから、この人が、セシルのお姫様のユミル様なんだ。
「さあ、こちらに……」
セシル兵の一人がユミル様の元へ向かっていくんだよ。
やっぱり、鳥人族の国のお姫様のことだけあって、ユミル様の背中には、翼を生やしているんだよ。
「いや!!! 知らない人!!! 助けて!!!」
凄い叫び声が……! 耳が痛くなったんだよ! 耳を塞いでも、聞こえるんだよ!
「あのーら。私たちは……部隊兵」
「いやーーー!!! 部隊兵に似せた知らない人!!! 助けて!!!」
また、叫び声を出したんだよ。耳が痛いんだよ。
「自国の兵相手でも、怖がっているじゃない。人見知りというか、臆病ですね!」
ルナちゃんも耳を塞いでいる。
カチュアさんは耳を塞いでいないんだよ。平気なのかな?
ユミル様は森の方へ走っていっちゃったんだよ。
「姫様! 危険です!」
ソフィアさんの呼び声掛けに応じず、森の中に入っていたんだよ。
「まずいですね。魔物がいない保証はないというのに」
「それなら、大きな足跡は聞こえないは~」
「わかるのですか?」
「ええ~」
やっぱり、カチュアさんの耳が良いんだよ。
「なら、急いで姫様を、探さないと!」
「ソフィアさんの心配なのはわかるが、今は魔物がいないとはいえ、危険なのは変わりないです。カチュアさんとエドナさんは、のんびりし過ぎだけど」
そんなことはないと思うんだよ。……多分。
「ユミル様は、ルナ達が探しに行きましょう」
「いや、それなら、私も……」
「ソフィアさんは、ここに残った方がいいですよ。同じ国の方……まあ、それ以上に同じ鳥人族の方がここに残った方が避難している人たちにとって安心します。避難している方々は心身疲れ切っていますので」
「確かに……その通りですね。さすがは、あのルナ殿ですね」
ルナちゃん、もう凄く褒められているんだよ。だけど、本当に褒められているのかな? ソフィアさん、顔が全然笑っていなんだよ。
「しかし、道中、魔物に遭遇するのでは?」
「だからこそ、カチュアさんを連れて行くんです。カチュアは野生の感が鋭いから、その辺の兵よりも生存率は高いと思われます」
「カチュア殿はそれで……」
「わかったわ~」
「あたしに任せてなんだよ!」
元気良く、返事をしたんだよ。
「……即答ですか」
「さあ~。ユミルちゃんを探しましょうか~」
カチュアさんとルナちゃん、そして、あたしは、ユミル様を追って、森に入っていったんだよ。
「あの、蒼髪の女性。会ったばかりではありますが、なぜでしょうか? 信用してしまいます」
「この先にはアルト村があります」
「わかりました」
距離はまだ、あるようだから、あたし達は、歩きながら、話の続きを……あれ?
「そう言えば、何の話していたんだっけ?」
「ん~、亜人だっけ? それの話だったような~」
あ! そうだったんだよ。忘れていたんだよ。
「このセシル王国は鳥人族の国って、話をしていた途中だったんだよ」
「エドナさん、国の名前は知っていたのに、どういった人たちが住んでいるのか、分からなかったんですね」
はうう。確かに、村長さんから聞いた覚えは、あたんだけど、頭に入ってこなかったんだよ。
「他にも、亜人って、いるの~? って、ナギちゃんが」
「あれ? 表に出ないんですね?」
「最近、疲れ気味になっているらしいの~。でも、わたしたちの会話を聞いているから、だいじょぶよだって~」
ナギさんも大変なんだね。
「あ~、そうですか。え~と、ルナ達は人間で言われていています。鳥人族の翼のように人間とは違った外見を持っているのが特徴です。他には……獣人族、竜人族、小人族、巨人族、妖精族、魔人族、人魚族、まだまだ色々います。」
「結構いるんだね。他の亜人にも、会ってみたいかも。そういった人たちには、まだ、人間しか見たことがなかったんだよ」
「そんなはずはないですよ。……でも、それはエドナさんの目線での、話か……」
あれ? 途中から声が小さくなって、聞き取れなくなったんだよ。
「何かいったかな?」
「ううん、何でもないです。ただの独り言です」
「ん?」
変なルナちゃん
「ん!?」
「カチュアさん!? どうしたんですか!?」
「ちょっといいですか~」
カチュアさんは、あたしたちの真上にいる、セシル兵に尋ねた。
「この先に村って、あるかしら~?」
「あ! はっい! でも、それが、どうなされましたか?」
「そっか~、じゃあ、急いで向かった方がいいかもよ~」
「のんびり屋さんの、カチュアさんが『急ぐ』なんて使うぐらいだから、本当に向こうに何かあったんですか?」
ルナちゃんが尋ねると、カチュアさんは、ゆっくりと、うなずいたんだよ。
やっぱり何か起きているんだね。
「ルナちゃんはわたしと一緒に」
「え!? ちょっと!? ルナは後から……」
カチュアさんはルナちゃんを背中の上に乗せたんだよ。
「遠慮しないで~」
「それでは、あたしは先に行きます」
「気を付けてね~」
あたしはカチュアさんより先に走り出した。
「それじゃ~、わたしも行くよ~」
カチュアさんも続けて走り出したんだよ。
「いやーーーーー!!! もう、嫌ーー-ーー!!!」
後ろからルナちゃんの叫び声が聞こえるんだなよ。大丈夫かな? ルナちゃんのことは気になるけど、カチュアさんに任せれば大丈夫なんだよ。だから、急いで向かわないとなんだよ。
ここが目的地かな? はうう。ここに来るまで、何回か、転んじゃったんだよ。
……それにしても。
「酷い……」
あたしの住んでいたライム村や此間訪れたロプ村のように家が壊れていたり、治癒の必要な人な怪我人がいるんだよ。
「そうだ! 敵は!?」
辺りを見渡すと、危険種らしい死骸はあったんだよ。
「だいじょぶよ~。敵らしい、気配は感じなくなったわ~」
カチュアさんと、ルナちゃんが追いついてきたんだよ。だけど……。
「それは……、よかったです……、ルナは気持ち悪くって……、戦えません……」
ルナちゃん、なんだか、凄く具合が悪そうなんだよ。さっきまで元気だったのに。カチュアさんの背中から降りた、ルナちゃんは地面にうずくまっているんだよ。
「さっきまで、居ましたが、もう退治しました。この村人の応急処置ですが済まされています。後は安全な都まで誘導を行っているところになります。ここにはユラ村からの避難民もいます」
誰か来たんだよ。黒い……あれって、エプロンかな? それを着たていたんだよ。この国の人かな?
「貴方は?」
あたしが尋ねると、ルナちゃんが。
「あれ? もしかして、ソフィアさんですか? ユミル姫の付き人の」
さっきまで、うずくまっていたのに、もう、立ち上がっていたんだよ。大丈夫かな? まだ、体がふらふらしているんだよ。
「もしかして、アルヴス殿の妹さん? 名前は確か……、ルナ殿でしたか?」
「はい」
「知り合いなの~?」
「すれ違った程度でしたけど、ルナは一度、セシル王国に来たことがあったんです。会ったのはお城です」
ソフィアさんと呼ばれていた人は、カチュアさんをジーっと見つめているんだよ。
「蒼い髪に蒼い瞳? あなたは……?」
「カチュアよ~」
この国でもカチュアさんの容姿は珍しいのかな。会うたびに「蒼」って口にしているのが聞こえるんだよ。
「そちらの可愛らしい方も、ルナ殿の連れですか?」
可愛いって、誰のことかな? すると、ルナちゃんがあたしの肩に指を突っつく。
「エドナさんのことですよ」
小声でルナちゃんが、教えてくれたんだよ。……あたしのことだったんだ。
「エドナです。よろしくお願いします」
なんだか恥ずかしくなったんだよ。
「ところで、ユミル様を見ませんでしたか?」
「ユミル様も来ているんですの?」
「はい、皆の治癒のために」
あ! だから、怪我を負ったいたかも、しれない、人達の傷が塞がっていたんだね。
「確か、ユミル様も治癒術が使えましたよね」
「治癒術って、エドナちゃんが前に使っているのだよね~」
「そうだよ。治癒術の場合は、この聖石が必要なんだよ」
あたしはカチュアさんに見せるように、右腕に嵌めてある、魔道具に付いている、二つある綺麗な石の内、一つに指を刺したんだよ。
もう一つある石は、風の魔術を扱う、魔石なんだよ。
「でも、……お姫様がわざわざ、ここまで来てくれるなんて、凄いです。治癒のために来られたなんて」
「うちの姫様は凄い方です。……だけど」
ソフィアさんは軽く息を吐き出したんだよ。
「どこかに、いなくなってしまいました」
「え!!!」
ルナちゃんが、驚いた声を出しているんだよ。
「そろそろ。皆を避難しないと、ならないのに、どこに行ったんだが。まだまだ、都まで距離はあるし」
「翼はあるわね。移動する時は飛んでいかないのかしら~?」
カチュアさんの言う通りだよね。飛べれば早く着くのに。
「翼に怪我した者が多くいて、長距離も飛べるものは、ほとんどいないのです。だから、飛べない者を担いだりして、休みながら誘導しているのです」
「それに、魔物は色んな種類がいるなら飛べる魔物が出てくる可能性があります。飛んでいったら格好の的になります」
「そうなの~?」
「はい」
ん~、ルナちゃんって、やっぱり凄いんだよ。あたしよりも年下なのに、そこまで予測できるんだよ。
あっ! そう言えば
「ところで、なんでユミル様はなんでいなくなったんですか?」
「悪い癖が出てしまったようで」
「え?」
「その姫様は皆様が来た辺りから、姿が見えなくなりました」
「そうですか? またですか?」
ルナちゃんが大きな息を吐いたんだよ。
「ユミル様は人見知りなお方で、知らない方を見ると、どっかに隠れてしまうんです。だから、現在、我が兵たちは、怪我人を見ながら、ユミル様を探しているのです」
あの、探し物を探しているような動きをしているセシル兵達は、そのユミル様を探していたんだね。
「あっ~。そうなの~」
カチュアさんが、ぼっーとしながら、森の方を眺めていたんだよ。
「あの~、さっきから気になっているんだけど、あれは何かしら~?」
カチュアさんの指先の方にあったのは、茂みだったんだよ。あれ? その茂みから、鳥さんの翼らしきものが見えたんだよ。
「翼だね」
「あのー。そこに隠れている人……」
カチュアさんが声を掛けると。
「きゃあああああ!!! 」
草むらから、女の子が騒ぎながら出てきたんだよ。よく見たら、綺麗な金色の長い髪をした女の子なんだよ。
「な! なんでわかったんですか!? 隠れていたのに!!!」
「いや、いや、いや、いや! 翼が丸見えでしょ!? というか、あれで、隠れているつもりだったんですか!?」
ルナちゃんが叫んだんだよ。
「ユミル様!! そちらに、いらっしゃったんですね」
ソフィアさんが、多分、この女の子の名前を呼んだんだよ。ユミルって、言っていたから、この人が、セシルのお姫様のユミル様なんだ。
「さあ、こちらに……」
セシル兵の一人がユミル様の元へ向かっていくんだよ。
やっぱり、鳥人族の国のお姫様のことだけあって、ユミル様の背中には、翼を生やしているんだよ。
「いや!!! 知らない人!!! 助けて!!!」
凄い叫び声が……! 耳が痛くなったんだよ! 耳を塞いでも、聞こえるんだよ!
「あのーら。私たちは……部隊兵」
「いやーーー!!! 部隊兵に似せた知らない人!!! 助けて!!!」
また、叫び声を出したんだよ。耳が痛いんだよ。
「自国の兵相手でも、怖がっているじゃない。人見知りというか、臆病ですね!」
ルナちゃんも耳を塞いでいる。
カチュアさんは耳を塞いでいないんだよ。平気なのかな?
ユミル様は森の方へ走っていっちゃったんだよ。
「姫様! 危険です!」
ソフィアさんの呼び声掛けに応じず、森の中に入っていたんだよ。
「まずいですね。魔物がいない保証はないというのに」
「それなら、大きな足跡は聞こえないは~」
「わかるのですか?」
「ええ~」
やっぱり、カチュアさんの耳が良いんだよ。
「なら、急いで姫様を、探さないと!」
「ソフィアさんの心配なのはわかるが、今は魔物がいないとはいえ、危険なのは変わりないです。カチュアさんとエドナさんは、のんびりし過ぎだけど」
そんなことはないと思うんだよ。……多分。
「ユミル様は、ルナ達が探しに行きましょう」
「いや、それなら、私も……」
「ソフィアさんは、ここに残った方がいいですよ。同じ国の方……まあ、それ以上に同じ鳥人族の方がここに残った方が避難している人たちにとって安心します。避難している方々は心身疲れ切っていますので」
「確かに……その通りですね。さすがは、あのルナ殿ですね」
ルナちゃん、もう凄く褒められているんだよ。だけど、本当に褒められているのかな? ソフィアさん、顔が全然笑っていなんだよ。
「しかし、道中、魔物に遭遇するのでは?」
「だからこそ、カチュアさんを連れて行くんです。カチュアは野生の感が鋭いから、その辺の兵よりも生存率は高いと思われます」
「カチュア殿はそれで……」
「わかったわ~」
「あたしに任せてなんだよ!」
元気良く、返事をしたんだよ。
「……即答ですか」
「さあ~。ユミルちゃんを探しましょうか~」
カチュアさんとルナちゃん、そして、あたしは、ユミル様を追って、森に入っていったんだよ。
「あの、蒼髪の女性。会ったばかりではありますが、なぜでしょうか? 信用してしまいます」
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