蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第二章 英雄の力

2-5 エドナサイド

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 ミカンちゃんという、女の子からの、依頼を引き受けて、早速、依頼先の、ロプ村という、ところに向かうことになった、あたし達。

 現在は、まだ、街中にいるんだよ。

「さて、行きましょうか~」
「行こう、行こう!」
「何事もないように、言っているよ。この人」

 ルナちゃんは、目を細くさせて、あたしを見つめているんだよ。

「え? どーしたの~? ルナちゃん?」
「先に行っていた。というか、迷子になっていたエドナさんを見つけた時は、ものの見事に、やらかしていましたよ」
「はうう……。それはもう、忘れてよー!」

 あたしは、カチュアさんとルナちゃんが逸れてから、二人を探していたんだよ。その途中で、転んで、道歩く人にぶつかったんだよ。でも、それだけでは済まなかったんだよ。あたしが、ぶつかった人が更に、道歩く人にぶつかったんだよ。それから、次々と、街の人たちを巻き込んで、倒していっちゃたんだよ。

 そのことで、謝罪をして周っていたら、カチュアさん達と合流できたんだよ。はうう。

「あー、そうですね。じゃあ、行きましょう。……その前に、聞きますが、あなた方は、ロプ村がどこにあるか、わかりますか?」

 あ! そういえば……。あたしは、つい此間までは、村から離れたことは、なかったんだよ。この街に、着くまで、かなり迷ってたんだよ。だから、ロプ村自体知らないんだよ。

「カチュアさんは知っています?」

 取り敢えず、カチュアさんに聞いてみたんだよ。

「う~ん……分からないわ~」
「そんなことだと、思いました」

 なぜだか、ルナちゃんは大きく息を吐いていたんだよ。

「ルナが場所わかりますから案内しますよ」
「ありがと~」
「……その前に、カチュアさん」

 ルナちゃんは、カチュアさんの身体を上から下まで見ると。

「エドナさんは弓を持っています。ですが、カチュアさん。あなた素手で戦うつもりですか? 見た感じ、魔道具は装備していないようですし」

 カチュアさんの剣は、この街に着までに全部壊しちゃたんだよ。だから、今のカチュアさんは武器を一つも持っていないんだよ。でも。

「カチュアさんなら素手でも戦えますよ」
「素手って、確かに可能ですね。……ちなみに、カチュアさんは勇能力でも、持っているんですか? あのバカ力は尋常ではないです」

 勇能力って、確か、よく英雄譚に載っている、英雄の持つ力だよね? あたしは詳しく知らないんだよ。カチュアさんがそれなのかな?

「勇能力って?」

 あれ? カチュアさん自身、わからないみたいなんだよ。

「それじゃあ、カチュアさんは、魔術は使えますか? 見た感じ、魔道具は身につけていないみたいだけど」
「ん~? 使ったことは、ないわ~」
「うん、まあいいや。これは……想像以上に手が掛かるわ」

 ルナちゃんの目線があたし達がいない方に向いた状態で、また、大きく息を吐いたんだよ。

「おや、君は確か、アルヴスくんの妹さんではないか」

 この街の人かな? 突然、男の人から声をかけられる。

「あなたは確か」
「はっはっはっは!」

  急に笑い出しちゃったんだよ。

「わたしはベレクト。ガロン様の配下のものだ」

 ガロン? 人の名前かな? 何処で聞いたことがあるんだよ。どこだっけ?

「そのガロン……様の隊の人が、なんでここに?」
「ふむ、アウルの街にいたんだが、急遽、ガロン様に呼び出されてしまって、その途中で兵達を休ませているんだ」

 あれ? アウルも、どこかで聞いたことがあるんだよ。

「しかし、そろそろ、いかないと。一秒で遅れたら大変なことに。では、わたしはこれで失礼する」

 そういって、すぐにこの場を去っていった。

「なんだか騒がし人だね」
「あの人は八騎将の一人である、ガロン……様の配下なのよ」
「八騎将って、コルネリア帝国を守る八人の将軍だよね」
「そう、その一人シグマ様の配下がルナの兄です」
「そうなんだ!」
「ガロン……様は、冷血な性格で、有名な方なんです。でも、あの、べレクトさんは見ての通り、ガロン……様の下で、働いていると、思えないほど、陽気な方なんです。噂では、凄い実力の持ち主らしいですよ」
「う~ん」

 あれ? カチュアさんが、なんか頭を抱えているんだよ。

「どうしたんですか?」

 カチュアさんに声を掛けて見たんだよ。

「あの人~」
「ベレクトさんがどうしたんですか?」
「なんか不思議な感じがするのよ~。表情に出しているよりも、中はかなり騒がしい感じがするの~。なんて言うか、もっと、騒ぎたいって感じかな~」

 頭がこんがらがってきた。つまり……、どういうことかな?

「うまく言えないけど、表情が感情よりも、騒がし差が抑えられているてことかな? 一応、場を弁えているからじゃないかしら、仕事中だし」

 うーん……ルナちゃんの説明でも、よくわからない。

「べレクトさんのことはいいから、早く行きましょう」



 しばらく、ルナちゃんの案内で、街を歩いていると、お店みたいな場所に連れてこられたんだよ。大きな看板には、剣みたいな模様があったんだよ。

「ここは?」
「武器屋です。あなた方、特にカチュアさんは、ちょっと装備を整えた方がいいですよ」

 ルナちゃんが、店のドアを開けると。

「いらっしゃい」

 店の中に入ると、店番というのかな? その人の顔を見て驚いたんだよ。見覚えのある顔だったんだよ。

「嬢ちゃんじゃないか! どうしてここに?」
「エドナさんの知り合いですか?」
「見たこと、あるようだけど……」

 確かに見覚えがある顔なんだよ。どこで会ったかな?

「おい、おい、何忘れているんだよ! ハルトだよ。ハルト! 何忘れているんだよ」

 ハルトって、確か……。

「あー、ハルトさん! ハルトさんだ!」

 ハルトさんは以前、ライム村に住んでいて、現在はどこかの街で、武器屋を営んでいるんだよ。そのどこかの街って、アヴァルの街のことだったんだ!

「武器屋をしている話は聞いていたんだけど、この街にいらっしゃったのですね」
「そういえば、言っていなかった」

 ハルトさんのことだから、街の名前を忘れていたんだよ。きっと。

「そちらの小さな嬢ちゃんと、マントの……、微かに見える顔からすれば姉ちゃんか? この二人は?」
「こっちはルナちゃんで、こっちはカチュアさんなんだよ」
「で、なんで、小さな嬢ちゃんがここに?」

 そっか! ハルトさんは、ライム村で起きたことを知らないんだ!

「実は……」

 ハルトさんに、あの村の惨劇のことを話したんだよ。

「そんなことが……、辛かったな。……大丈夫なんか? こんな時に」
「あたしは大丈夫なんだよ!」
「……そっか、無理はするなよ。で、武器だよな、マントの嬢ちゃんの……」

 ハルトさんたら、早速、カチュアさんの名前を忘れているんだよ。

「ところで、なんで一人だけ、マントなんて着ているんだ?」
「うーん~。わたしは目立つらしいのよ~」
「そっか、なんか、事情があるなら仕方がないか。で、どんな武器を扱うんだ」
「剣です」
「剣となると、このショートソードか?」
「カチュアさんは、刃こぼれしにくい、剣の方がいいかな? そこの大きな剣とか」

 あたしが指先には、大きな剣があったんだよ。でも見る限りカチュアさんの身長を軽く超えているんだよ。

「ええと……、これはさすがに、手慣れた剣士でも、持つだけでさえ、難しいぞ」

 武器の扱いが得意なハルトさんの反応の方が正しいのかな? でも、カチュアさんなら。

 カチュアさんは大剣を持つと。

「え?」

 カチュアさんは片手で大剣を軽々と持ったんだよ。

「うそだろ……」
「怪力なのは分かっていましたが、まさか、片手で……」

 ハルトさんとルナちゃんは、とても驚いていたんだよ。

「マントの嬢ちゃんは、もしかして勇能力の持ち主か?」
「勇能力? そーなんですか? エドナちゃん?」
「うーん、わからないんだよ。ハルトさん、勇能力って、なんですか?」
「エドナさんも、わからないですか?」
「小さな嬢ちゃんは、勇能力とは無縁だったから、触れることはなかったんだ。英雄と呼ばれるような者が持つ特殊能力だ」
「魔術とは違うの?」
「まあな」
「そんなことよりも行かないと~。あ! お金が必要よね~。これいくらですか~?」
「いいや、小さな嬢ちゃんの知り合いだからな。それに、小さな嬢ちゃんを守ってくれただろ? 感謝の印だ! 初回だけだが、サービスだ。貰っておいてくれ」
「いいんですか? ありがとー、ハルトさん」
「よかったですね」

 あたしたち、昨日の宿代で、お金切らしていたからハルトさんには感謝なんだよ。

「じゃあ、行こう~」
「はい」
「ちょっと待って」

 店から、出ようとする、あたしとカチュアさんを止め。ルナちゃんはハルトの方に向いて。

「ハルトさんでしたっけ? あなた、どこかで、会ったことが、ある気がするのです」
「俺はピンク髪の嬢ちゃんには、会ったことないが」

 ピンク髪って、もう、ルナちゃんの、名前も忘れているんだよ! 

「ハルトさんは、忘れているだけなんだよ!」
「失礼な! 忘れっぽいのは、名前だけだ! 顔、は見たら覚えられるぜ」
「名前を、忘れるのも、失礼だと思うんですか……まあいいや、失礼します」
「気をつけな」

 お店から出るんだよ。



「じゃあ、行きましょ」

 あれ? あそこの道の隅っこに座り込んでいる人見たことがあるんだよ。確か、酒場で騒いでいた人だよ。何で道の隅っこで座り込んでいるのかな?

「兄貴、大丈夫ですか?」
「俺はもう、自信を無くしてしまった」

 何だか、落ち込んでいるみたいね。

「エドナさーん」

 ルナちゃんが呼んでいるんだよ。

「あ! はーい」

 あたしは、カチュアさんとルナちゃんの、ところまで走っていったんだよ。二人のところまでいくと、三人揃って歩き出したんだよ。

「って、カチュアさん! 剣引きずっていますよ」
「え?」

 買ったばかりの剣が、カチュアさんの身長を超しているから、背中に背負った、鞘に納めた大剣の先が、地面に付いて引きづっているんだよ。

「そういえば、エドナさん。さっきは走って、いましたけど転ばなかったんですね」
「もー! あたしは転んでばかりじゃないよー! ルナちゃん!」

 いざ! ロプ村へ出発なんだよ!
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