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3章
6.協力者が増えました
しおりを挟むそして王子とダリア、マリエラの三人は、王妃と対面していた。
「お許しください、殿下。これもすべて国の将来のためなのです。騙したことは決して許されるとは思ってはおりませんが、こうでもしなければ……」
ダリアの謝罪の言葉を、王子は途中で止めた。
その表情は憮然とはしていたが、どこかほっとしたようでもあり。
「それはもういい。元はと言えば、私が不甲斐ないせいでこんな企みを招いたのだ。それに、マリエラにもすまないことをした。貴族でもないお前を、危険なことに巻き込んでしまった」
そう言って、王子は頭を下げた。
マリエラは慌ててそれを止め、思い切り深く腰を折った。
「いえ、巻き込んだのは男爵ですから。王子を騙すなんて大それたことをして、申し訳ありませんでした。でもどうしても、ダリア様を助けたかったんです。それで王子を利用するような真似を……」
あえなくダリアの変装は、王子にバレた。
そしてダリアがこうしてピンピンしている上に王宮に潜り込んでいることがバレてしまった以上、これまでのすべての経緯を王子に打ち明けるしかなかった。
すべて聞き終えた王子は、しばらく無言だった。
たっぷりと時間をおいて、ようやく口を開いた王子はダリアのこともマリエラのことも王妃のことも誰も責めはしなかった。
「マリエラが謝る必要はない。それにダリアも事情あってのことなのだから、別に怒るなど……」
王子は言葉を切ると、ダリアに向き直った。
「だがダリア。確かに私は頼りないし問題があるのは承知しているが、正直今回のことは肝が冷えた。とにかく、……お前が無事で良かった」
「それは、ありがとうございます。でも……あの、殿下」
先ほどから決まり悪そうにうつむいていたダリアは、王子に声をかけた。
「なんだ」
「どうして私だと分かったのです?変装は完璧だったと自負しているのですが」
ダリアの変装は、マリエラの目から見ても確かに完璧だった。マリエラにはすぐに分かったけれど。
(メイクや服装でガラっと雰囲気は変わっているし、歩き方や仕草も変えてたし。普通の人には、とても見破れないと思うわ)
ではなぜ、マリエラには見破れたのか。それはもう、最推しへの愛ゆえとしか――。
(なら王子がダリアを人目で、しかも後ろ姿だけで見破ったということは……?)
ちらりとダリアと王子を交互に見つめるマリエラ。
二人はじっと見つめ合ったまま、微動だにしない。
なんだか二人の姿から目が離せないのはなぜだろう。ものすごくこの先の展開が気になる。なんか分からないけど、ドキドキする。
そしてそれは王妃も同じようで、先ほどから二人の姿を固唾を呑んで見守っている。
「分からないわけないだろう。お前のことは、小さな頃からずっと見てきたんだからな。すぐに分かる」
ぶっきらぼうだが、その言葉にはなんだか甘い色が多分に含まれていてマリエラは心の中で激しく悶絶していた。
今まさに目の前で展開しているのは、まさかの最推しへの告白なのではないだろうか。
思わずごくりと息をのんで、ダリアに視線を移すマリエラである。
ダリアはその黒い大きな目を大きく見開いて、そして次の瞬間ポンッと音がしそうなくらい頬を真っ赤に染めた。
そのかわいさたるや――。マリエラは思わずその場に突っ伏したくなった。
(尊い……!尊すぎるっ!あの普段は超絶クールな気高い姿をキープしているダリア様がっ!あんなにお顔を真っ赤に染めて……。かわいいが過ぎるっ!)
ふと見ると、王子もじわじわとその頬を赤く染めていた。
(あああああっ!今すぐにここに絵描きを呼んでっ!そして私にその絵をくださいっ)
時間差で赤くなって見つめ合う二人の姿に、マリエラは気絶しそうなくらい悶絶し。
そして王妃は、「あらあらあら……」と呟いて嬉しそうな表情を浮かべるのだった。
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