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【声劇台本】死後、妖
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師匠/(いと): 妖狐(男女どちらでも可)
京(きょう): いとの友人、鬼。(男女不問)
アナウンサーと兼役。
かずと: 少年(中学生くらい)、半妖。
店員: ただの人間。兼役推奨
女の子: END2に出てくる幼い子、兼役推奨
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いと「...なんとも可哀想なことじゃ。」
京「どうした、いと。」
いと「見てご覧よ、あの子を。」
京「ん?坊主がさまよっているな。」
いと「ああ、まだ幼いのになんとも可哀想そうなことじゃ。」
間
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
かずと「師匠!!!今日は何をすればよろしいでしょうか!!」
いと「そうじゃな、とりあえず....茶でも入れてくれ。」
かずと「はい!!喜んで!!」
京「...おい。いと。」
いと「なんじゃ。」
京「あんな坊主連れ込むもんじゃねえぞ。わかってやってるのか。」
いと「良いではないか。少しの間だけじゃ。」
京「.......」
いと「不満そうじゃな。まあ妾とて、長居させる訳にはいかないことくらい分かっておる、安心せい。」
かずと「おまたせしましたー!!京様もご一緒にいかがですか??」
京「ああ、いただこう。」
いと「それで、かずとよ。おぬしは未だに今までの記憶が思い出せないのか?」
かずと「はい...。お恥ずかしいことに自分が今まで何をしていたのかさえ思い出せません。」
いと「....そうか。ならば仕方がないな。そうじゃかずと、今日も人間界の視察に行ってはくれぬか。」
かずと「わかりました!すぐに行ってまいります!!」
いと「頼んだぞ。」
かずと「あ、それと師匠、今度こそは妖術を教えて頂けますか?僕も早く使えるようになりたいんです。」
いと「......まあ、お主の頑張り次第じゃな。」
かずと「はい!!約束ですよ!!行ってきます!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(かずとは人間界に向かった。)
京「はあ.......お前ってやつは果たせもしない約束をこうも安々と。どれだけ頑張れど使えないというのに。」
いと「そうじゃな、妾はあやつに嘘をついてばかりじゃ。しかし仕方あるまいよ。」
京「いと、あいつは人間だ。」
いと「ああ。」
京「しかも既に死んでいる。」
いと「...ああ。」
京「人間の身で妖魔界に長居すると妖になってしまう。そして二度と成仏も転生もできない。」
いと「ああしっておる。」
京「あいつをこちらに連れてきてちょうど10日だ。あいつの身は既に半妖と化している。」
いと「そうじゃな。」
京「わかっているならなぜ!!!!あいつをこちらに連れてきた!!」
いと「あやつは、記憶が無いではないか。」
京「そうだな。しかしそれと何の関係があると言うんだ。」
いと「あやつは自分が既に死んでいることを知らない。」
京「....!!」
いと「じゃから、あのまま人間界に留まっていたとしても成仏はできないのじゃ。ならば、妾があやつに教えてやるしかないじゃろう。しかし、妾が直接伝えたところで意味は無い。あやつ自身がこのことに気づかない限りはな。」
京「だから人間界の視察をさせて、記憶を取り戻すきっかけを探させようってわけか。だが、時間が無い。もしこのまま何の収穫も得られないままであれば、あいつは完全な妖になるぞ。」
いと「もし、今日もなんの収穫もないようであれば妾があやつの記憶を取り戻すきっかけとなる人物に術をかけて操ろう。」
京「...まあそうするしかないところまで来ている。...操ってどうするんだ。まさかそいつから伝えさせる訳ではないだろう。」
いと「まあ、見ておれ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
かずとが出かけてから2時間ほど経った。
かずと「ただいま戻りましたー!!」
いと「おお、かずと。おかえり。なにか収穫はあったか?」
かずと「あー...いえ、今日も特には。」
いと「....ふむ。そうか。」
京「いと。」
いと「ああ分かっておる。」
かずと「...?お2人ともどうされたんですか?」
いと「ああ、なんでもないぞ。さて、妖術を学びたいのだったな。」
かずと「え!?もしかしてついに教えてくださるんですか!?」
いと「そうじゃ。ついてくるがよい。」
京「はあ....(溜息)」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
かずと「指の先に意識を集中させてから術のイメージをするんですよね?」
いと「そうじゃ。やってみよ。」
かずと「うーん....意識を集中....術の...イメージ.....うーーーん..............」
かずと「師匠!!全然できません!!」
いと「おい、諦めが早すぎるぞ。」
京「 いと、ちょっとこっち来い。」
(いきなり引っ張られる感じで)
いと「ちょ、おい!!なんじゃなんじゃ!!」
京「お前なあ....あいつは人間なんだから妖術は使えないだろうが。」
いと「まあ約束してしまったものは仕方ないではないか。使えるかは別として、約束通り教えるくらいはしてやるつもりじゃ。」
京「それに、操るとか言ってたのはどうなったんだよ。」
いと「それなら安心せい。もう既にかけておいた。」
京「え?この一瞬でか?」
いと「そうじゃ。顔さえ分かれば遠くからでも術をかけるのは容易ゆえな。今頃かけられたやつは行動を起こしているじゃろう。」
京「なるほどな。さすが大妖怪様様ってわけだ。」
いと「そう褒めるでない。照れるではないか~~。」
京「......」
いと「かずとよ。今日はそこまでじゃ。もう部屋に戻って寝るが良い。そして明日は起きたらすぐに人間界の視察に行っておくれ。」
かずと「はい!わかりました!またお願いします!!おやすみなさい!」
いと「ああ、おやすみ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌朝。(ここからかずと視点)
かずと「あーー!!今日もいい朝だ!!さて、今日も人間界に行くぞーー!!」
かずと「師匠!いってきます!」
いと「ああ、気をつけるんじゃぞ。」
(かずと、人間界へ向かう)
かずと「お!!商店街が見えてきたな!なんだか美味しそうな匂いもするし....そういえばなぜか今日だけ人間界のお金を持たされたから買えるぞ!!うーわ!ラッキー!」
店員「いらっしゃいませ!本日はいなり寿司がお買い得ですよーー!」
かずと「あ!いなり寿司!!あれって師匠が好きなやつだよな....?お土産に買っていこう!!」
かずと「すみません!このいなり寿司を2つください!!」
店員「........」
かずと「あれ...?聞こえてないかな?すみませーん!!!」
店員「.......」
かずと「おかしいな、耳が悪いのかな。あの!!すみません!!」
店員「......」
かずと「仕方ない、今日は諦めよう...。」
かずと「それで...ここの角を曲がったところに電機屋さんがあって、そこの前まで行けって言ってたよね。」
かずと「お!あったあった。それにこれは....テレビ!!!おーー!!すげえ!」
テレビ放送↓↓↓
『次のニュースです。昨日夕方頃、一家惨殺事件の容疑者として指名手配されていた男が自首をしました。』
かずと「一家惨殺事件??こんな物騒なこともあるんだな...。」
『東京都内の住宅で峰 絢香(みね あやか)さん、峰 和則(みね かずのり)さん夫婦、そして長男の峰 和斗(みね かずと)くん、一家3人が殺害されているのが見つかった事件で』
(画面に殺害された一家の写真が映る)
かずと「....え。」
かずと「これって、僕の、顔。」
和斗「僕、僕は、峰 和斗.....うっっっっがっっ(過呼吸になる)」
いと「やれやれ、上手くいったようじゃ。」
京「そうみたいだな。連れて帰るか。」
いと「そうじゃな、よろしく頼むぞ。」
京「いや、俺が抱えるのかよ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(妖魔界に帰還)
いと「かずと、調子はどうじゃ。」
和斗「....大丈夫です。」
いと「...思い出したのじゃろう。」
和斗「...はい、全て。」
いと「言える範囲でよい。お主について詳しく話してみよ。」
和斗「まず僕は、人間です。いえ、人間でした。僕には父と母がいて、息子は僕1人で。3人で仲良く暮らしていたんです。あの日もいつも通り中学校から家に帰ってドアを開けたんです。そしたら、妙に家の中が静かだったんですよね。でも僕は気にせずリビングに向かいました。そしてリビングに入って最初に視界に入ったのは、倒れた父と母だったんです。」
京「......」
和斗「2人とも血を流して倒れていて、リビングには血の池ができていました。僕はそのまま動けなくなって、突っ立っていたんです。そしたら背後からぶすりと体を貫く冷たい感触がして。気づけば僕も倒れて、そのまま...。」
いと「...そうか。大変じゃったな。妾はお主の霊体が1人家の周りをさまよっていたのが不憫に思えて仕方がなかったのじゃ。じゃから、こちらの世界に連れてきた。」
京「お前が辛い思いをしてきたのはよくわかっている。だが、冷たいことを言うようで申し訳ないが、お前はここに長くは居られない。」
和斗「...京様、なぜでしょうか。」
京「人間の身でこの世界に居続けると、妖になってしまうのだ。妖になった人間の魂は成仏も転生もできない。そういうことだ。」
京「それにお前はもう記憶を取り戻した。既に成仏できる状態にある。」
和斗「そうでしたか....。」
いと「和斗、おぬしには短い間ではあったがとても世話になった。無事に記憶を取り戻せたこと、嬉しく思うぞ。これも何かの縁であろうから、最後は京と一緒にお前をあの世まで送ろう。」
(次のセリフより、エンディング分岐)
エンディング1
和斗「父と母には、また会えるでしょうか。」
エンディング2
和斗「いいえ、僕はここで為すべきことがあります。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
END1
いと「ああ、あの世で待っているじゃろう。早く行ってやった方が良い。」
京「ったくお前ってやつはまだ幸運だったな。俺達みたいな善良な妖に拾ってもらえて最高だっただろ??」
和斗「はい!!師匠と京様のような素敵な妖に出会えて、死んだ後でしたがいい思い出が出来ました...!!!」
京「死んだ後でしたが、じゃねえよ。死んだ後だったから俺達に会えたんだ。死んで良かったなとは言わないが、まあ俺達も出会えてよかったさ。」
いと「さ、そろそろ行くとしようか。」
和斗「はい。」
(3人で仲良く並んで歩き出す。向かうはあの世の入口)
和斗「これは....海ですか??砂浜に貝殻まで転がってて...。」
いと「ほう、おぬしの目にはそのように映ったのか。」
京「あの世の入口はな、通る人間によって見えるものが違うんだ。その人間が最も愛したもの、印象に残っている思い出、それが再現されて見える。」
いと「最後にそんなものを見てしまえば、『もっと生きたかったな』なんて考えて泣いてしまう人間も多いのじゃが。なんとも悪趣味な場所じゃ。」
和斗「僕は、家族で一緒に海に行くのが1番好きだったんです。暑い日差しを浴びながら冷たい水を浴びたり、砂遊びをしたり。楽しかったなあ....。」
いと「おい、おぬしも泣きそうになっておるではないか。...やはり人間は皆同じよのう。」
京「おい、着いたぞ。」
和斗「あ...。」
いと「妾達がついていけるのもここまでじゃ。あとは自分でゆくがよい。」
和斗「あの、師匠と京様にはまた会えますか?」
いと「...ふふ、妾達はきっとなにかの縁で結ばれておる、また会える時は来るじゃろう。」
京「ああ。」
和斗「わかりました。ではさようならではなく、またお会いしましょう!」
いと「ああ、またの。」
京「またな!」
(最後、和斗ナレーション)
こうして峰 和斗は、ようやく人生に幕を下ろしました。
END1 「また来世で」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
END2
いと「なんじゃと?」
京「どういうつもりだ、かずと。」
和斗「僕は父と母を殺されました。このまま死にきれません。」
いと「まさかおぬし......」
京「妖になって復讐するつもりか!?」
和斗「はい。僕は妖になって、強い力を手にし、復讐をします。」
いと「かずと!!!!それがどういうことか分かっておるのか!!!」
和斗「もちろんです。たとえ二度と成仏が出来なくても、苦しむことになっても、僕はあいつを葬り去ります。」
いと「そこまで覚悟ができているのなら、もうどれだけ言っても意味が無いのじゃろうな。」
京「ふん、好きにしろ。」
いと「...こうなっては仕方がない、おぬしを1人前の妖にしてやる。覚悟するがいい。」
(それから約5年後)
いと「おぬしが完全な妖になってからもう約5年ほどか。」
和斗「はい。大変お世話になっております。」
いと「まさか、おぬしにこれだけ才能があるとは思わんでな。まさかこの5年の間で妖魔界のトップ2になるとは。」
和斗「恐れ多いことです。頂点に立つ師匠には敵いませんよ。」
京「てかお前口調が大人びたよな???死んでるくせに成長してんのな。」
和斗「ええ、体はそのままでも心は成長しておりますので。3位の京様。」
京「煽りまで覚えるなんて大したもんだな、かずとさんよ。」
和斗「いえ、ちゃんと尊敬しておりますよ京様。....おや、幼い女の子が1人でどうしたんでしょう。少し見てきますね。」
いと「気をつけてな。」
(女の子に近づく和斗)
和斗「お嬢さん、こんなところでどうしたのかな?」
女の子「あのね、悲しいの。わたしのパパもママもみんな殺されちゃった。わたしも、殺されたの。」
和斗「そうか....それは辛かったね。それでどうしたい?」
女の子「どうしたいって、なに...?」
和斗「僕が、復讐してあげようか?」
END2「復讐の妖」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
終わり
京(きょう): いとの友人、鬼。(男女不問)
アナウンサーと兼役。
かずと: 少年(中学生くらい)、半妖。
店員: ただの人間。兼役推奨
女の子: END2に出てくる幼い子、兼役推奨
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いと「...なんとも可哀想なことじゃ。」
京「どうした、いと。」
いと「見てご覧よ、あの子を。」
京「ん?坊主がさまよっているな。」
いと「ああ、まだ幼いのになんとも可哀想そうなことじゃ。」
間
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かずと「師匠!!!今日は何をすればよろしいでしょうか!!」
いと「そうじゃな、とりあえず....茶でも入れてくれ。」
かずと「はい!!喜んで!!」
京「...おい。いと。」
いと「なんじゃ。」
京「あんな坊主連れ込むもんじゃねえぞ。わかってやってるのか。」
いと「良いではないか。少しの間だけじゃ。」
京「.......」
いと「不満そうじゃな。まあ妾とて、長居させる訳にはいかないことくらい分かっておる、安心せい。」
かずと「おまたせしましたー!!京様もご一緒にいかがですか??」
京「ああ、いただこう。」
いと「それで、かずとよ。おぬしは未だに今までの記憶が思い出せないのか?」
かずと「はい...。お恥ずかしいことに自分が今まで何をしていたのかさえ思い出せません。」
いと「....そうか。ならば仕方がないな。そうじゃかずと、今日も人間界の視察に行ってはくれぬか。」
かずと「わかりました!すぐに行ってまいります!!」
いと「頼んだぞ。」
かずと「あ、それと師匠、今度こそは妖術を教えて頂けますか?僕も早く使えるようになりたいんです。」
いと「......まあ、お主の頑張り次第じゃな。」
かずと「はい!!約束ですよ!!行ってきます!」
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(かずとは人間界に向かった。)
京「はあ.......お前ってやつは果たせもしない約束をこうも安々と。どれだけ頑張れど使えないというのに。」
いと「そうじゃな、妾はあやつに嘘をついてばかりじゃ。しかし仕方あるまいよ。」
京「いと、あいつは人間だ。」
いと「ああ。」
京「しかも既に死んでいる。」
いと「...ああ。」
京「人間の身で妖魔界に長居すると妖になってしまう。そして二度と成仏も転生もできない。」
いと「ああしっておる。」
京「あいつをこちらに連れてきてちょうど10日だ。あいつの身は既に半妖と化している。」
いと「そうじゃな。」
京「わかっているならなぜ!!!!あいつをこちらに連れてきた!!」
いと「あやつは、記憶が無いではないか。」
京「そうだな。しかしそれと何の関係があると言うんだ。」
いと「あやつは自分が既に死んでいることを知らない。」
京「....!!」
いと「じゃから、あのまま人間界に留まっていたとしても成仏はできないのじゃ。ならば、妾があやつに教えてやるしかないじゃろう。しかし、妾が直接伝えたところで意味は無い。あやつ自身がこのことに気づかない限りはな。」
京「だから人間界の視察をさせて、記憶を取り戻すきっかけを探させようってわけか。だが、時間が無い。もしこのまま何の収穫も得られないままであれば、あいつは完全な妖になるぞ。」
いと「もし、今日もなんの収穫もないようであれば妾があやつの記憶を取り戻すきっかけとなる人物に術をかけて操ろう。」
京「...まあそうするしかないところまで来ている。...操ってどうするんだ。まさかそいつから伝えさせる訳ではないだろう。」
いと「まあ、見ておれ。」
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かずとが出かけてから2時間ほど経った。
かずと「ただいま戻りましたー!!」
いと「おお、かずと。おかえり。なにか収穫はあったか?」
かずと「あー...いえ、今日も特には。」
いと「....ふむ。そうか。」
京「いと。」
いと「ああ分かっておる。」
かずと「...?お2人ともどうされたんですか?」
いと「ああ、なんでもないぞ。さて、妖術を学びたいのだったな。」
かずと「え!?もしかしてついに教えてくださるんですか!?」
いと「そうじゃ。ついてくるがよい。」
京「はあ....(溜息)」
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かずと「指の先に意識を集中させてから術のイメージをするんですよね?」
いと「そうじゃ。やってみよ。」
かずと「うーん....意識を集中....術の...イメージ.....うーーーん..............」
かずと「師匠!!全然できません!!」
いと「おい、諦めが早すぎるぞ。」
京「 いと、ちょっとこっち来い。」
(いきなり引っ張られる感じで)
いと「ちょ、おい!!なんじゃなんじゃ!!」
京「お前なあ....あいつは人間なんだから妖術は使えないだろうが。」
いと「まあ約束してしまったものは仕方ないではないか。使えるかは別として、約束通り教えるくらいはしてやるつもりじゃ。」
京「それに、操るとか言ってたのはどうなったんだよ。」
いと「それなら安心せい。もう既にかけておいた。」
京「え?この一瞬でか?」
いと「そうじゃ。顔さえ分かれば遠くからでも術をかけるのは容易ゆえな。今頃かけられたやつは行動を起こしているじゃろう。」
京「なるほどな。さすが大妖怪様様ってわけだ。」
いと「そう褒めるでない。照れるではないか~~。」
京「......」
いと「かずとよ。今日はそこまでじゃ。もう部屋に戻って寝るが良い。そして明日は起きたらすぐに人間界の視察に行っておくれ。」
かずと「はい!わかりました!またお願いします!!おやすみなさい!」
いと「ああ、おやすみ。」
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翌朝。(ここからかずと視点)
かずと「あーー!!今日もいい朝だ!!さて、今日も人間界に行くぞーー!!」
かずと「師匠!いってきます!」
いと「ああ、気をつけるんじゃぞ。」
(かずと、人間界へ向かう)
かずと「お!!商店街が見えてきたな!なんだか美味しそうな匂いもするし....そういえばなぜか今日だけ人間界のお金を持たされたから買えるぞ!!うーわ!ラッキー!」
店員「いらっしゃいませ!本日はいなり寿司がお買い得ですよーー!」
かずと「あ!いなり寿司!!あれって師匠が好きなやつだよな....?お土産に買っていこう!!」
かずと「すみません!このいなり寿司を2つください!!」
店員「........」
かずと「あれ...?聞こえてないかな?すみませーん!!!」
店員「.......」
かずと「おかしいな、耳が悪いのかな。あの!!すみません!!」
店員「......」
かずと「仕方ない、今日は諦めよう...。」
かずと「それで...ここの角を曲がったところに電機屋さんがあって、そこの前まで行けって言ってたよね。」
かずと「お!あったあった。それにこれは....テレビ!!!おーー!!すげえ!」
テレビ放送↓↓↓
『次のニュースです。昨日夕方頃、一家惨殺事件の容疑者として指名手配されていた男が自首をしました。』
かずと「一家惨殺事件??こんな物騒なこともあるんだな...。」
『東京都内の住宅で峰 絢香(みね あやか)さん、峰 和則(みね かずのり)さん夫婦、そして長男の峰 和斗(みね かずと)くん、一家3人が殺害されているのが見つかった事件で』
(画面に殺害された一家の写真が映る)
かずと「....え。」
かずと「これって、僕の、顔。」
和斗「僕、僕は、峰 和斗.....うっっっっがっっ(過呼吸になる)」
いと「やれやれ、上手くいったようじゃ。」
京「そうみたいだな。連れて帰るか。」
いと「そうじゃな、よろしく頼むぞ。」
京「いや、俺が抱えるのかよ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(妖魔界に帰還)
いと「かずと、調子はどうじゃ。」
和斗「....大丈夫です。」
いと「...思い出したのじゃろう。」
和斗「...はい、全て。」
いと「言える範囲でよい。お主について詳しく話してみよ。」
和斗「まず僕は、人間です。いえ、人間でした。僕には父と母がいて、息子は僕1人で。3人で仲良く暮らしていたんです。あの日もいつも通り中学校から家に帰ってドアを開けたんです。そしたら、妙に家の中が静かだったんですよね。でも僕は気にせずリビングに向かいました。そしてリビングに入って最初に視界に入ったのは、倒れた父と母だったんです。」
京「......」
和斗「2人とも血を流して倒れていて、リビングには血の池ができていました。僕はそのまま動けなくなって、突っ立っていたんです。そしたら背後からぶすりと体を貫く冷たい感触がして。気づけば僕も倒れて、そのまま...。」
いと「...そうか。大変じゃったな。妾はお主の霊体が1人家の周りをさまよっていたのが不憫に思えて仕方がなかったのじゃ。じゃから、こちらの世界に連れてきた。」
京「お前が辛い思いをしてきたのはよくわかっている。だが、冷たいことを言うようで申し訳ないが、お前はここに長くは居られない。」
和斗「...京様、なぜでしょうか。」
京「人間の身でこの世界に居続けると、妖になってしまうのだ。妖になった人間の魂は成仏も転生もできない。そういうことだ。」
京「それにお前はもう記憶を取り戻した。既に成仏できる状態にある。」
和斗「そうでしたか....。」
いと「和斗、おぬしには短い間ではあったがとても世話になった。無事に記憶を取り戻せたこと、嬉しく思うぞ。これも何かの縁であろうから、最後は京と一緒にお前をあの世まで送ろう。」
(次のセリフより、エンディング分岐)
エンディング1
和斗「父と母には、また会えるでしょうか。」
エンディング2
和斗「いいえ、僕はここで為すべきことがあります。」
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いと「ああ、あの世で待っているじゃろう。早く行ってやった方が良い。」
京「ったくお前ってやつはまだ幸運だったな。俺達みたいな善良な妖に拾ってもらえて最高だっただろ??」
和斗「はい!!師匠と京様のような素敵な妖に出会えて、死んだ後でしたがいい思い出が出来ました...!!!」
京「死んだ後でしたが、じゃねえよ。死んだ後だったから俺達に会えたんだ。死んで良かったなとは言わないが、まあ俺達も出会えてよかったさ。」
いと「さ、そろそろ行くとしようか。」
和斗「はい。」
(3人で仲良く並んで歩き出す。向かうはあの世の入口)
和斗「これは....海ですか??砂浜に貝殻まで転がってて...。」
いと「ほう、おぬしの目にはそのように映ったのか。」
京「あの世の入口はな、通る人間によって見えるものが違うんだ。その人間が最も愛したもの、印象に残っている思い出、それが再現されて見える。」
いと「最後にそんなものを見てしまえば、『もっと生きたかったな』なんて考えて泣いてしまう人間も多いのじゃが。なんとも悪趣味な場所じゃ。」
和斗「僕は、家族で一緒に海に行くのが1番好きだったんです。暑い日差しを浴びながら冷たい水を浴びたり、砂遊びをしたり。楽しかったなあ....。」
いと「おい、おぬしも泣きそうになっておるではないか。...やはり人間は皆同じよのう。」
京「おい、着いたぞ。」
和斗「あ...。」
いと「妾達がついていけるのもここまでじゃ。あとは自分でゆくがよい。」
和斗「あの、師匠と京様にはまた会えますか?」
いと「...ふふ、妾達はきっとなにかの縁で結ばれておる、また会える時は来るじゃろう。」
京「ああ。」
和斗「わかりました。ではさようならではなく、またお会いしましょう!」
いと「ああ、またの。」
京「またな!」
(最後、和斗ナレーション)
こうして峰 和斗は、ようやく人生に幕を下ろしました。
END1 「また来世で」
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END2
いと「なんじゃと?」
京「どういうつもりだ、かずと。」
和斗「僕は父と母を殺されました。このまま死にきれません。」
いと「まさかおぬし......」
京「妖になって復讐するつもりか!?」
和斗「はい。僕は妖になって、強い力を手にし、復讐をします。」
いと「かずと!!!!それがどういうことか分かっておるのか!!!」
和斗「もちろんです。たとえ二度と成仏が出来なくても、苦しむことになっても、僕はあいつを葬り去ります。」
いと「そこまで覚悟ができているのなら、もうどれだけ言っても意味が無いのじゃろうな。」
京「ふん、好きにしろ。」
いと「...こうなっては仕方がない、おぬしを1人前の妖にしてやる。覚悟するがいい。」
(それから約5年後)
いと「おぬしが完全な妖になってからもう約5年ほどか。」
和斗「はい。大変お世話になっております。」
いと「まさか、おぬしにこれだけ才能があるとは思わんでな。まさかこの5年の間で妖魔界のトップ2になるとは。」
和斗「恐れ多いことです。頂点に立つ師匠には敵いませんよ。」
京「てかお前口調が大人びたよな???死んでるくせに成長してんのな。」
和斗「ええ、体はそのままでも心は成長しておりますので。3位の京様。」
京「煽りまで覚えるなんて大したもんだな、かずとさんよ。」
和斗「いえ、ちゃんと尊敬しておりますよ京様。....おや、幼い女の子が1人でどうしたんでしょう。少し見てきますね。」
いと「気をつけてな。」
(女の子に近づく和斗)
和斗「お嬢さん、こんなところでどうしたのかな?」
女の子「あのね、悲しいの。わたしのパパもママもみんな殺されちゃった。わたしも、殺されたの。」
和斗「そうか....それは辛かったね。それでどうしたい?」
女の子「どうしたいって、なに...?」
和斗「僕が、復讐してあげようか?」
END2「復讐の妖」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
終わり
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