【朗読台本】いろいろなおはなし

【朗読台本】私という平凡な者

「君は、そのままの君でいいんだ」

「君を守るために強くなりたい」

「約束して、必ず私の元に帰ってくると」

「私にはあなたしかいないのよ」

などというセリフは、映画やドラマ、アニメの主人公やヒロインにありがちなセリフであり、現実ではなかなか聞きなれない言葉である。

私という人間はどこまでも平凡であり、平凡以外の何者にもなれない。

私という人間は平凡にも関わらず、それでも自分の人生になにか変化が起きないかと期待をしている阿呆であった。

平凡な私は誰かに興味を持ってもらえるような存在になりたかったのだ。

「あーあ、わたしも映画とかドラマとかアニメみたいなセリフ言ってみたいなあ...。」

と思っていたところでちょうど今見ていたアニメがいい展開に入った。

「お願いだ....僕の傍から居なくならないで...君がいなくなってしまったら僕は....!!!」

「悲しまないでちょうだい。たとえこの身が朽ち果てようとも、いずれ私は土に還り、そして芽を出し、花を咲かせる。そうして私はまた貴方の傍で美しく笑うのよ。」

このシーンを見て、私は少し考えた。
確かにアニメや映画やドラマといったフィクション作品は現実ではありえないような話ばかりで非常に感情を揺さぶるものである。

しかし、どうだろう。
私は先程「映画とかドラマとかアニメみたいなセリフを言ってみたい」と口にした。

よく考えて見て欲しい。映画やドラマやアニメの登場人物は、果たして皆幸せなのだろうか？


叶わぬ恋、大切な人の死、繰り返される悲劇。

作品の中には盛り上がりを見せるため、こういった場面を入れてくることが多い。

自分に置き換えて考えてみた時、果たして自分は幸せといえるのだろうか？

もし自分が映画やアニメやドラマの主人公だったならば、必ずと言っていいほど悲劇を経験することだろう。

私は確かに感動的な話の中の登場人物になりたいとは思うが、大切な何かを失ってまで物語の最後にあるであろう幸せを掴む勇気は無い。

私はどこまでも平凡であり、臆病なのである。

従って、私はそのような大層な役にはなれないのである。

だがそれでいいとも思う。映画やドラマといった数々の作品は、そのような経験ができない平凡な私に夢を見せてくれる、そんな素敵なものだと私は考える。

平凡な私は、どこまでも小さな幸せを追い求めて生きていこうと思う。


何気なく見ていたものに突然こんなことを思うのはおかしいのかもしれないが、これは私の癖でね。
すぐ深く考えてしまうんだ、おかしいよね。

それでも日々、些細なことに関心を抱き発見を続けていくのはなかなか楽しいものである。

君は今、これを聞いてどう思ったかな。

そう、今私の声を聞いている君だよ。

私と同じく平凡な君は何を感じたかな。
私というまた平凡な者に興味は湧いたかい？