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限界突破サマーデイズ  ~ふたりぼっちの恋獄篇~

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 身体が熱っぽい。
 息が、胸が、心が苦しい。
 この部屋のエアコン設定は、暑がりのわたしに合わせてくれているから快適なはずなんだけど、さっきからずっと、喉が渇いて仕方がない。
 なんだろう……やっぱ緊張かな?
 渇きすぎちゃって、つばきを飲むと痛みすら感じちゃう。
 すぐ眼の前では、同級生クラスメイト星空セイラが水着に生着替え中で、それをわたしが正座をして見守っているといった、謎のシチュが休日のお昼前に展開されていた。

「アハハ、ふたりきりだけとさー、なんか恥ずかしいよねー」

 わたしが愛用しているスポブラ・ショーツとは次元違いの、とってもキュートでガーリーなフリル付きのブラジャーとショーツが、惜し気もなくピンク色の絨毯の上に落とされてゆく。
 もう飲み込めるものは無い。
 いや、ある。感嘆のため息が。
 ほどよい大きさのたわわな乳房、まだ生え揃ってはいない小悪魔的な魅力を放つ黒い繁み。そのアンバランス加減が、未成熟な少女の裸体を猥褻な特級芸術品へと変えてしまい、わたしの眠っていた欲情をこれでもかと容赦なく刺激する。

 同性でも関係ない。
 セイラが欲しい。
 欲しいものは、欲しい。
 だけど、出来ない。
 セイラに嫌われたくないから──

「どうかな……?」

 訊かなくても、わかってるくせに。
 かわいいよ、セイラ。いますぐ抱きしめて、その桜色の唇を奪いたい。

「うーん、ちょっと過激かもね。わたし的には〝無い〟かな」

 平静を装って感想を述べる。
 でもウソはついてない。わたしだけに見せてくれるなら構わないけれど、ほかの人間には見られたくないよ。とくに、男どもには。

「えー? これで過激……なんだ。んー、どうしよう……もう返品できないよね?」
「うん。あっ、でもさぁー、貸し切りのプールとかプライベートビーチなら着れるし。あと、露天風呂が付いてる部屋に泊まった時にとか」
「露天風呂? ああー! はいはいはい、彼氏との旅行でね!」

 彼氏──そのパワーワードに心臓を撃ち抜かれる。
 けれどもすぐ、

「でもさー、温泉旅行に連れてってくれる彼氏を見つけるまえに、コレ着れなくなってない?」

 そう笑顔で話してくれたから、なんとか一命は救われた。

「あははは……大丈夫っしょ……」

 本当は、海も温泉旅行もふたりで行きたい。
 残りの人生だって、共に手を取り合って過ごしたい。
 けれども、言えない。言えないよ。
 こんなに好きなのに……愛しているのに……それが言葉に出来ない……伝えてしまうと失いそうで怖い……怖いよ……

「ねえ、やっぱこの水着、ダメかな?」
「…………」
「ん? どしたん? そんなに怖い顔して?」
「あ……あのね、セイラ──」
「きゃっ?!」

 彼女の名前を呼びながら立ち上がったわたしは、足が痺れてバランスを崩してしまい、セイラを押し倒す格好でふたり一緒にベッドへと倒れた。

「ちょっと、もー! 重いから早くどいてよ!」
「……足が痺れちゃってるから、もう少しだけこのままでいさせて……お願い……」

 アクシデントとはいえ、想い人と重なれたよろこびに身体と心が震える。
 そして、その感情は涙となって頬を伝い流れて落ちた。
 ああ、そうだ。
 やっぱり大好きなんだ。
 こんなにも大好きなんだ、わたし。

「え、もしかして泣いてるの? 意味がわかんないんですけど」
「うん……泣いてるよ…………あのね、セイラ……わたしセイラのことがね……」

 身体が熱っぽい。
 息が、胸が、心が苦しい。
 この部屋のエアコン設定は、暑がりのわたしに合わせてくれているから快適なはずなんだけど、さっきからずっと、喉が渇いて仕方がない。







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