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悪の秘密結社〈スカルコブラー〉
第22話 チカの大穴
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フルボッコにされた白神博士は、今度こそ真面目に状況を説明してくれた。
「するとつまり、この子たちって、捕まっているの?」
「……はい。都市伝説によると、か○ぱ寿司の地下では、カッパたちが強制的に働かされているそうなんです」
決して小さくはない胸を強調するように腕組みをしたわたしの足もとで、地面に正座する白神博士が、両頬を真っ赤に腫らして涙ながらに答える。
「強制的に……」
ふと見ればいつの間にか、わんぱく大相撲は大一番を終えていた。
なぜかジャクソン伍長がパイプ椅子に腰掛け、腕組みをして両目を閉じている。そのまわりを大勢のカッパたちが取り囲み、順番にひとつの充電式バリカンを使って器用に少しずつ、ジャクソン伍長のただでさえ短い髪を刈っていった。謎の断髪式である。
「でも、そんな酷いことをどうしてカッパたちにするの?」
「──利益のためでんがな!」
突然頭上から聞こえてくる、男の大声。
見上げれば、わたしたちが落ちてきたであろう大穴を、安全ヘルメットを被ったスーツ姿の男が覗き込んでいた。
「誰よ、あんた!?」
怒鳴りつけてはみたけれど、相手との距離が離れ過ぎていて顔まではとてもわからない。
「ただの通りすがりの、善良な市民でんがな、お嬢ちゃん」
よく聞くとその声は、六メートルくらいの高さに設置されているスピーカーから流れてきていた。
それじゃあ、わたしたちの声はどうやって聞こえてるんだろう?
辺りを注意深く見てみる。
首輪を付けたカッパと目が合った。
ひょっとしたら、この首輪には逃げださないように仕掛けがしてあるかもしれない。
だとすれば、盗聴器のひとつやふたつ、工事現場のどこかにあっても不思議ではないだろう。
「かわいそうに……」
カッパの前にしゃがみ込み、首輪にそっと触れてみる。
「キュキュー」
つぶらな黒い瞳を閉じた目には、うっすらと光る涙が滲んでみえた。
ゆるさない。
わたしの怒りのボルテージが、瞬時に沸点にまで達する。
足もとに偶然落ちていた硬式の野球ボールを掴み取り、頭上のクソオヤジめがけて全力でぶん投げた。
小学校の運動会の玉入れ競争で、最後の玉を天高く投げる六年生みたいに上手く投げれたけど、それでも全然飛距離が足らず、落下してきた野球ボールは、無防備な白神博士の顔面に直撃しただけで終わってしまった。
「へへっ、無駄でんがな。このままお嬢ちゃんたちも、カッパと一緒に死ぬまで働いてつかあさい!」
自称・善良な市民がそう言うと、頭上の大穴が轟音と共にバカでかい鉄板で塞がれてしまった。
「えっ……わたしたち、閉じ込められちゃった……の?」
気分はまるで、大魔王を倒した直後に地下世界に取り残された勇者一行の心境だった。
冗談じゃない。こんな変態たちとカッパしかいない、美少女も愛でられないようなクソみたいな場所で、この先ずっと奴隷として暮らすなんてごめんだし、こんな意味での地下アイドルデビューも御免だ。そして伝説になるまえに、なんとしてでも脱出をしなくちゃ!
「白神博士、なんとか脱出する方法ってないかな?」
「そうね……地上へ通じてるのは上の大穴しかなさそうだから……例の爆弾を使って、路線バスを打ち上げ花火みたいに飛ばして逃げる作戦はいかがかしら?」
ギャグ漫画みたく、顔に野球ボールをめり込ませたまま、漫画みたいな作戦内容を話す白神博士。いろんな意味で天才だ。
「その作戦しかなさそうだな」
謎の断髪式を終えたスキンヘッドのジャクソン伍長が、その奇抜な作戦に同意する。
「ええ、ボクもそう思います」
なぜかバスの運転士まで同意する。いつからおまえもこっちサイドになったのか。
とにかくわたしたちは、時限式爆弾をかき集めることにした。
「するとつまり、この子たちって、捕まっているの?」
「……はい。都市伝説によると、か○ぱ寿司の地下では、カッパたちが強制的に働かされているそうなんです」
決して小さくはない胸を強調するように腕組みをしたわたしの足もとで、地面に正座する白神博士が、両頬を真っ赤に腫らして涙ながらに答える。
「強制的に……」
ふと見ればいつの間にか、わんぱく大相撲は大一番を終えていた。
なぜかジャクソン伍長がパイプ椅子に腰掛け、腕組みをして両目を閉じている。そのまわりを大勢のカッパたちが取り囲み、順番にひとつの充電式バリカンを使って器用に少しずつ、ジャクソン伍長のただでさえ短い髪を刈っていった。謎の断髪式である。
「でも、そんな酷いことをどうしてカッパたちにするの?」
「──利益のためでんがな!」
突然頭上から聞こえてくる、男の大声。
見上げれば、わたしたちが落ちてきたであろう大穴を、安全ヘルメットを被ったスーツ姿の男が覗き込んでいた。
「誰よ、あんた!?」
怒鳴りつけてはみたけれど、相手との距離が離れ過ぎていて顔まではとてもわからない。
「ただの通りすがりの、善良な市民でんがな、お嬢ちゃん」
よく聞くとその声は、六メートルくらいの高さに設置されているスピーカーから流れてきていた。
それじゃあ、わたしたちの声はどうやって聞こえてるんだろう?
辺りを注意深く見てみる。
首輪を付けたカッパと目が合った。
ひょっとしたら、この首輪には逃げださないように仕掛けがしてあるかもしれない。
だとすれば、盗聴器のひとつやふたつ、工事現場のどこかにあっても不思議ではないだろう。
「かわいそうに……」
カッパの前にしゃがみ込み、首輪にそっと触れてみる。
「キュキュー」
つぶらな黒い瞳を閉じた目には、うっすらと光る涙が滲んでみえた。
ゆるさない。
わたしの怒りのボルテージが、瞬時に沸点にまで達する。
足もとに偶然落ちていた硬式の野球ボールを掴み取り、頭上のクソオヤジめがけて全力でぶん投げた。
小学校の運動会の玉入れ競争で、最後の玉を天高く投げる六年生みたいに上手く投げれたけど、それでも全然飛距離が足らず、落下してきた野球ボールは、無防備な白神博士の顔面に直撃しただけで終わってしまった。
「へへっ、無駄でんがな。このままお嬢ちゃんたちも、カッパと一緒に死ぬまで働いてつかあさい!」
自称・善良な市民がそう言うと、頭上の大穴が轟音と共にバカでかい鉄板で塞がれてしまった。
「えっ……わたしたち、閉じ込められちゃった……の?」
気分はまるで、大魔王を倒した直後に地下世界に取り残された勇者一行の心境だった。
冗談じゃない。こんな変態たちとカッパしかいない、美少女も愛でられないようなクソみたいな場所で、この先ずっと奴隷として暮らすなんてごめんだし、こんな意味での地下アイドルデビューも御免だ。そして伝説になるまえに、なんとしてでも脱出をしなくちゃ!
「白神博士、なんとか脱出する方法ってないかな?」
「そうね……地上へ通じてるのは上の大穴しかなさそうだから……例の爆弾を使って、路線バスを打ち上げ花火みたいに飛ばして逃げる作戦はいかがかしら?」
ギャグ漫画みたく、顔に野球ボールをめり込ませたまま、漫画みたいな作戦内容を話す白神博士。いろんな意味で天才だ。
「その作戦しかなさそうだな」
謎の断髪式を終えたスキンヘッドのジャクソン伍長が、その奇抜な作戦に同意する。
「ええ、ボクもそう思います」
なぜかバスの運転士まで同意する。いつからおまえもこっちサイドになったのか。
とにかくわたしたちは、時限式爆弾をかき集めることにした。
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