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悪の秘密結社〈スカルコブラー〉
第17話 WBIP
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古びた洋館の応接間へ通されたわたしは、とても高そうなロココ調のカウチソファにひとり座っていた。
室内を見渡せば、調度品は中世のヨーロッパを彷彿とさせるアンティークな物ばかりで、〝もしかしてここは、異世界の御屋敷?〟と一瞬疑ってしまう程なんだけど、二匹の全身黒タイツ野郎が門兵のように両開きの扉を挟んで立っているから、そんな疑念は瞬殺された。
因みに、美人のお姉様はどこかへ行ってしまったようで、現在は姿が見えない。
もう、なんなのよこれ!?
いったいこれからなにが始まるのよ!
気がつけば、汗ばむ両手でプリーツスカートの裾を無意識で握っていた。
「お願い……誰か……早く助けて……」
わたしの一見すると小さいけれど、決して小さくはない胸が、不安な気持ちで押し潰されそうになる。
大切なことだから二度言うけれど、決して小さくはない胸が、押し潰されそうになる。
「お待たせ」
女性の声が聞こえて顔を上げる。
さっきのお姉様が、なぜかコットンタオル生地のバスローブに着替えてやって来た。左手には、琥珀色にほどよく満たされたブランデーグラスが握られている。もしかして、シャワーを浴びてた?
「あの……これって、どーゆーことですか? どうしてわたしは、ここへ連れて来られたんですか?」
「あら? あなた、まったく覚えてないの?」
すかさず無言でうなずく。
「そう。じゃあ、簡単に説明するわね」
バスローブ姿のお姉様が、目の前のソファに腰掛ける。そして、少し間を持たせながら、素足をゆっくり組んだ。その時にノーパンの股間が……ううん、きっと、黒い下着が見えただけ……のはず……ゴクリ。
「ある朝、かわいい比乃子ちゃんは悪の秘密結社〈スカルコブラー〉に捕まって改造人間にされちゃったけど、自爆してなんとかお家に帰れましたとさ。めでたし、めでたしぃー♪」
お姉様は楽しそうに頬笑んでそう言うと、ブランデーをひと口飲んでから愛らしくウインクをしてみせた。
「へぇー………………って、ええっ!? アレって全部、夢の出来事じゃなかったの!? つか、自爆ってなによ!?」
物凄くわかりやすい説明に、わたしはぶちギレてソファから立ち上がる。
まさか、高校デビュー初日に見た悪夢がノンフィクションだったなんて!
しかも、自爆って本当になんなのよ!?
これまで犯してきた罪といえば〝美しさ〟くらいの純粋無垢な乙女を拉致った挙げ句、好き勝手に身体まで改造して──わたしの美少女アイドルプロジェクト(略してWBIP)が台無しじゃないのよ、もう!
…………ん?
よくよく考えてみれば、特にあれから人生が変わった訳じゃなかった。
怒りが収まりかけた頃、出入り口の扉からジャクソン伍長を先頭に、全身黒タイツ姿の変態集団がぞろぞろと雑談を交えながら入ってきた。休憩明けの男子かよ。
「ヘイヘーイ! 白神博士、用意はできてるかーい?」
相変わらずのハイテンションで、ジャクソン伍長は自分の股間をガッツリ握りながら、もう片方の手でお姉様をカッコつけて指差した。
「えっ? 白神博士って、あの〝燃える炎のような髪型のおじいちゃん〟じゃあ……」
「ああ、それはあたしの父よ。このあいだの大爆発で死んだけどね」
疑問を口にしたわたしに、白神博士と呼ばれたお姉様は、ブランデーを優雅に飲み込んでさらりとした口調で答える。
「死んだ……」
わたしのグッドシェイプボディを無許可で改造しやがった白神博士は、死んでしまっていた。
代わりに、その娘の〝綺麗な白神博士〟が目の前にいる。
「──あっ、そうだ! もどしてください。わたしの身体を、元にもどしてください!」
ここに連れてこられた理由はともかく、こうして顔を合わせたからには責任を取ってもらいたい。わたしは完全に元通りの、美少女高校生の学園生活にもどりたかった。
「ごめんなさいね、比乃子ちゃん。気持ちはわかるし、可能であればそうしてあげたいけど──」
白神博士は、ブランデーグラスを飲み干してゆっくりソファから立ち上がり、近くの暖炉にグラスをアンダースローで投げ入れる。
それから憂いの眼差しでわたしに近づいて来ると、三歩手前で立ち止まった。
「答えは、ノーよ。なぜならあなたは、これからの生涯を我らが組織〈スカルコブラー〉に捧げなくてはいけない運命なのだから!」
「ええっ!?……って、ちょっと!」
衝撃的な発言と共に、なぜか白神博士はバスローブの紐を勢いよく解き、わたしにだけ見えるように、官能的な肉付きの裸体を惜し気もなく全開にした。
室内を見渡せば、調度品は中世のヨーロッパを彷彿とさせるアンティークな物ばかりで、〝もしかしてここは、異世界の御屋敷?〟と一瞬疑ってしまう程なんだけど、二匹の全身黒タイツ野郎が門兵のように両開きの扉を挟んで立っているから、そんな疑念は瞬殺された。
因みに、美人のお姉様はどこかへ行ってしまったようで、現在は姿が見えない。
もう、なんなのよこれ!?
いったいこれからなにが始まるのよ!
気がつけば、汗ばむ両手でプリーツスカートの裾を無意識で握っていた。
「お願い……誰か……早く助けて……」
わたしの一見すると小さいけれど、決して小さくはない胸が、不安な気持ちで押し潰されそうになる。
大切なことだから二度言うけれど、決して小さくはない胸が、押し潰されそうになる。
「お待たせ」
女性の声が聞こえて顔を上げる。
さっきのお姉様が、なぜかコットンタオル生地のバスローブに着替えてやって来た。左手には、琥珀色にほどよく満たされたブランデーグラスが握られている。もしかして、シャワーを浴びてた?
「あの……これって、どーゆーことですか? どうしてわたしは、ここへ連れて来られたんですか?」
「あら? あなた、まったく覚えてないの?」
すかさず無言でうなずく。
「そう。じゃあ、簡単に説明するわね」
バスローブ姿のお姉様が、目の前のソファに腰掛ける。そして、少し間を持たせながら、素足をゆっくり組んだ。その時にノーパンの股間が……ううん、きっと、黒い下着が見えただけ……のはず……ゴクリ。
「ある朝、かわいい比乃子ちゃんは悪の秘密結社〈スカルコブラー〉に捕まって改造人間にされちゃったけど、自爆してなんとかお家に帰れましたとさ。めでたし、めでたしぃー♪」
お姉様は楽しそうに頬笑んでそう言うと、ブランデーをひと口飲んでから愛らしくウインクをしてみせた。
「へぇー………………って、ええっ!? アレって全部、夢の出来事じゃなかったの!? つか、自爆ってなによ!?」
物凄くわかりやすい説明に、わたしはぶちギレてソファから立ち上がる。
まさか、高校デビュー初日に見た悪夢がノンフィクションだったなんて!
しかも、自爆って本当になんなのよ!?
これまで犯してきた罪といえば〝美しさ〟くらいの純粋無垢な乙女を拉致った挙げ句、好き勝手に身体まで改造して──わたしの美少女アイドルプロジェクト(略してWBIP)が台無しじゃないのよ、もう!
…………ん?
よくよく考えてみれば、特にあれから人生が変わった訳じゃなかった。
怒りが収まりかけた頃、出入り口の扉からジャクソン伍長を先頭に、全身黒タイツ姿の変態集団がぞろぞろと雑談を交えながら入ってきた。休憩明けの男子かよ。
「ヘイヘーイ! 白神博士、用意はできてるかーい?」
相変わらずのハイテンションで、ジャクソン伍長は自分の股間をガッツリ握りながら、もう片方の手でお姉様をカッコつけて指差した。
「えっ? 白神博士って、あの〝燃える炎のような髪型のおじいちゃん〟じゃあ……」
「ああ、それはあたしの父よ。このあいだの大爆発で死んだけどね」
疑問を口にしたわたしに、白神博士と呼ばれたお姉様は、ブランデーを優雅に飲み込んでさらりとした口調で答える。
「死んだ……」
わたしのグッドシェイプボディを無許可で改造しやがった白神博士は、死んでしまっていた。
代わりに、その娘の〝綺麗な白神博士〟が目の前にいる。
「──あっ、そうだ! もどしてください。わたしの身体を、元にもどしてください!」
ここに連れてこられた理由はともかく、こうして顔を合わせたからには責任を取ってもらいたい。わたしは完全に元通りの、美少女高校生の学園生活にもどりたかった。
「ごめんなさいね、比乃子ちゃん。気持ちはわかるし、可能であればそうしてあげたいけど──」
白神博士は、ブランデーグラスを飲み干してゆっくりソファから立ち上がり、近くの暖炉にグラスをアンダースローで投げ入れる。
それから憂いの眼差しでわたしに近づいて来ると、三歩手前で立ち止まった。
「答えは、ノーよ。なぜならあなたは、これからの生涯を我らが組織〈スカルコブラー〉に捧げなくてはいけない運命なのだから!」
「ええっ!?……って、ちょっと!」
衝撃的な発言と共に、なぜか白神博士はバスローブの紐を勢いよく解き、わたしにだけ見えるように、官能的な肉付きの裸体を惜し気もなく全開にした。
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