7 / 26
新しい比乃子、爆誕!
第6話 地下訓練場
しおりを挟む
「おい、おまえ──」
ああ……とうとう正体がバレちゃった!
「そのタイツの肩部分の色あせ具合い……おまえ、改造人間だな!」
ええっ?! そっちなの!?
それで改造人間ってわかるんだ!?
凄くね!? それって凄くね!?
「だったら、世間にどれだけの改造人間がいるんだよ!」
わたしはツッコミもかねて、ジャクソン伍長の頬を全力でビンタした。
だけどそれは残像で、ジャクソン伍長のいやらしい笑顔と共に消えてしまう。
「えっ……なに? ウソでしょ!?」
「フッフッフ、こっちだぜシスター」
背後から不気味な声が聞こえたかと思えば、わたしのナイスバディは背中からバーベルみたく軽々とジャクソン伍長の頭上高くまで持ち上げられる。
「きゃあ?! ちょっ……どこ触ってんのよ、このスケベ変態野郎!」
「ハッハッハー! アイアム、ビッグ・マグナーム!」
高らかに笑うジャクソン伍長は、持ち上げたわたしをそのまま何度か上下に動かし、三メートル先のスカルコブラー総統めがけて豪快に投げ落とした。
「きゃあああああああッ!」
『なっ、なんでぇぇぇぇぇッ!?』
女子トイレ前の狭い空間に、鈍い音と悲鳴が同時に響き渡る。
幸い、スカルコブラー総統のやわらかな胸がクッションになって、わたしは大怪我をしないで済んだ。オッパイの大切さと偉大さに感謝。
「痛たたた……なんなのよ、もう……地味にお腹が痛いし」
わたしの下敷きになって動かなくなった銀仮面の両眼が、チカチカと赤く明滅している。
どうやら、なにかの機能がぶっ壊れたみたいだ。
「これ以上手荒い真似はしたくないぜ。シスター、おとなしくしてもらおうか」
「ちょっと……やめ……痛いってば!」
気を失っているスカルコブラー総統をそのままに、ジャクソン伍長は、嫌がるわたしをエレベーター前まで強引に連れていった。
夢なのに全身がめっちゃ痛い。
もしかしたらこれは現実で、本当にわたしは改造人間にされたのかもしれない。
ジャクソン伍長の右手親指が金属パネルにポチッと触れると、エレベーターが静かに作動して扉が開く。
「やめ……痛いってば、もう!」
わたしの腕を強く引きながら先に乗り込んだ真顔のジャクソン伍長が、今度は地下十階のボタンを押した。
(地下十階って……マジかよ……)
この謎の施設は、思いのほか大きな建物のようだ。
こんなふざけたやつらなのに、一体どこからこんな資本が集まるんだろう。
考えてみれば、悪役って、みんなお金持ちじゃないだろうか。
地球侵略が目的の宇宙人だって、遠路はるばるやって来るんだし、富裕層としかとても思えない。
指令を受けた軍隊だったとしても、潤滑な経済力があってこその特殊任務なんじゃないかな。だからきっと、その惑星のやつらはパリピに違いない。
そんなどうでもいい妄想を膨らませていると、エレベーターが止まって扉がふたたび開いた。
「うわっ……なによ、これ!?」
思わず声が漏れたわたしをよそに、ジャクソン伍長は無理矢理に腕を引いて前へと進む。
そこにあったのは、どこまでも果てしなく広がる無機質な景色。
天井も見上げる首が痛くなるほど高く、地下十階のそこはまるで、首都圏外郭放水路のような大きな空間だった。
「ここは、訓練場だ」
わたしの顔を見ることもなく、なんかカッコ良く告げるジャクソン伍長。
「訓練場……」
嫌な予感が頭をよぎる。
次の瞬間、ジャクソン伍長がわたしの右手首を両手で掴んだかと思えば、砲丸投げの選手のようにクルクルとその場で大回転し、か弱いわたしを訓練場の中央へとぶん投げた!
「えっ────きゃあああああああああぁぁぁ! んべぶるっペポッ?!」
宙を舞ったわたしのナイスバディが容赦なく床に叩きつけられ、勢いもそのままに無様に転がる。めくれ上がったタイツ生地のマスクが鼻や口を塞いで、窒息死しそうになった。
「ンフ……ガッ………………ぷはあっ!」
全身が激痛に襲われる。それでもマスクを外して一命を取り止めたわたしは、このままでは殺されると思い、なんとか起き上がって必死に武器を探した。
周囲にはなにもなかったので、腰ベルトにある革製のポーチを開けてみる。中には五十円玉と十円玉の小銭が九十円分と、個包装の大根しょうがのど飴が一粒だけ入っていた。
「なによこれ……おばあちゃんの鞄の中身かよ!」
こんなんで、屈強なジャクソン伍長相手に戦えるはずがない。
万事休す。
きっとこれから、身につけている黒タイツがビリビリに破かれて、エッチな物語のヒロインみたく、股関節の可動ギリギリのところまで両足を強引に広げられたり、ゲス顔をした不特定多数の戦闘員に向けて、お尻を突き出した恥ずかしい格好をさせられたりするんだ。
敗北はまさに、乙女の貞操の危機を意味していた。
「さあ、本気を出してもらおうか」
ゆっくりと近づいてくるジャクソン伍長。冷徹な靴音が、二人きりの訓練場に木霊する。
「本気って……あの、わたしはただの美少女高校生なだけで……ううっ……一体あなたたちは、なんなんですか!?」
精一杯の大声を張り上げたら、自然と涙が滲んだ。
こんなんじゃない。
わたしの高校生活は、こんなんじゃない。
なんで頭のおかしいやつらに拉致られて、改造までされなきゃいけないのよ。
だんだんと怒りが込み上げてきて、とうとう涙がこぼれ落ちた。
ああ……とうとう正体がバレちゃった!
「そのタイツの肩部分の色あせ具合い……おまえ、改造人間だな!」
ええっ?! そっちなの!?
それで改造人間ってわかるんだ!?
凄くね!? それって凄くね!?
「だったら、世間にどれだけの改造人間がいるんだよ!」
わたしはツッコミもかねて、ジャクソン伍長の頬を全力でビンタした。
だけどそれは残像で、ジャクソン伍長のいやらしい笑顔と共に消えてしまう。
「えっ……なに? ウソでしょ!?」
「フッフッフ、こっちだぜシスター」
背後から不気味な声が聞こえたかと思えば、わたしのナイスバディは背中からバーベルみたく軽々とジャクソン伍長の頭上高くまで持ち上げられる。
「きゃあ?! ちょっ……どこ触ってんのよ、このスケベ変態野郎!」
「ハッハッハー! アイアム、ビッグ・マグナーム!」
高らかに笑うジャクソン伍長は、持ち上げたわたしをそのまま何度か上下に動かし、三メートル先のスカルコブラー総統めがけて豪快に投げ落とした。
「きゃあああああああッ!」
『なっ、なんでぇぇぇぇぇッ!?』
女子トイレ前の狭い空間に、鈍い音と悲鳴が同時に響き渡る。
幸い、スカルコブラー総統のやわらかな胸がクッションになって、わたしは大怪我をしないで済んだ。オッパイの大切さと偉大さに感謝。
「痛たたた……なんなのよ、もう……地味にお腹が痛いし」
わたしの下敷きになって動かなくなった銀仮面の両眼が、チカチカと赤く明滅している。
どうやら、なにかの機能がぶっ壊れたみたいだ。
「これ以上手荒い真似はしたくないぜ。シスター、おとなしくしてもらおうか」
「ちょっと……やめ……痛いってば!」
気を失っているスカルコブラー総統をそのままに、ジャクソン伍長は、嫌がるわたしをエレベーター前まで強引に連れていった。
夢なのに全身がめっちゃ痛い。
もしかしたらこれは現実で、本当にわたしは改造人間にされたのかもしれない。
ジャクソン伍長の右手親指が金属パネルにポチッと触れると、エレベーターが静かに作動して扉が開く。
「やめ……痛いってば、もう!」
わたしの腕を強く引きながら先に乗り込んだ真顔のジャクソン伍長が、今度は地下十階のボタンを押した。
(地下十階って……マジかよ……)
この謎の施設は、思いのほか大きな建物のようだ。
こんなふざけたやつらなのに、一体どこからこんな資本が集まるんだろう。
考えてみれば、悪役って、みんなお金持ちじゃないだろうか。
地球侵略が目的の宇宙人だって、遠路はるばるやって来るんだし、富裕層としかとても思えない。
指令を受けた軍隊だったとしても、潤滑な経済力があってこその特殊任務なんじゃないかな。だからきっと、その惑星のやつらはパリピに違いない。
そんなどうでもいい妄想を膨らませていると、エレベーターが止まって扉がふたたび開いた。
「うわっ……なによ、これ!?」
思わず声が漏れたわたしをよそに、ジャクソン伍長は無理矢理に腕を引いて前へと進む。
そこにあったのは、どこまでも果てしなく広がる無機質な景色。
天井も見上げる首が痛くなるほど高く、地下十階のそこはまるで、首都圏外郭放水路のような大きな空間だった。
「ここは、訓練場だ」
わたしの顔を見ることもなく、なんかカッコ良く告げるジャクソン伍長。
「訓練場……」
嫌な予感が頭をよぎる。
次の瞬間、ジャクソン伍長がわたしの右手首を両手で掴んだかと思えば、砲丸投げの選手のようにクルクルとその場で大回転し、か弱いわたしを訓練場の中央へとぶん投げた!
「えっ────きゃあああああああああぁぁぁ! んべぶるっペポッ?!」
宙を舞ったわたしのナイスバディが容赦なく床に叩きつけられ、勢いもそのままに無様に転がる。めくれ上がったタイツ生地のマスクが鼻や口を塞いで、窒息死しそうになった。
「ンフ……ガッ………………ぷはあっ!」
全身が激痛に襲われる。それでもマスクを外して一命を取り止めたわたしは、このままでは殺されると思い、なんとか起き上がって必死に武器を探した。
周囲にはなにもなかったので、腰ベルトにある革製のポーチを開けてみる。中には五十円玉と十円玉の小銭が九十円分と、個包装の大根しょうがのど飴が一粒だけ入っていた。
「なによこれ……おばあちゃんの鞄の中身かよ!」
こんなんで、屈強なジャクソン伍長相手に戦えるはずがない。
万事休す。
きっとこれから、身につけている黒タイツがビリビリに破かれて、エッチな物語のヒロインみたく、股関節の可動ギリギリのところまで両足を強引に広げられたり、ゲス顔をした不特定多数の戦闘員に向けて、お尻を突き出した恥ずかしい格好をさせられたりするんだ。
敗北はまさに、乙女の貞操の危機を意味していた。
「さあ、本気を出してもらおうか」
ゆっくりと近づいてくるジャクソン伍長。冷徹な靴音が、二人きりの訓練場に木霊する。
「本気って……あの、わたしはただの美少女高校生なだけで……ううっ……一体あなたたちは、なんなんですか!?」
精一杯の大声を張り上げたら、自然と涙が滲んだ。
こんなんじゃない。
わたしの高校生活は、こんなんじゃない。
なんで頭のおかしいやつらに拉致られて、改造までされなきゃいけないのよ。
だんだんと怒りが込み上げてきて、とうとう涙がこぼれ落ちた。
10
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/chara_novel.png?id=8b2153dfd89d29eccb9a)
AV研は今日もハレンチ
楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo?
AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて――
薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる