ラストダンジョンで勇者パーティーに捨てられたから、あたしお家に帰りたいです。

黒巻雷鳴

文字の大きさ
上 下
42 / 55
新章突入! ラストダンジョンで勇者パーティーに捨てられたから、あたしお家に帰りたいです。

終焉の起源

しおりを挟む
「ロア、起きろ! ロア! 目を覚ましてくれ!」

 あたしの肩が強く揺さぶられる。
 まだ眠っていたいのに、どこのどいつよ……もう……。

「んみゃ…………ムホッ?!」
「やっと起きたか、ロア!」

 地下迷宮で横たわるあたしの目の前に迫っていたのは、禍々しい細工が施された異形の甲冑。ダイラーだ。

「あれ……キリ=オは? あたしの身体……貧乳になってるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「キリ=オ? 誰だそいつは? それに今さら胸のサイズを気にしている場合ではないぞ。ロア、あれを見てくれ」

 ダイラーが指差す先にあったのは、漆黒の稲妻が天井や床にまで何度も迸る巨大な空間のひずみだった。時折その中で、まばゆい閃光がまたたいては消える。
 それは、女神フリーディアの光りの加護にも似て──えっ、もしかしてマルスたちは、あの中に!?

「ダイラー、あれってまさか……!」
「ああ。おそらくはアレが終焉の起源インナー・ユニバースの入口だろう。すでにダ=ズールとの戦いは始まっている。ロア、心の準備はいいか?」
「……うん」

 魔法衣のミニスカートに付いた土埃を払いながら、立ち上がる。
 とうとうこのときが来た。
 今までの長い冒険は、経験は、このためにあったんだ。

「ダイラーこそいいの? あなたまで巻き込んじゃって……今さらだけど」
「フッ、気にするな。それに今のオレは自由の身、なにをするにも勝手にさせろ」
「ダイラー……ありがとね」

 あたしとダイラーの、数々の思い出がよみがえる。
 お互いにこんなことになるだなんて──彼もきっと、仲間になることですら、想像してはいなかったはずだ。

「なにを笑っている? 思い出し笑いなら、家に帰ってから好きなだけしてくれ」
「うん、そうだよね。さあ、行くわよダイラー!」
「おおう!」

 あたしたちは駆け出した。

 ついに最終決戦だ。

 マルス、待ってなさい!

 ダ=ズールよりも先に、ぶん殴ってやるんだから!


 そして、あたしたちは空間の歪みへと飛び込む。












 バァチバチバチバチバチ! バァァァァァン!












「みぎゃあぁぁああああああ?!」
「ぬおっ?!」

 ──ドサッ、ゴロゴロゴロゴロ!

 けれど、強烈な電磁波を浴びて弾き返されてしまった。

った……めっちゃ痛った……そして熱ッ! 服の上から熱ッ! ええっ……ちょ、なんでよ!? 弾き返されたんですけどぉぉぉぉ!?」

 床に倒れたまま、誰となく抗議する。
 なぜかこのとき、ラストダンジョンに帰ってきたんだなって、不思議な感情が芽生えた。

「ぐっ……ぬうっ……光の女神の加護がなければ終焉の起源インナー・ユニバースにすらたどり着けないというのか……」
「そんな……ここまで来て、帰れっこないじゃない!」

 こんなバカなことってあるの!?
 これじゃ本当にあたしは……役立たずで終わっちゃう……見捨てられたままで終わっちゃう!
 なんだったのよ、今までの冒険は!?

「…………こればっかりは、しかたがない。ロア、オレが家まで護衛をしてやる。だから──」
「……嫌よ、そんなの! あたし、あきらめないんだから! 絶対にあきらめないんだからッッッ!!」

 悔し涙が頬を伝ったとき、あたしはキリ=オの言葉を思い出した。

「そうよ! 総司令部の移動魔法陣は、ひとつだけじゃない! ダイラー、ほかにもまだ魔法円がないか探すわよ!」
「……わかった。それでおまえの気がすむのなら、いくらでも付き合おう」
『その必要はないぞ、ロア』

 突然、脳内に響く声。
 この声って、まさか……!

「ミメシス!?」

 次の瞬間、まばゆい輝きを放つ青白い光の結晶があたしの胸の中からゆっくりと現れる。
 やがてそれは、より強い輝きを放ち、人の姿へと変わった。

「あなた……ミメシス……だよね?」
「ああ、そうだ。待たせたな、ロア」

 今回はなぜかプリシラの姿ではなくって、人間の少女の姿をしていた。それと、服装は太股のスリットがとってもセクシーなマーメイドラインの黒いロングドレスだった。

「プリシラの姿じゃないんだね」
「フフッ、当然だ。プリシラがふたりいてはややこしいだろ? それと、我の生命力はもう限界に達してしまっている。本来ならば、おまえに話しかけることすらかなわない」
「えっ……そうだったんだ……でも、それじゃあどうして?」
終焉の起源インナー・ユニバースだ。おまえが弾かれたときにダ=ズール様の強大な闇の力を浴びた。そのおかげで一時ではあるが、こうして姿をまた現せたのだ。それはそうと──」

 ミメシスがダイラーに向き直る。
 そうだった、ふたりは初対面なんだっけ。

「ダイラー、ロアが世話になったな。おかげで終焉の起源インナー・ユニバースまで来ることができた。礼を言うぞ」
「礼などいらん。オレは特別なにもしてはいない。オレに礼を言うより、ロアを労ってやってくれ」
「……えっ、あたし?」

 なんだかちょっと、険悪というか微妙な雰囲気になってきそうな予感がする。早く話題を変えなくちゃ。

「そんなことより、どうやって終焉の起源インナー・ユニバースに入るのかが先じゃない? ねえミメシス、なにか知ってるんでしょ?」
「ああ、そうだったな……ハッ!」

 ミメシスが左手で虚空をなぎ払えば、あたしたち三人の身体が青白く光り輝く。
 そしてすぐに、小さな結晶となって終焉の起源インナー・ユニバースへと吸い込まれていった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

半神の守護者

ぴっさま
ファンタジー
ロッドは何の力も無い少年だったが、異世界の創造神の血縁者だった。 超能力を手に入れたロッドは前世のペット、忠実な従者をお供に世界の守護者として邪神に立ち向かう。 〜概要〜 臨時パーティーにオークの群れの中に取り残されたロッドは、不思議な生き物に助けられこの世界の神と出会う。 実は神の遠い血縁者でこの世界の守護を頼まれたロッドは承諾し、通常では得られない超能力を得る。 そして魂の絆で結ばれたユニークモンスターのペット、従者のホムンクルスの少女を供にした旅が始まる。 ■注記 本作品のメインはファンタジー世界においての超能力の行使になります。 他サイトにも投稿中

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

異世界超能力だより!~魔法は使えませんが超能力なら使えます~

Mikura
ファンタジー
 その日、明日見 遥(あすみ はるか)は見知らぬ森の中で目を覚ました。  だが超能力者である彼女にとってそれはあり得ないことではない。眠っている間に誤って瞬間移動を使ってしまい、起きたら知らない場所にいるということはままあるからである。だから冷静に、家に戻ろうとした。しかし何故か能力を使っても家に戻ることができない。千里眼を使って見れば見慣れぬ髪色の人間だらけ、見慣れぬ文字や動植物――驚くべきことに、そこは異世界であった。  元の世界に戻る道を探すべくまずはこの世界に馴染もうとした遥だったが、重大な問題が発生する。この世界では魔力の多さこそが正義。魔法が使えない者に人権などない。異世界人たる遥にも、勿論魔法は使えない。  しかし彼女には、超能力がある。使える力は魔法と大差ない。よし、ならば超能力を使って生きていくしかないと心に決めた。  ――まずはそこの、とても根が良さそうでお人好しで困っている人間を放っておけないタイプらしいお兄さん、申し訳ないが私が生きるために巻き込まれてください。  これは超能力少女が異世界でなんやかんやと超能力を駆使してお人よしのお兄さんを巻き込みつつ、のんびり(自称)と暮らす物語である。

処理中です...