プリンセスソードサーガ

黒巻雷鳴

文字の大きさ
上 下
52 / 68
第三章 ~ぶらり馬車の旅 死の大地・マータルス篇~

挿話 偉大なる計画

しおりを挟む
 長い森を抜けると、そこは〈ビオス山脈〉の麓にある大きくて清らかな湖だった。焼き豚事件で内部分裂寸前だった一行は、アリッサムの提案で、ここでしばしの休憩をすることにした。
 空は快晴、小鳥も歌う絶好の洗濯日和。
 気温も温かく、アシュリンは元侍女たち三人を引き連れ、水浴をするために湖へと入る。
 水着は持ってきてはいるのだが、今回はあえて、みんな裸で遊ぶことにした。
 アリッサムは湖で洗い終えた洗濯物を干しながら、さりげなく聞き耳をたてる。誰がなにをどう思っているのか、常に最新情報を得てアップデートし、自らの妄想力を高めるためである。

「レベッカさんて、ほんとスタイルいいですよね……あんなにいつも食べてるのに、羨ましいなぁ」
「んー? そうかな? まあ、ダイエットはしたことねぇーな」
「カッチーン……なんすかそれ? レベッカさんのくせに、どの口がそう言ってるんすか?」
「あん? やんのか、おい? 煽ってんのか、おい!」
「お、おい! おまえたち──」

 突然の険悪な雰囲気にアシュリンは慌てて止めに入ろうとするも、笑顔のハルがすぐさまそれを片手ひとつで制止する。大丈夫ですよと、微笑みながら。
 そして、ドロシー対レベッカの水遊び大会が始まった。

「うしゃしゃしゃしゃしゃしゃーっ!!」

 バシャバシャバシャバシャバシャ!
 バシャバシャバシャバシャバシャ!
 バシャバシャバシャバシャバシャ!
 バシャバシャバシャバシャバシャ!
 バシャバシャバシャバシャバシャ!

「うわっ、んぺっ! ブフッ、ドロッチ……おい……やめ……やめろってば! いくらなんでも、はしゃぎ過ぎだぞ!?」
「うしゃしゃしゃしゃしゃしゃーっ!!」
「てめぇ…………こん……にゃろいッ!」

 ──パッシャーン!

 ドロシー優勢かと思われたが、レベッカの強烈な右平手叩きが水面みなもに炸裂すると、形勢逆転となり大量の水飛沫がドロシーの顔面を襲った。

「ぷぅわっ?! ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ、ケホッ! 鼻に……水が、鼻に……」
「オラオラ、どうしたドロッチ? 隙だらけだぜ!」

 レベッカは八重歯を光らせてニヤリと不敵に笑い、全身に力を込める。
 そして一気に爆発させた!

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッッッッツ!!」

 いつまでも絶え間なく続く左右の連続平手叩き。レベッカは手のひらが真っ赤になっても、やめようとはしなかった。
 
「ぶへへ?! プハーッ! レベッカさん、ちょ……!」
「うふふ、ふたりともそろそろ──」

 ──パッシャーン!

「あ」
「あ」

 ハルの顔面にも水がかかったのを皮切りに、戦いはいつの間にか三つ巴になる。
 乙女たちのころころと笑う元気な声が、湖畔にまで響いていた。 

(みんな楽しそうで良かった。冒険の息抜きに裸の水浴びはかかせないって、アリッサムの言葉は正解だったわ)

 アシュリンはそう思いながら、頬笑ほほえむ。

「せーのっ、団長ぉぉぉぉぉ!」

 そんなアシュリンの顔にも、レベッカは容赦なく水をかける。
 気づけば四人とも、水遊びに夢中になっていた。


     *


 身体も心も洗い浄めた四人は湖から上がると、アリッサムが用意してくれた下着に着替えはじめる。
 と、なにやらドロシーが不満を漏らした。

「あれっ……おかしいな……そんなはずは……」
「ん? どうしたドロッチ、いろいろとはみ出てるのか?」
「ちょ、なにも出てませんって! そうじゃなくって、なんか下着パンツが気持ちキツいんですよね」

 言いながら腰回りをさするドロシー。

「あー、それは……ヘヘヘ……ご愁傷さまです」
「ちょっと待ってくださいよ! なんですか、その不気味な笑顔は!? わたし太ってませんからね!?」
「まあまあ、ドロシーはまだ育ち盛りなんだから、恥ずかしがることはないのよ?」
「ちょ、ハルさんまで……って、勝手に脇腹のお肉を摘ままないでくださいよレベッカさん!」

 少女騎士団の笑い声が、ふたたび静かな湖畔に響きわたる。
 その中でただひとり、アリッサムだけは作り笑いだった。
 なぜなら、彼女だけが事件の真相・・・・・を知っていたからである。いや、正確には仕掛けた・・・・からだ。
 少女騎士団〈天使の牙〉の下着は白一色で統一されている。もちろん、デザインも。
 ドロシーが穿いていたパンツは彼女の物ではなく、なんと、アリッサムのパンツだったのだ。
 これこそ、彼女が長年あたためてきた偉大なる計画──〝おまえのパンツはわたしの物、わたしのパンツはおまえの物作戦〟である!
 しかも、卑劣なことに、ドロシーが穿いていたのはアリッサムがさっきまで穿いていた使用済みの物で、つまりは、ドロシーとアリッサムの股間やお尻は間接的に──いや、これ以上は、なにも説明は要らないだろう。
 とにかく、この冒険でついに、アリッサムの夢が実現された。卑猥な野望が、またひとつ成就されたのである。

(ドロシーさま……わたし、もう……はぁはぁはぁはぁはぁ♡♡♡)

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

退魔の少女達

コロンド
ファンタジー
※R-18注意 退魔師としての力を持つサクラは、淫魔と呼ばれる女性を犯すことだけを目的に行動する化け物と戦う毎日を送っていた。 しかし退魔の力を以てしても、強力な淫魔の前では敵わない。 サクラは敗北するたびに、淫魔の手により時に激しく、時に優しくその体をされるがままに陵辱される。 それでもサクラは何度敗北しようとも、世の平和のために戦い続ける。 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 所謂敗北ヒロインものです。 女性の淫魔にやられるシーン多めです。 ストーリーパートとエロパートの比率は1:3くらいでエロ多めです。 (もともとノクターンノベルズであげてたものをこちらでもあげることにしました) □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ Fantiaでは1話先の話を先行公開したり、限定エピソードの投稿などしてます。 よかったらどーぞ。 https://fantia.jp/fanclubs/30630

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

【完結】【R18百合】女子寮ルームメイトに夜な夜なおっぱいを吸われています。

千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。 風月学園女子寮。 私――舞鶴ミサが夜中に目を覚ますと、ルームメイトの藤咲ひなたが私の胸を…! R-18ですが、いわゆる本番行為はなく、ひたすらおっぱいばかり攻めるガールズラブ小説です。 おすすめする人 ・百合/GL/ガールズラブが好きな人 ・ひたすらおっぱいを攻める描写が好きな人 ・起きないように寝込みを襲うドキドキが好きな人 ※タイトル画像はAI生成ですが、キャラクターデザインのイメージは合っています。 ※私の小説に関しては誤字等あったら指摘してもらえると嬉しいです。(他の方の場合はわからないですが)

処理中です...