1 / 1
ぼくの学校の怖い噂話
しおりを挟む
みなさんの学校や職場といった身近なところに、背筋が凍るような怖い噂話ってありますか?
ぼくが通う中学校にもとっておきの怖い噂話があって、学年やクラスによって多少の違いはありますが、それは行方不明になった、ひとりの少女にまつわるものでした。
その少女は、放課後の学校の中から忽然と姿を消してしまったそうで、先生やクラスメイトたち、学校関係者や警察が──それこそ毎日、何週間も時間をかけて──校舎や敷地内を、くまなく捜しても見つからなかったそうなんです。とても不思議ですよね。
結局、何ひとつ進展もなく、『謎の女子中学生失踪事件』として捜査は迷宮入りになり、とうとう捜索が打ち切られてしまいました。
警察の捜索が終わっても、少女のお父さんとお母さんは、毎日朝夕、校門や通学に利用していた駅の前に立ち、雨の日や雪が降る日でもビラを配りながら少女の目撃情報を大声で求めていたそうです。
数ヵ月後、お母さんのほうは姿をみせなくなって、お父さんだけがやって来るようになりました。
どうやら、精神的にも疲れきったお母さんは病に倒れて心を壊してしまい、自ら生命を断って死んでしまったそうです。
愛娘と妻を失ったお父さんも、深い悲しみからすっかりと人相が変わってしまい、顔色も悪く、声も小さくなって掠れ、うまく聞き取れないほど弱りきっていたそうです。
そしてついに、ある日を境に少女のお父さんも学校や駅前に姿をみせなくなりました。
それから何年も長い月日が経ち、多くの人々が少女のことをすっかりと忘れてしまった頃……。
この中学校で、ふたたび大きな事件が起きました。
ですが、今回は『少女の失踪事件』ではなくて、それは『少女の殺人事件』でした。
古くなった校舎の耐震工事中のことです。多目的室の壁にある大きな鏡の向こう側から、白骨化したひとりの少女の遺体が見つかりました。
遺体が身につけていた制服のデザインを見た学校関係者が、20年以上前に行方不明になった少女の事件を思い出し、遺体がその少女だとすぐにわかったそうなんです。
その多目的室は、事件当時も工事をしていたそうで、殺された少女は、長年のあいだ、ずっと鏡の内側の暗闇の中に閉じ込められて隠されていたことになります。
あっ、そうそう!
骨だけになってしまった少女が、どうして殺されたとわかったのかというと、頭の骨が砕けてへこんでいたそうですよ。犯人も少女を相手に酷いことをしますよね。
もちろん、事件はこれだけでは終わりません。
話を聞きつけた少女のお父さんが、すぐ学校にのり込んできて、「うちの娘を殺したのは誰だ!?」「おれが仇をとってやる!」と、それこそ鬼の形相で大暴れしたそうです。
けれども、その時にはすでに、犯人は警察に捕まった後でした。
犯人はなんと、うちの学校の男性教諭でした。
その先生は犯行当時、まだ先生じゃなくて、被害者の少女と同じ学年の生徒だったそうです。
なんでも殺した動機は、交際相手だった少女が赤ちゃんを身ごもったらしく、どうしていいかわからずに衝動的に殺してしまったそうなんです。
ひどくないですか? 結果的に彼は、ふたりの生命を奪ったんですよ! 犯行当時はまだ未成年の子供だったとはいえ、鬼畜の所業じゃないですか!
こうして、迷宮入りしていた『謎の女子中学生失踪事件』は、思わぬかたちで解決したのです。人間て残酷なことができる生き物なんですね。
それにしても、どうして犯人がわかったのか、気になりませんか? 気になりますよね?
それは、『答え』が書いてあったから。
もちろん、テスト用紙にじゃなくって、鏡の裏側に爪で引っ掻いたような痕で、しっかりと書いてあったそうですよ。
先生の名前が、ね。
ぼくが通う中学校にもとっておきの怖い噂話があって、学年やクラスによって多少の違いはありますが、それは行方不明になった、ひとりの少女にまつわるものでした。
その少女は、放課後の学校の中から忽然と姿を消してしまったそうで、先生やクラスメイトたち、学校関係者や警察が──それこそ毎日、何週間も時間をかけて──校舎や敷地内を、くまなく捜しても見つからなかったそうなんです。とても不思議ですよね。
結局、何ひとつ進展もなく、『謎の女子中学生失踪事件』として捜査は迷宮入りになり、とうとう捜索が打ち切られてしまいました。
警察の捜索が終わっても、少女のお父さんとお母さんは、毎日朝夕、校門や通学に利用していた駅の前に立ち、雨の日や雪が降る日でもビラを配りながら少女の目撃情報を大声で求めていたそうです。
数ヵ月後、お母さんのほうは姿をみせなくなって、お父さんだけがやって来るようになりました。
どうやら、精神的にも疲れきったお母さんは病に倒れて心を壊してしまい、自ら生命を断って死んでしまったそうです。
愛娘と妻を失ったお父さんも、深い悲しみからすっかりと人相が変わってしまい、顔色も悪く、声も小さくなって掠れ、うまく聞き取れないほど弱りきっていたそうです。
そしてついに、ある日を境に少女のお父さんも学校や駅前に姿をみせなくなりました。
それから何年も長い月日が経ち、多くの人々が少女のことをすっかりと忘れてしまった頃……。
この中学校で、ふたたび大きな事件が起きました。
ですが、今回は『少女の失踪事件』ではなくて、それは『少女の殺人事件』でした。
古くなった校舎の耐震工事中のことです。多目的室の壁にある大きな鏡の向こう側から、白骨化したひとりの少女の遺体が見つかりました。
遺体が身につけていた制服のデザインを見た学校関係者が、20年以上前に行方不明になった少女の事件を思い出し、遺体がその少女だとすぐにわかったそうなんです。
その多目的室は、事件当時も工事をしていたそうで、殺された少女は、長年のあいだ、ずっと鏡の内側の暗闇の中に閉じ込められて隠されていたことになります。
あっ、そうそう!
骨だけになってしまった少女が、どうして殺されたとわかったのかというと、頭の骨が砕けてへこんでいたそうですよ。犯人も少女を相手に酷いことをしますよね。
もちろん、事件はこれだけでは終わりません。
話を聞きつけた少女のお父さんが、すぐ学校にのり込んできて、「うちの娘を殺したのは誰だ!?」「おれが仇をとってやる!」と、それこそ鬼の形相で大暴れしたそうです。
けれども、その時にはすでに、犯人は警察に捕まった後でした。
犯人はなんと、うちの学校の男性教諭でした。
その先生は犯行当時、まだ先生じゃなくて、被害者の少女と同じ学年の生徒だったそうです。
なんでも殺した動機は、交際相手だった少女が赤ちゃんを身ごもったらしく、どうしていいかわからずに衝動的に殺してしまったそうなんです。
ひどくないですか? 結果的に彼は、ふたりの生命を奪ったんですよ! 犯行当時はまだ未成年の子供だったとはいえ、鬼畜の所業じゃないですか!
こうして、迷宮入りしていた『謎の女子中学生失踪事件』は、思わぬかたちで解決したのです。人間て残酷なことができる生き物なんですね。
それにしても、どうして犯人がわかったのか、気になりませんか? 気になりますよね?
それは、『答え』が書いてあったから。
もちろん、テスト用紙にじゃなくって、鏡の裏側に爪で引っ掻いたような痕で、しっかりと書いてあったそうですよ。
先生の名前が、ね。
10
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ここがケツバット村
黒巻雷鳴
ホラー
大学生の浅尾真綾は、年上の恋人・黒鉄孝之と夏休みにとある村へ旅行することになった。
観光地とは呼びがたい閑散としたその村は、月夜に鳴り響いたサイレンによって様相が変わる。温厚な村人たちの目玉は赤黒く染まり、バットを振るう狂人となって次々と襲いかかる地獄へと化したのだ!
さあ逃げろ!
尻を向けて走って逃げろ!
狙うはおまえの尻ひとつ!
叩いて、叩いて、叩きまくる!
異色のホラー作品がここに誕生!!
※無断転載禁止
【短編集】霊感のない僕が体験した奇妙で怖い話
初めての書き出し小説風
ホラー
【短編集】話ホラー家族がおりなす、不思議で奇妙な物語です。
ーホラーゲーム、心霊写真、心霊動画、怖い話が大好きな少し変わった4人家族ー
霊感などない長男が主人公の視点で描かれる、"奇妙"で"不思議"で"怖い話"の短編集。
一部には最後に少しクスっとするオチがある話もあったりするので、怖い話が苦手な人でも読んでくださるとです。
それぞれ短くまとめているので、スキマ時間にサクッと読んでくださると嬉しいです。
刹那に過ぎた夏の朝
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
ホラー
Spoonというアプリで、夏をテーマにしたイラストを見て朗読作品を書くという企画用に提出した作品でした。
企画が終了しましたので、フリー台本として公開します。
イラスト作者様からホラー要素ありの指定だったためちょっと怖いお話になっています。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる