ぼくの学校の怖い噂話

黒巻雷鳴

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ぼくの学校の怖い噂話

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 みなさんの学校や職場といった身近なところに、背筋が凍るような怖い噂話ってありますか?
 ぼくが通う中学校にもとっておきの怖い噂話があって、学年やクラスによって多少の違いはありますが、それは行方不明になった、ひとりの少女にまつわるものでした。


 その少女は、放課後の学校の中から忽然こつぜんと姿を消してしまったそうで、先生やクラスメイトたち、学校関係者や警察が──それこそ毎日、何週間も時間をかけて──校舎や敷地内を、くまなく捜しても見つからなかったそうなんです。とても不思議ですよね。

 結局、何ひとつ進展もなく、『謎の女子中学生失踪事件』として捜査は迷宮入りになり、とうとう捜索が打ち切られてしまいました。
 警察の捜索が終わっても、少女のお父さんとお母さんは、毎日朝夕、校門や通学に利用していた駅の前に立ち、雨の日や雪が降る日でもビラを配りながら少女の目撃情報を大声で求めていたそうです。
 数ヵ月後、お母さんのほうは姿をみせなくなって、お父さんだけがやって来るようになりました。
 どうやら、精神的にも疲れきったお母さんは病に倒れて心を壊してしまい、自ら生命いのちを断って死んでしまったそうです。
 愛娘と妻を失ったお父さんも、深い悲しみからすっかりと人相が変わってしまい、顔色も悪く、声も小さくなってかすれ、うまく聞き取れないほど弱りきっていたそうです。
 そしてついに、ある日を境に少女のお父さんも学校や駅前に姿をみせなくなりました。

 それから何年も長い月日がち、多くの人々が少女のことをすっかりと忘れてしまったころ……。

 この中学校で、ふたたび大きな事件が起きました。

 ですが、今回は『少女の失踪事件』ではなくて、それは『少女の殺人事件』でした。
 古くなった校舎の耐震工事中のことです。多目的室の壁にある大きな鏡の向こう側から、白骨化したひとりの少女の遺体が見つかりました。
 遺体が身につけていた制服のデザインを見た学校関係者が、20年以上前に行方不明になった少女の事件を思い出し、遺体がその少女だとすぐにわかったそうなんです。
 その多目的室は、事件当時も工事をしていたそうで、殺された少女は、長年のあいだ、ずっと鏡の内側の暗闇の中に閉じ込められて隠されていたことになります。

 あっ、そうそう!

 骨だけになってしまった少女が、どうして殺されたとわかったのかというと、頭の骨が砕けてへこんでいたそうですよ。犯人も少女を相手にむごいことをしますよね。

 もちろん、事件はこれだけでは終わりません。

 話を聞きつけた少女のお父さんが、すぐ学校にのり込んできて、「うちの娘を殺したのはだれだ!?」「おれがかたきをとってやる!」と、それこそ鬼の形相で大暴れしたそうです。
 けれども、その時にはすでに、犯人は警察に捕まった後でした。

 犯人はなんと、うちの学校の男性教諭でした。

 その先生は犯行当時、まだ先生じゃなくて、被害者の少女と同じ学年の生徒だったそうです。
 なんでも殺した動機は、交際相手だった少女が赤ちゃんを身ごもったらしく、どうしていいかわからずに衝動的に殺してしまったそうなんです。
 ひどくないですか? 結果的に彼は、ふたりの生命いのちを奪ったんですよ! 犯行当時はまだ未成年の子供だったとはいえ、鬼畜の所業じゃないですか!

 こうして、迷宮入りしていた『謎の女子中学生失踪事件』は、思わぬかたちで解決したのです。人間て残酷なことができる生き物なんですね。

 それにしても、どうして犯人がわかったのか、気になりませんか? 気になりますよね?

 それは、『答え』が書いてあったから。
 もちろん、テスト用紙にじゃなくって、鏡の裏側に爪で引っいたようなあとで、しっかりと書いてあったそうですよ。

 先生の名前が、ね。




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