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第五章
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「初めまして。あなたが依頼者さん?」
私が声を掛けると、女の子は眉間に皺を寄せた。
困った顔でちらちらと、直人を見る。
「あの、どうかした?」
「私、直人君に依頼したんですけど」
彼女はすごく真面目に言ったのだろうが、私と丈一は吹き出してしまう。
「直人君、かー。なんか新鮮」
「俺も初めて聞いたな。誰も直人に君なんて付けないから」
「うるせー、好きに呼んでいいって言ったら、そうなったんだよ」
直人は照れたような顔をして、ぶっきらぼうに言った。
「で、依頼は?」
「ちょ、先に名前くらい聞こうよ」
私は彼女を見たが、ふいと顔をそらされてしまう。
あれ、嫌われちゃった?
直人のことをからかったせいだろうか。
フォローすべきかと思っていたら、彼女が自分から自己紹介をした。
「五年一組の、坂下芽依です。よろしくお願いします」
お辞儀までして、思っていたより礼儀正しい。
品行方正な優等生って感じで、直人のような荒っぽいタイプとは無縁そうなのに。
「私は、六年一組の有末真琴。どうして直人に依頼したの?」
「それは、その、前に直人君に助けてもらったから」
芽依が直人を見つめ、彼は困ったように頬をかく。
「んな大したことじゃねーよ。野良犬に襲われてたから、追い払っただけ」
「私はすごく感謝してるんだよ! だって他にも見てた人達がいたのに、直人君だけが助けてくれたんだから」
一生懸命に訴える芽依を見て、直人は少し圧倒されているようだ。
「お、おう」
私はなんだか嬉しくなって、芽依に明るく話しかける。
「良かった。直人の良いところを知ってるのが、私だけじゃなくて」
「何言ってるんですか。直人君、人気あるんですよ。弱い者いじめは絶対しないし、頼りになるって」
急に褒められて、直人は顔を真っ赤にしている。
意外や意外、同級生からの人気はさっぱりだが、後輩には慕われるパターンらしい。
なんにせよ、直人が認められるのは良いことだ。
「そっか、全然知らなかった。直人って昔から、良い奴なのよ。隣のおじいさんの庭仕事を手伝ったり、怪我した友達が入院したとき毎日お見舞いに行ったり」
「やっぱり! 私の目に間違いはなかったです!」
芽依はキラキラした瞳で直人を見つめ、彼は恥ずかしそうにしてうつむいてしまった。
こういう状況に慣れていないから、戸惑っているのだろう。
「それで、依頼というのはなんだ?」
やたら直人ばかり褒められているからか、丈一が少々不機嫌そうにたずねた。
芽依はハッとして、深刻そうな顔で打ち明ける。
「実は最近、誰かに見られてるみたいなんです」
私が声を掛けると、女の子は眉間に皺を寄せた。
困った顔でちらちらと、直人を見る。
「あの、どうかした?」
「私、直人君に依頼したんですけど」
彼女はすごく真面目に言ったのだろうが、私と丈一は吹き出してしまう。
「直人君、かー。なんか新鮮」
「俺も初めて聞いたな。誰も直人に君なんて付けないから」
「うるせー、好きに呼んでいいって言ったら、そうなったんだよ」
直人は照れたような顔をして、ぶっきらぼうに言った。
「で、依頼は?」
「ちょ、先に名前くらい聞こうよ」
私は彼女を見たが、ふいと顔をそらされてしまう。
あれ、嫌われちゃった?
直人のことをからかったせいだろうか。
フォローすべきかと思っていたら、彼女が自分から自己紹介をした。
「五年一組の、坂下芽依です。よろしくお願いします」
お辞儀までして、思っていたより礼儀正しい。
品行方正な優等生って感じで、直人のような荒っぽいタイプとは無縁そうなのに。
「私は、六年一組の有末真琴。どうして直人に依頼したの?」
「それは、その、前に直人君に助けてもらったから」
芽依が直人を見つめ、彼は困ったように頬をかく。
「んな大したことじゃねーよ。野良犬に襲われてたから、追い払っただけ」
「私はすごく感謝してるんだよ! だって他にも見てた人達がいたのに、直人君だけが助けてくれたんだから」
一生懸命に訴える芽依を見て、直人は少し圧倒されているようだ。
「お、おう」
私はなんだか嬉しくなって、芽依に明るく話しかける。
「良かった。直人の良いところを知ってるのが、私だけじゃなくて」
「何言ってるんですか。直人君、人気あるんですよ。弱い者いじめは絶対しないし、頼りになるって」
急に褒められて、直人は顔を真っ赤にしている。
意外や意外、同級生からの人気はさっぱりだが、後輩には慕われるパターンらしい。
なんにせよ、直人が認められるのは良いことだ。
「そっか、全然知らなかった。直人って昔から、良い奴なのよ。隣のおじいさんの庭仕事を手伝ったり、怪我した友達が入院したとき毎日お見舞いに行ったり」
「やっぱり! 私の目に間違いはなかったです!」
芽依はキラキラした瞳で直人を見つめ、彼は恥ずかしそうにしてうつむいてしまった。
こういう状況に慣れていないから、戸惑っているのだろう。
「それで、依頼というのはなんだ?」
やたら直人ばかり褒められているからか、丈一が少々不機嫌そうにたずねた。
芽依はハッとして、深刻そうな顔で打ち明ける。
「実は最近、誰かに見られてるみたいなんです」
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