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第二章

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 お昼休みは何もなければ、菜々実と楽しくおしゃべりする。
 のだけど、今日の菜々実はちょっとおかしい。
 やけにニマニマして、からかうように言った。

「まーちゃん、最近よく二組行ってるよね」
「え、う、うん」
「誰に会いに行ってるのかなー?」

 私は目を大きく見開き、菜々実を軽くにらんだ。

「何よ、どういう意味?」
「もぅ、わかってるくせに。縞野君といい感じなんでしょ?」

 びっくりした。皆にはそう見えていたのだろうか?
 幼なじみで、友達で、男子であっても、仲の良い関係ってあるはずなのに。

「丈一とはそんなんじゃ」
「ほら、丈一とか呼び捨てにしてるし」
「それはだって、昔からそう呼んでるから」

 菜々実はわざとらしくため息をつき、人差し指を立てて左右に振る。

「結構縞野君を狙ってる子、多いんだよ?」
「え、ホント?」
「そりゃあ甲正こうせい学園、合格間違いなしのエリートだもん。今のうちに仲良くしときたいけど、クールすぎて相手にされないって、皆なげいてるんだから」

 知らなかった、丈一ってモテるんだ――。
 でもそっか、背高いし、頭は良いし、顔だって整ってるし。
 言われてみればモテる要素がいっぱいある。

「ってゆーか丈一だけじゃなく、直人もいたんだから、いい感じも何もないでしょ?」

 勝手に誤解されて、噂になっても嫌だから、ちゃんと状況を説明しようとするのだが、菜々実は聞こうとはしない。

「麻井の話はいいよ。暴れん坊将軍がからむと、全然恋の話にならないんだもん」
「丈一だって恋じゃないし。こないだのケンカをうまく収められたから、探偵団っていうか、皆のお悩み相談できたらいいねって話してたの」
「お悩み相談?」
「うん。困ったことがあったら、打ち明けてもらって、三人で解決するの」

 菜々実はしばらく考えてから、切実な表情を浮かべて言った。

「片思いの悩み、とかでもいいの?」

 それは予想していなかった。
 直人だってまさか恋の悩みが舞い込むなんて、思ってもいないだろう。

「えっと、多分、そういうんじゃないと思うけど」

 答えながら私はドギマギしてしまった。
 菜々実は今、恋をしているのだろうか?

「なんだ、ツマンナイ」

 菜々実はプイと顔を背けたが、私は気が気でない。
 だって私はまだ、ハッキリ誰かを好きになったことなんてないから。

「てゆーかナナは、片思い、してるの?」

 恐る恐る尋ねると、菜々実はアハハと笑った。

「やだ、まーちゃんたら、例えばよ、例えば。皆のそーゆー話、聞いてみたいじゃない?」

 菜々実の笑顔からすると、本当に冗談半分だったみたいだ。
 私はホッとひと息ついてから、菜々実をたしなめる。

「もしそんな依頼が来ても、ナナには教えられないよ? 守秘義務っていうのがあって、依頼の内容は他の人に話せないの」
「えー、じゃあ探偵団なんてやめなよ。私と遊ぶ時間なくなるだけじゃない」
「でも約束しちゃったし」
「んもー、先にあたしに相談してくれたらいいのに」
「ごめんごめん。だけど依頼なんて、そうそう来ないと思うから大丈夫だよ」

 私は本当にそう思っていた。
 だってまだ成果を上げたわけじゃない、できたばかりの探偵団に、頼み事なんてあるはずがないのだから。

 それなのに私たちは、ちょっとばかり深刻で、複雑で、難しい事件を解決しなきゃならなくなるのだ。
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