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4.全てを失う
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7:00 起床
7:15 朝ごはんを食べた後着替える
7:30 洗濯機と炊飯器を5:00に予約
8:00 家を出るついでにゴミ出し
8:10 満員電車で職場へ
8:40 会社に着く
8:50 部屋の入口にセキュリティーカードをかざす
「…該当なし…?」
何故かエラーになってしまう。何度やっても該当なし。どうして…。なぜだか嫌な予感がする。
「あれ(笑)?比嘉くん。なんでここきてんの?君もう解雇したんだけど?邪魔だからどいてくれんかね?」
「…は?」
部長の一言で確信した。俺の感は当たってしまったのだ。こんなことが前にもあった。クビにされるのはもうここで3度目だ。この歳ではもうどこも雇ってくれないだろう。必死に抗議する。
「…何言ってるのか分かりません。俺なにか大きなミスしましたか…?」
「何言ってるんだ。3日も無断欠勤って(笑)。笑わせないでくれよ全く。発情期とやらでよく休むくせにΩの権利やらなんやらで言い訳して。ああ、文句は上に言ってくれよ?俺はこういうサボる奴がいるんです~としか言ってないから(笑)」
ふざけてる。まず無断欠勤については出鱈目だ。俺が倒れたその日のうちに渡辺さんが連絡を入れてくれているはず。目が覚めた日もすぐ連絡した。
「発情期で休んでしまうのは申し訳ないです。しかし、その分残業や仕事はこなしてます。給料もまだ貰ってませんし、無断欠勤なんて1度もしておりません!今回は渡辺という方から連絡を貰っていたでしょう?」
「あ?なんの事だかさっぱりだな。それに文句なら上に言えと言っとるだろう。Ωってだけで使えねぇのに男なんて!今まで雇ってやってただけ感謝して欲しいくらいだな。あとな、言わせてもらうが俺はお前自体が嫌いなんだよ。こっちを見下しやがって、仕事の効率が落ちんだよ。おまえがいるだけで!!!早く俺たちの視界から消えてくれ!!!」
は?俺たち?その言葉に引っかかっり、周りを見る。みんな、俺を蔑むような目で見てひそひそと話をしていた。唯一の味方だと思っていた同僚でさえ、目を逸らしてしまう。誰か助けてくれるのではないかと期待したが、無駄なようだな。その場にいる人はみな、俺を無視して仕事に戻って行った。
Ω差別はまだまだ根強い。普通このようにいきなり解雇なんて出来ないのに、Ωだからと言う理由でまかり通ってしまう。暗黙の了解と言うやつだろうか。俺は自分の不甲斐なさとやるせなさに絶望しながら、帰路に着いた。
会社をクビになって2週間。俺は完全に壊れていった。お前はダメな奴だ、価値なんてないという声に怯えながら布団に潜って過ごす。食べ物も受け付けず、ここ1週間は何も食べていない。それなのに吐き気は込み上げてきて、トイレに駆け込み散々吐いて意識を失う。気がつくとあたりはゴミだらけ。いかに自分がダメな奴かを体現しているようで、辛い。
ただ、手首を切ってる時は幾分か楽になった。濁った静脈血が腕を滴る様は、まるで醜い部分が無くなっていくかのように感じる。汚い左腕を見る度に、これまでの嫌な自分を罰することができたと安堵する。すると今度は、こんなことをしてる僕が嫌になって…あとは察しの通りだ。僕は誰からも必要とされない、ましてや邪魔な存在だから……。ああ、嫌だなぁ。消えたいなぁ……。
そうだ。消えちゃえばいいんだ。
なんで気づかなかったんだ!みんな僕が邪魔なんだし。今辛いし。
そう決めたら行動は早かった。ロープの代わりにコンセントを使って輪っかを作りドアノブにかける。
ここに首をかければ…。でも苦しいのかな。苦しいのはやだなぁ。そんなことをぼやっと考えていると、ピリリリリッっと携帯が鳴った。
そこではっ、と我に返った。
「…嘘だろ?俺、今何を…」
自分で自分が怖くなり、震えが止まらない。どうにか乱れた息を整え、電話に出る。渡辺さんからだった。
「「あ!良かったー!まさとさんお久しぶりです!覚えてますか?!渡辺です!お例の件でメールしたんですけど、あれから全然返事なくて心配だったんですよ!?しつこい男は嫌われるって妹が言うんで1日1回のメールで我慢してたんですけどもう心配で心配で!!!でも少ししか喋ってないのに高頻度でメールは嫌ですよね。すみませんでした……。僕はただまさきさんと……。まさとさん?」」
「……グスッ」
「「え?!嘘!そんなに嫌だったんですか?!」」
「「もう!お兄ちゃんたら!!絶対違うわ!まさきさん何かあったのよ!今すぐまさきさんのところに行ってあげるべきだわ!まさきさんどうしたの?どこか痛いのですか?ごめんなさいうちの兄がグイグイと」」
「え?!そうなんですかまさきさん?!それは大変だ!急いでそちらに向かいますから!何が必要なものとか……」
「……うるさい…煩いんだよあんたら!!!」
「「?!」」
あーあ。思わず声を上げてしまった。絶対幻滅しただろうな。でももう抑えられなくて、感情が溢れ出して止まらなかった。苦しくて仕方がなかった。
7:15 朝ごはんを食べた後着替える
7:30 洗濯機と炊飯器を5:00に予約
8:00 家を出るついでにゴミ出し
8:10 満員電車で職場へ
8:40 会社に着く
8:50 部屋の入口にセキュリティーカードをかざす
「…該当なし…?」
何故かエラーになってしまう。何度やっても該当なし。どうして…。なぜだか嫌な予感がする。
「あれ(笑)?比嘉くん。なんでここきてんの?君もう解雇したんだけど?邪魔だからどいてくれんかね?」
「…は?」
部長の一言で確信した。俺の感は当たってしまったのだ。こんなことが前にもあった。クビにされるのはもうここで3度目だ。この歳ではもうどこも雇ってくれないだろう。必死に抗議する。
「…何言ってるのか分かりません。俺なにか大きなミスしましたか…?」
「何言ってるんだ。3日も無断欠勤って(笑)。笑わせないでくれよ全く。発情期とやらでよく休むくせにΩの権利やらなんやらで言い訳して。ああ、文句は上に言ってくれよ?俺はこういうサボる奴がいるんです~としか言ってないから(笑)」
ふざけてる。まず無断欠勤については出鱈目だ。俺が倒れたその日のうちに渡辺さんが連絡を入れてくれているはず。目が覚めた日もすぐ連絡した。
「発情期で休んでしまうのは申し訳ないです。しかし、その分残業や仕事はこなしてます。給料もまだ貰ってませんし、無断欠勤なんて1度もしておりません!今回は渡辺という方から連絡を貰っていたでしょう?」
「あ?なんの事だかさっぱりだな。それに文句なら上に言えと言っとるだろう。Ωってだけで使えねぇのに男なんて!今まで雇ってやってただけ感謝して欲しいくらいだな。あとな、言わせてもらうが俺はお前自体が嫌いなんだよ。こっちを見下しやがって、仕事の効率が落ちんだよ。おまえがいるだけで!!!早く俺たちの視界から消えてくれ!!!」
は?俺たち?その言葉に引っかかっり、周りを見る。みんな、俺を蔑むような目で見てひそひそと話をしていた。唯一の味方だと思っていた同僚でさえ、目を逸らしてしまう。誰か助けてくれるのではないかと期待したが、無駄なようだな。その場にいる人はみな、俺を無視して仕事に戻って行った。
Ω差別はまだまだ根強い。普通このようにいきなり解雇なんて出来ないのに、Ωだからと言う理由でまかり通ってしまう。暗黙の了解と言うやつだろうか。俺は自分の不甲斐なさとやるせなさに絶望しながら、帰路に着いた。
会社をクビになって2週間。俺は完全に壊れていった。お前はダメな奴だ、価値なんてないという声に怯えながら布団に潜って過ごす。食べ物も受け付けず、ここ1週間は何も食べていない。それなのに吐き気は込み上げてきて、トイレに駆け込み散々吐いて意識を失う。気がつくとあたりはゴミだらけ。いかに自分がダメな奴かを体現しているようで、辛い。
ただ、手首を切ってる時は幾分か楽になった。濁った静脈血が腕を滴る様は、まるで醜い部分が無くなっていくかのように感じる。汚い左腕を見る度に、これまでの嫌な自分を罰することができたと安堵する。すると今度は、こんなことをしてる僕が嫌になって…あとは察しの通りだ。僕は誰からも必要とされない、ましてや邪魔な存在だから……。ああ、嫌だなぁ。消えたいなぁ……。
そうだ。消えちゃえばいいんだ。
なんで気づかなかったんだ!みんな僕が邪魔なんだし。今辛いし。
そう決めたら行動は早かった。ロープの代わりにコンセントを使って輪っかを作りドアノブにかける。
ここに首をかければ…。でも苦しいのかな。苦しいのはやだなぁ。そんなことをぼやっと考えていると、ピリリリリッっと携帯が鳴った。
そこではっ、と我に返った。
「…嘘だろ?俺、今何を…」
自分で自分が怖くなり、震えが止まらない。どうにか乱れた息を整え、電話に出る。渡辺さんからだった。
「「あ!良かったー!まさとさんお久しぶりです!覚えてますか?!渡辺です!お例の件でメールしたんですけど、あれから全然返事なくて心配だったんですよ!?しつこい男は嫌われるって妹が言うんで1日1回のメールで我慢してたんですけどもう心配で心配で!!!でも少ししか喋ってないのに高頻度でメールは嫌ですよね。すみませんでした……。僕はただまさきさんと……。まさとさん?」」
「……グスッ」
「「え?!嘘!そんなに嫌だったんですか?!」」
「「もう!お兄ちゃんたら!!絶対違うわ!まさきさん何かあったのよ!今すぐまさきさんのところに行ってあげるべきだわ!まさきさんどうしたの?どこか痛いのですか?ごめんなさいうちの兄がグイグイと」」
「え?!そうなんですかまさきさん?!それは大変だ!急いでそちらに向かいますから!何が必要なものとか……」
「……うるさい…煩いんだよあんたら!!!」
「「?!」」
あーあ。思わず声を上げてしまった。絶対幻滅しただろうな。でももう抑えられなくて、感情が溢れ出して止まらなかった。苦しくて仕方がなかった。
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