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「ダメッ・・・・逃げて!逃げて庵君っ!!」
あなたはここに居てはいけない!
いくら腕章を付けていようと、いくら「高位クラス武器」を所持して金ラインだろうと、あなたでは負けてしまう。
夜神は声のした方を驚愕した表情で見ながら、頭を振ってしまった。
目の前の光景を否定するように。これから起こるであろう、胸を抉り取られるような事を否定するように。
「うそだろ・・・・・逃げろ、青年っ・・・」
「だめだ・・・・っぅ・・・」
傷付き地面に倒れていた七海や長谷部達は口々に「逃げろ」と叫ぶ。
この場にいる予定ではなかった。伍長で経験があまりにもなさすぎる。
夜神が戦闘を開始したと同じぐらいに、指示された隊員以外は全員退避だった。
庵も最後まで粘っていたが「経験の不足」を示唆されて、納得とはいかないが色々なものを呑み込んだ表情をして、元帥達の話を聞いていた。
その庵が「高位クラス武器」の澌尽灰滅を腰に下げて皇帝・ルードヴィッヒに向かって睨みつけている。
「ダメッ逃げて!逃げてぇぇ!お願いだから・・・・海斗・・・・」
夜神は最大限の声の出る大きさで叫んだ。けど、最後の方は声が小さくなる。
また、私は大切な人を無くさないといけないの?
お願いだから、生きてほしいのに・・・・
いやだ!これ以上悲しい思いはしたくないっ!!
例え、手足をもぎ取られようと、視界を暗闇に落とそうと私はっ!!
体を刺され、満足に使えない手足を振るい立たせ立ち上がろうとした時、ガクッと足が引っ張られる。
「?!っ!」
まさか、鎖がっ!!
悔しい気持ちで巻き付いている足を見た時驚いてしまった
巻き付いていたのはルードヴィッヒが操る鎖ではなく
「蔓?棘がある?荊?」
それは植物の荊だった。
ルードヴィッヒは声のした方を「またか・・・」と少し不満そうな顔をして向ける。
折角、壊滅的状況を作り、心を挫いたばかりなのに、やっと負けを認めて帝國に連れて行こうと心が浮き立っていたのに・・・・・
気怠さを隠すこともなく、視線を向ける。
そして、仁王立ちでルードヴィッヒを睨む庵を見て、一瞬で不満も何もかもなくなった。
あるのは憤り、恨み、怨嗟の感情が一気に生まれる。
その、不思議な感覚に背中がゾワゾワとする。
生まれて初めての事に戸惑う。
この、感覚は感情は一体何なんだ?
ずっと自分の中にあったのに、今までそれは隠されていた
そして、この男を見た時にそれが一気に放出される
まるでパンドラの箱の災いのように放たれる
ずっと昔に味わった経験が、ふっとした時、思い出したような
けど、自分の事のようで自分の事ではない
記憶なのか、それとも血なのか分からないが覚えている
この男は私の・・・・・・
「君は何処かで会ったことはあるかい?」
そんな事はないのに一応聞いてみる。けど、返ってきた答えは自分の想像通りだった。
「初めてだ」
緊張か、恐怖からか声色はすこし強張っていたが、それでも断言する声にルードヴィッヒは笑った。
・・・・・血が訴えている・・・・この男はっ!
「私も初めてだよ。はじめまして?そして、さようならっ!」
最後の言葉と共にルードヴィッヒは剣を引き抜きながら庵に向かって走り出す。
「消えろっ!!」
庵もルードヴィッヒが走ってくるのを確認しながら、同じように刀を引き抜く。
「抜刀!!澌尽灰滅っ!!香気を纏えっ!!」
ルードヴィッヒは両手で剣を握り上にあげると、そのまままっすぐ、庵の頭から真っ二つになるように振り下ろす。
庵も、避けずに刀で受け止める。
ガチ、ガチャと金属音を交差した剣と刀から出しながら、二人は互いの顔を間近で見合わせる。
互いに初めて顔を見合わせるのに、ずっと昔から知っているような、けど、そこにあるのは恨み怒りといった「負の感情」が強い。
庵も最初は、人類の敵、大切な人に恐怖を与え泣かせ続けた諸悪の根源、消さなくてはいけない存在と憤ってたが、間近でその瞳を見て、違和感を感じてしまった。
それはルードヴィッヒも同じだった。餌にしか思っていない人間共が歯向かってくるのは正直不満しかなかった。
大人しく我々に従えばいいのに・・・・・
そして、目の前の餌も歯向かい、武器を構える。
けど、この餌は何かが違う。
言葉では言い表せない、何かが私の感情を支配する。
憎い、悔しい、消えてくれ・・・
そんな今まで味わったことのない感情が渦巻く
━━━━違和感・・・・・
けど、その違和感の正体に思い当たるものがある。ずっと前から、生まれたときから持っている「血の呪い」これしか思い当たらない。
「君はどうして私に剣を向けるのかな?」
金の瞳が挑発する
黒の瞳は真っ直ぐに受け止める
「お前が凪さんにとって恐怖の存在だからだっ!!そして、人類の敵だからだっ!!」
一旦、互いに離れてそれぞれ構える。
一秒、二秒と時間が過ぎていく。二人はそのまま静止していた。
けど、先に動いたのはルードヴィッヒだった。
剣は動いていない。動いたのは地面に埋もれた鎖だった。
「っう・・・・・・」
何とか鎖を躱したが、腕を掠めてしまい血が地面に落ちていく。
「っぅ・・・くそっ!!」
「ぃゃ・・・・・やだ、お願い・・・・逃げてよ・・・・逃げて・・・・お願いだからぁ・・・・・」
もう、見たくない・・・・・・・
自分が好きになった人はみんな死んでしまった・・・・
あの皇帝の操る鎖がお母さんを、先生を殺した・・・・
庵君も失うの?嫌だ!嫌だ!お願いだから、私から奪わないで!もう、嫌だよ・・・・・
失くしたくないから動きたいのに、足に絡みついた荊が邪魔でっ!!
お願いだから解いて!!
お願いだから私を行かせて!!
「離してっ!!お願いだから!!」
棘がある荊なのに、足首に巻き付いている部分は棘がなく不思議な荊を夜神は、必死に振りほどこうと絡まっている足をバタつかせる。
けど、行かせたくないのか荊はビクともせずに、夜神の足に絡みついたままでいた。
夜神は遠くにいるルードヴィッヒの鎖で傷付いた庵に手を伸ばす。
ジッと、する事など出来なくてけど、動けないから自由な手を伸ばす。そこに意味があるのかは分からないがそれでもだ。
「海斗っ!!」
その声に反応したのか鎖が地面から数本生まれ出て、腕から血を流す庵に目掛けて、風を切りながら穿とうと鎖が伸びていった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
庵VSルードヴィッヒの対決です。
来るな!!と、言われているのに来てしまった庵青年には後ほど軍法会議を・・・・・と、言いたいですが、色々あって、この戦闘真っ只中の場所に残っていたと思います。
何を思って残っていたんでしょうね?それは次回明らかになるのでしょうか?
あなたはここに居てはいけない!
いくら腕章を付けていようと、いくら「高位クラス武器」を所持して金ラインだろうと、あなたでは負けてしまう。
夜神は声のした方を驚愕した表情で見ながら、頭を振ってしまった。
目の前の光景を否定するように。これから起こるであろう、胸を抉り取られるような事を否定するように。
「うそだろ・・・・・逃げろ、青年っ・・・」
「だめだ・・・・っぅ・・・」
傷付き地面に倒れていた七海や長谷部達は口々に「逃げろ」と叫ぶ。
この場にいる予定ではなかった。伍長で経験があまりにもなさすぎる。
夜神が戦闘を開始したと同じぐらいに、指示された隊員以外は全員退避だった。
庵も最後まで粘っていたが「経験の不足」を示唆されて、納得とはいかないが色々なものを呑み込んだ表情をして、元帥達の話を聞いていた。
その庵が「高位クラス武器」の澌尽灰滅を腰に下げて皇帝・ルードヴィッヒに向かって睨みつけている。
「ダメッ逃げて!逃げてぇぇ!お願いだから・・・・海斗・・・・」
夜神は最大限の声の出る大きさで叫んだ。けど、最後の方は声が小さくなる。
また、私は大切な人を無くさないといけないの?
お願いだから、生きてほしいのに・・・・
いやだ!これ以上悲しい思いはしたくないっ!!
例え、手足をもぎ取られようと、視界を暗闇に落とそうと私はっ!!
体を刺され、満足に使えない手足を振るい立たせ立ち上がろうとした時、ガクッと足が引っ張られる。
「?!っ!」
まさか、鎖がっ!!
悔しい気持ちで巻き付いている足を見た時驚いてしまった
巻き付いていたのはルードヴィッヒが操る鎖ではなく
「蔓?棘がある?荊?」
それは植物の荊だった。
ルードヴィッヒは声のした方を「またか・・・」と少し不満そうな顔をして向ける。
折角、壊滅的状況を作り、心を挫いたばかりなのに、やっと負けを認めて帝國に連れて行こうと心が浮き立っていたのに・・・・・
気怠さを隠すこともなく、視線を向ける。
そして、仁王立ちでルードヴィッヒを睨む庵を見て、一瞬で不満も何もかもなくなった。
あるのは憤り、恨み、怨嗟の感情が一気に生まれる。
その、不思議な感覚に背中がゾワゾワとする。
生まれて初めての事に戸惑う。
この、感覚は感情は一体何なんだ?
ずっと自分の中にあったのに、今までそれは隠されていた
そして、この男を見た時にそれが一気に放出される
まるでパンドラの箱の災いのように放たれる
ずっと昔に味わった経験が、ふっとした時、思い出したような
けど、自分の事のようで自分の事ではない
記憶なのか、それとも血なのか分からないが覚えている
この男は私の・・・・・・
「君は何処かで会ったことはあるかい?」
そんな事はないのに一応聞いてみる。けど、返ってきた答えは自分の想像通りだった。
「初めてだ」
緊張か、恐怖からか声色はすこし強張っていたが、それでも断言する声にルードヴィッヒは笑った。
・・・・・血が訴えている・・・・この男はっ!
「私も初めてだよ。はじめまして?そして、さようならっ!」
最後の言葉と共にルードヴィッヒは剣を引き抜きながら庵に向かって走り出す。
「消えろっ!!」
庵もルードヴィッヒが走ってくるのを確認しながら、同じように刀を引き抜く。
「抜刀!!澌尽灰滅っ!!香気を纏えっ!!」
ルードヴィッヒは両手で剣を握り上にあげると、そのまままっすぐ、庵の頭から真っ二つになるように振り下ろす。
庵も、避けずに刀で受け止める。
ガチ、ガチャと金属音を交差した剣と刀から出しながら、二人は互いの顔を間近で見合わせる。
互いに初めて顔を見合わせるのに、ずっと昔から知っているような、けど、そこにあるのは恨み怒りといった「負の感情」が強い。
庵も最初は、人類の敵、大切な人に恐怖を与え泣かせ続けた諸悪の根源、消さなくてはいけない存在と憤ってたが、間近でその瞳を見て、違和感を感じてしまった。
それはルードヴィッヒも同じだった。餌にしか思っていない人間共が歯向かってくるのは正直不満しかなかった。
大人しく我々に従えばいいのに・・・・・
そして、目の前の餌も歯向かい、武器を構える。
けど、この餌は何かが違う。
言葉では言い表せない、何かが私の感情を支配する。
憎い、悔しい、消えてくれ・・・
そんな今まで味わったことのない感情が渦巻く
━━━━違和感・・・・・
けど、その違和感の正体に思い当たるものがある。ずっと前から、生まれたときから持っている「血の呪い」これしか思い当たらない。
「君はどうして私に剣を向けるのかな?」
金の瞳が挑発する
黒の瞳は真っ直ぐに受け止める
「お前が凪さんにとって恐怖の存在だからだっ!!そして、人類の敵だからだっ!!」
一旦、互いに離れてそれぞれ構える。
一秒、二秒と時間が過ぎていく。二人はそのまま静止していた。
けど、先に動いたのはルードヴィッヒだった。
剣は動いていない。動いたのは地面に埋もれた鎖だった。
「っう・・・・・・」
何とか鎖を躱したが、腕を掠めてしまい血が地面に落ちていく。
「っぅ・・・くそっ!!」
「ぃゃ・・・・・やだ、お願い・・・・逃げてよ・・・・逃げて・・・・お願いだからぁ・・・・・」
もう、見たくない・・・・・・・
自分が好きになった人はみんな死んでしまった・・・・
あの皇帝の操る鎖がお母さんを、先生を殺した・・・・
庵君も失うの?嫌だ!嫌だ!お願いだから、私から奪わないで!もう、嫌だよ・・・・・
失くしたくないから動きたいのに、足に絡みついた荊が邪魔でっ!!
お願いだから解いて!!
お願いだから私を行かせて!!
「離してっ!!お願いだから!!」
棘がある荊なのに、足首に巻き付いている部分は棘がなく不思議な荊を夜神は、必死に振りほどこうと絡まっている足をバタつかせる。
けど、行かせたくないのか荊はビクともせずに、夜神の足に絡みついたままでいた。
夜神は遠くにいるルードヴィッヒの鎖で傷付いた庵に手を伸ばす。
ジッと、する事など出来なくてけど、動けないから自由な手を伸ばす。そこに意味があるのかは分からないがそれでもだ。
「海斗っ!!」
その声に反応したのか鎖が地面から数本生まれ出て、腕から血を流す庵に目掛けて、風を切りながら穿とうと鎖が伸びていった。
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庵VSルードヴィッヒの対決です。
来るな!!と、言われているのに来てしまった庵青年には後ほど軍法会議を・・・・・と、言いたいですが、色々あって、この戦闘真っ只中の場所に残っていたと思います。
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