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「高位クラス武器」を所持している部隊と、共に行動する夜神と庵は、「部隊の底上げ」に徹底的に徹した。
庵はただ見ているだけだったが、部隊の様々な特徴や連携、そして人間関係を見ていった。
そしてその中の共通を見つけた。それは部隊の皆は、信頼し背中を任せられるほどの仲だと言うことが。
はたして、自分が何処かの部隊に配属された場合、ここまでの信頼関係を築く事が出来るのか、不安になっていったのもこの行動を共にして思った事だった。
そんな事を思いながら数日が過ぎ、とうとう学生にとっては、自分の配属が決まる大事な日を迎えることになった。
それは何処の部屋も、団部隊も固唾を呑むほど、今か今かと結果を待っている。そしてそれを一番緊張した面持ちで待っているのは学生達だろう。
そんな学生の一人、庵海斗は朝からソワソワして、テレビのモニターを見たり、時計を見たりとせわしなく視線を動かしている。
すでに喉はカラカラで、二本目のペットボトルの水を飲み切ろうかとしている。
「庵青年、少しは落ち着け。自信あるんだろう?だったら堂々としとけよ」
「七海中佐ぁ~~そんな事を言われても駄目です。中佐程の心臓に毛の生えた心臓を持ってないので無理です」
落ち着かない庵を見かねて声をかけたが、褒めているのか、貶しているのか分からない事を言われ、七海はため息をしてしまった。
「発表の五分前か・・・・・そろそろモニターを付けておいた方がいいかもな」
相澤はモニターの電源を入れる。モニターは「後期テスト順位」と映し出されている。
それを見た庵は益々緊張してしまう。頭の中は間違ったであろう問題が、矢のように飛び交う。それは一・二本の騒ぎではない。
夜神はその様子を見兼ねて紅茶を淹れていた。少しだけぬるめで、蜂蜜とミルクの入った優しい紅茶だ。
「庵君、これ飲んで落ち着いて」
目の前に置く。カップからは湯気と共に、蜂蜜の甘い匂いがする。
「ありがとうございます、夜神大佐・・・・甘くて美味しいですね」
「糖分補給は大事だからね。温かいからポカポカしてきて落ち着いてくるかな?庵君なら大丈夫だからね?」
いつもの微笑みを浮かべて、白い瞳で庵を見る目は「大丈夫」と語り掛けているようにも見える。
一口飲んでため息をする。飲みやすい温度でゴクゴク飲めるが、甘さが過剰に飲むのをストップさせる。
そのおかげで冷たいものばかり飲んでいた胃に、じんわりと熱が広がり、少しだけソワソワしていた気持ちが落ち着いてくる。
その様子を見ていた夜神も少しだけ安心する。この時ばかりは誰もが落ち着かないのは重々承知している。それは周りの人間も同じなのだ。
皆、落ち着いて見えるが、内心はドキドキしている。
もちろん、それは夜神も同じだった。
「モニターが変わったわ。そろそろね」
式部がモニターを見て声を出す。それを聞いたり周りの人間は一瞬で緊張する。庵に至っては神に祈る格好をしてモニターを見る。
テスト結果の最下位から順に発表されていく。
「相変わらず最下位からかよ。教育部もいい趣味してるよな~」
七海中佐が「ケッ」と言いながら、モニターを睨む。
どんどん順位が上がっていくが、庵の名前は一向に出てこない。五位、四位となっていき、二位でも出てこないのを見ていて、希望とそして絶望が生まれた。
もしかしたら点数が貰えず落第?えっ?まさか?
まるで走馬灯のように落第の文字が駆け巡る。そんな事を考えていたら、モニターが変わり一位の名前が発表された。
第一位 第一室所属 庵 海斗
その文字を目で追った瞬間、頭が真っ白になって一瞬「庵 海斗」が誰なのか分からなくなった。けど、「庵君、庵海斗君」と呼ぶ優しくて、その人に呼ばれるだけで、愛しさが溢れてくる声が、名前を呼ぶのを聞いて自分が「庵 海斗」だと理解した。
「うわぁ!!俺の名前だった!えっ?嘘?えっ?本当?えぇぇ!」
「青年落ち着け。間違いなく庵青年の名前だ。おめでとう一位だよ。マジ頑張ったな!本当スゲーよ!」
七海が庵の頭を「これでもかっっ!!」とグシャグシャに掻き回す。いつもなら嫌がる庵も今は好きにさせている。
と、言うよりは抵抗できない程、呆然としているのが正しいのかもしれない。
「凄いじゃないの!庵学生!十位から一位になるなんて。それも四年生の最後のテストなんて難関よ?凄いわ!本当に頑張ったのね!」
式部は軽く拍手をしながら庵の頑張りを褒める。
大学生最後のテストは時間も範囲も膨大なのだ。それを乗り越えて一位になるのは、それだけで凄い事になる。
「庵学生の頑張りを身近で見ていたが、本当に頑張っていたから、その努力が報われたんだね。おめでとう」
いつもは神経質な顔もこのときは、何処に行ったのか笑顔で話す相澤を見て、庵は「誰ですか!?」となったのは、胸に閉まっとこうと思ったほど、表情の変わったわ相澤が頑張りを褒めていた。
「頑張ったな、庵学生。本当におめでとう」
相変わらずの無表情で、短い賛辞を述べる長谷部室長だったが、その眼差しは優しさに溢れていた。それを分かっているのは庵以外の部屋の人間だけで、庵から見たら、いつもと変わらない表情にしか見えなかった。
夜神は沢山の賛辞を受けて、喜んでいる庵を見て、少しだけ肩の荷が下りたような気がした。
「テストで一位を取る」これが最終目標だったが、その先のことを見据えての目標だった。
上位成績者には優先的に「高位クラス武器」の所持者になれる可能性があるのだ。
もちろん、武器が意思を持っているから、必ずなれるとは限らないが、それでも優先的にその順がやって来る。
庵には何故か分からないがな、武器が必ず選ぶと「感」が告げている。それは曖昧なものではなく、しっかりとしたものだ。
夜神はそれを信じて庵と、勉強に稽古と励んできた。そしてそれが今、報われたと思ってしまった。
「庵君、おめでとう。庵君が頑張った成果が成績に反映されたと思うよ。本当に頑張ったね」
「・・・・・ありがとうございます。夜神大佐が教育係になってくれたおかげだと思います。本当にありがとうございます。皆さんも色々とありがとうございます。おかげで一位を取ることが出来ました!」
庵は夜神に軽く礼をして、そして周りを見渡して敬礼して、お礼を述べる。さっきまで魂が抜けていたのが嘘のように、しっかりとしているのに七海は笑って、更に頭をグシャグシャにした。
「やめて下さいよ!グシャグシャじゃないですか!」
「うっせぇ━━!さっきまでぼ━━━っとしていたくせに!」
「だからって、ここまでする必要ありますか?」
七海から離れてグシャグシャの頭を整える庵に、夜神はいつもと変わらない微笑みを向けた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
庵青年おめでとうございます。頑張ったかいあって一位なれました。なので、一番のメインイベントをこれから頑張らないといけませんね!
テストで頑張って、イベントで頑張ってと、忙しいですがファイト!です。
庵はただ見ているだけだったが、部隊の様々な特徴や連携、そして人間関係を見ていった。
そしてその中の共通を見つけた。それは部隊の皆は、信頼し背中を任せられるほどの仲だと言うことが。
はたして、自分が何処かの部隊に配属された場合、ここまでの信頼関係を築く事が出来るのか、不安になっていったのもこの行動を共にして思った事だった。
そんな事を思いながら数日が過ぎ、とうとう学生にとっては、自分の配属が決まる大事な日を迎えることになった。
それは何処の部屋も、団部隊も固唾を呑むほど、今か今かと結果を待っている。そしてそれを一番緊張した面持ちで待っているのは学生達だろう。
そんな学生の一人、庵海斗は朝からソワソワして、テレビのモニターを見たり、時計を見たりとせわしなく視線を動かしている。
すでに喉はカラカラで、二本目のペットボトルの水を飲み切ろうかとしている。
「庵青年、少しは落ち着け。自信あるんだろう?だったら堂々としとけよ」
「七海中佐ぁ~~そんな事を言われても駄目です。中佐程の心臓に毛の生えた心臓を持ってないので無理です」
落ち着かない庵を見かねて声をかけたが、褒めているのか、貶しているのか分からない事を言われ、七海はため息をしてしまった。
「発表の五分前か・・・・・そろそろモニターを付けておいた方がいいかもな」
相澤はモニターの電源を入れる。モニターは「後期テスト順位」と映し出されている。
それを見た庵は益々緊張してしまう。頭の中は間違ったであろう問題が、矢のように飛び交う。それは一・二本の騒ぎではない。
夜神はその様子を見兼ねて紅茶を淹れていた。少しだけぬるめで、蜂蜜とミルクの入った優しい紅茶だ。
「庵君、これ飲んで落ち着いて」
目の前に置く。カップからは湯気と共に、蜂蜜の甘い匂いがする。
「ありがとうございます、夜神大佐・・・・甘くて美味しいですね」
「糖分補給は大事だからね。温かいからポカポカしてきて落ち着いてくるかな?庵君なら大丈夫だからね?」
いつもの微笑みを浮かべて、白い瞳で庵を見る目は「大丈夫」と語り掛けているようにも見える。
一口飲んでため息をする。飲みやすい温度でゴクゴク飲めるが、甘さが過剰に飲むのをストップさせる。
そのおかげで冷たいものばかり飲んでいた胃に、じんわりと熱が広がり、少しだけソワソワしていた気持ちが落ち着いてくる。
その様子を見ていた夜神も少しだけ安心する。この時ばかりは誰もが落ち着かないのは重々承知している。それは周りの人間も同じなのだ。
皆、落ち着いて見えるが、内心はドキドキしている。
もちろん、それは夜神も同じだった。
「モニターが変わったわ。そろそろね」
式部がモニターを見て声を出す。それを聞いたり周りの人間は一瞬で緊張する。庵に至っては神に祈る格好をしてモニターを見る。
テスト結果の最下位から順に発表されていく。
「相変わらず最下位からかよ。教育部もいい趣味してるよな~」
七海中佐が「ケッ」と言いながら、モニターを睨む。
どんどん順位が上がっていくが、庵の名前は一向に出てこない。五位、四位となっていき、二位でも出てこないのを見ていて、希望とそして絶望が生まれた。
もしかしたら点数が貰えず落第?えっ?まさか?
まるで走馬灯のように落第の文字が駆け巡る。そんな事を考えていたら、モニターが変わり一位の名前が発表された。
第一位 第一室所属 庵 海斗
その文字を目で追った瞬間、頭が真っ白になって一瞬「庵 海斗」が誰なのか分からなくなった。けど、「庵君、庵海斗君」と呼ぶ優しくて、その人に呼ばれるだけで、愛しさが溢れてくる声が、名前を呼ぶのを聞いて自分が「庵 海斗」だと理解した。
「うわぁ!!俺の名前だった!えっ?嘘?えっ?本当?えぇぇ!」
「青年落ち着け。間違いなく庵青年の名前だ。おめでとう一位だよ。マジ頑張ったな!本当スゲーよ!」
七海が庵の頭を「これでもかっっ!!」とグシャグシャに掻き回す。いつもなら嫌がる庵も今は好きにさせている。
と、言うよりは抵抗できない程、呆然としているのが正しいのかもしれない。
「凄いじゃないの!庵学生!十位から一位になるなんて。それも四年生の最後のテストなんて難関よ?凄いわ!本当に頑張ったのね!」
式部は軽く拍手をしながら庵の頑張りを褒める。
大学生最後のテストは時間も範囲も膨大なのだ。それを乗り越えて一位になるのは、それだけで凄い事になる。
「庵学生の頑張りを身近で見ていたが、本当に頑張っていたから、その努力が報われたんだね。おめでとう」
いつもは神経質な顔もこのときは、何処に行ったのか笑顔で話す相澤を見て、庵は「誰ですか!?」となったのは、胸に閉まっとこうと思ったほど、表情の変わったわ相澤が頑張りを褒めていた。
「頑張ったな、庵学生。本当におめでとう」
相変わらずの無表情で、短い賛辞を述べる長谷部室長だったが、その眼差しは優しさに溢れていた。それを分かっているのは庵以外の部屋の人間だけで、庵から見たら、いつもと変わらない表情にしか見えなかった。
夜神は沢山の賛辞を受けて、喜んでいる庵を見て、少しだけ肩の荷が下りたような気がした。
「テストで一位を取る」これが最終目標だったが、その先のことを見据えての目標だった。
上位成績者には優先的に「高位クラス武器」の所持者になれる可能性があるのだ。
もちろん、武器が意思を持っているから、必ずなれるとは限らないが、それでも優先的にその順がやって来る。
庵には何故か分からないがな、武器が必ず選ぶと「感」が告げている。それは曖昧なものではなく、しっかりとしたものだ。
夜神はそれを信じて庵と、勉強に稽古と励んできた。そしてそれが今、報われたと思ってしまった。
「庵君、おめでとう。庵君が頑張った成果が成績に反映されたと思うよ。本当に頑張ったね」
「・・・・・ありがとうございます。夜神大佐が教育係になってくれたおかげだと思います。本当にありがとうございます。皆さんも色々とありがとうございます。おかげで一位を取ることが出来ました!」
庵は夜神に軽く礼をして、そして周りを見渡して敬礼して、お礼を述べる。さっきまで魂が抜けていたのが嘘のように、しっかりとしているのに七海は笑って、更に頭をグシャグシャにした。
「やめて下さいよ!グシャグシャじゃないですか!」
「うっせぇ━━!さっきまでぼ━━━っとしていたくせに!」
「だからって、ここまでする必要ありますか?」
七海から離れてグシャグシャの頭を整える庵に、夜神はいつもと変わらない微笑みを向けた。
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庵青年おめでとうございます。頑張ったかいあって一位なれました。なので、一番のメインイベントをこれから頑張らないといけませんね!
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