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後方からの遠距離攻撃で相澤と藤堂は飛行型のCクラスを討伐していく。
「「構え!!」」
「韋駄天」
「金の弓箭」
相澤のライフルも藤堂の弓も、消耗品となる弾丸や矢が必要ないのがこのSクラスの武器の特徴だろう。
己の気力が続く限り、弾丸も矢も生み出すことが出来る。
飛行型のCクラスに、それぞれの攻撃が命中する。鷹の頭を撃ち抜いて頭ごと木っ端微塵にする。
「命中、確認。これより庵学生の援護をする」
「射!私は式部中尉の援護に入る」
インカムを使いそれぞれ報告して、次の行動を伝える。
学生の時から遠距離援護をしていた二人は、阿吽の呼吸でそれぞれの役割を果たす。そして次の攻撃準備に入る。
互いが次の一手を理解しているがゆえの流れるような動きは信用している証だろう。そして次の攻撃準備が整った二人は、それぞれの攻撃体勢をとったのだった。
「抜刀・環」
式部は腰の小ぶりな鞄から輪っかの投擲武器、円月輪を両手にマジシャンのトランプのように広げてCクラスの鷹に投げていく。
的が大きいのと、飛行型は素早い討伐が求められるため、自分が持てる最大限の数を投げていく。
円月輪は翼や喉笛など致命的な場所を次々に攻撃するが、どれも致命傷にはならない。自分の手に帰ってきた円月輪をもう一度構えると、遠くから風を切る音が聞こえてくる。
藤堂が放った矢が鷹の背中から腹にかけて突き刺さる。飛んでいた鷹はそのまま地面に落ちていくのを、式部は「今だっ!」と頭で考えるより先には体が動く。
両手の円月輪を先程傷つけた喉笛に集中的に攻撃する。首を落とすことは出来なかったが、絶命させることは出来た。
「討伐完了!藤堂少佐ありがとう」
式部はインカムに向かって礼を述べる。そして、庵をサポートするために庵の所に走っていった。
長谷部はDクラスのムカデと向き合っていた。その近くではBクラスと鳥籠が見える。気合を入れるため手甲の拳同士を打ち付けると叫ぶ
「構え!源氏八領・八龍」
長谷部は武器の力を借りて一気に跳躍して、威嚇している体よりも上に飛び、頭から腹にかけてかかと落としで裂いていく。
鉄靴が硬い頭に食い込むと、体重と重力をコントロールして食い込んだ鉄靴に集中させると、一気に腹まで到達させる。メキメキと嫌な音をたてて裂かれた胴体が、地面に倒れた音だけで確認すると、そのまま狼狽えているBクラスに走っていく。
「うわぁぁぁ!嫌だぁ━━!なんで俺だけ!!恨んでやる!」
七海が予測していた、「使い捨ての駒」。まさにそれが当てはまるような言葉と態度だった。
長谷部は、走りながら右手は拳を作り、近づくと同時に心臓目掛けて拳を叩き込む。拳はBクラスの体を貫通して絶命させる。
「こちら長谷部。Dクラス、Bクラス討伐終了!」
長谷部は七海の方を見る。七海も討伐が終わり、夜神が閉じ込められている鳥籠に槍を振り下ろそうとしている所だった。
庵は地面を這いずっているムカデの頭に向かって、模擬武器の刀を振り下ろす。だが、当たった場所が悪かったのか弾かれてしまう。
「くっ・・・・」
「庵学生!!下がって!相澤少佐の攻撃が来る!」
「はいっ!」
庵は走ってくる式部中尉の言葉を聞いて、後方に飛んで下がる。すると遠くの方で銃声が聞こえてくると、長い胴体に命中したのか突然半分に分断された。
庵は蠢いているムカデの頭に刀を食い込ませると、体の全てを使って唐竹割りにする。
途中で式部の投げた円月輪が更に胴体を短くしていたので、見事に頭から真っ二つにすることが出来た。
「こちら式部。庵学生、Dクラス討伐確認!」
体を酷使したのか、肩で息をして報告もままならない庵の代わりに、式部が報告する。
「すぐに息を整えておいて。夜神中佐が救出されたら、すぐにここを離脱するから」
「・・・・了解、です・・・・」
庵は返事を何とかすると、息を整えていく。これ以上足を引っ張らないために。
「抜刀・雷神」
槍を頭上まで持ち上げて構える。大上段構えで自分が対峙するDクラスに走っていく。
七海は長谷部がDクラスに踵落としで、腹まで裂いているのチラ見して、自分を鼓舞する。
大上段構えから片手だけで槍を持つとムカデの頭目掛けて突き刺す。
Sクラスの武器の威力の為か頭が吹き飛ぶのを確認すると、地面に突き刺さった槍を引き抜いて、胴体を次々に切断していく。それがすむと駆け足で鳥籠がある所まで走っていく。
「夜神!!生きってるか!今悪趣味な所から出してやるからな!」
聞こえていないと分かっているが、声をかけずにいられなかった。七海は鳥籠の側面、夜神の横の空いている空間に、槍を振り下ろして自分が入れるスペースを作る。
槍を地面に突き刺して、そのスペースに潜り込むと、項垂れて眠っている夜神の両手首の拘束しているベルトを、足首に隠しているナイフを取り出して切っていく。
手首だけで体を支えていた夜神はそのまま地面に倒れ込んだ。
倒れ込んだ体を引きずりながら鳥籠から出して地面に寝かせて、七海は地面に突き刺していた槍をベルトに固定させると、片膝を立てて夜神を抱きかかえ、拉致されてから二週間ぶりの顔を見る。
隈が酷く、ほっそりしていた頬は少し痩せこけていた。そして泣いていたのだろう。幾筋も涙の跡が残っている。
そして、体に視線を移すと息が詰まってしまった。
首や鎖骨周り、スリップから覗く両足は鬱血の跡があったがその数が尋常ないほどだった。異常、執着そんな言葉が合うほどに付けられていたのだ。
男女の交わりで付けることぐらいあるが、それを遥かに凌駕するものに七海は気味悪さを感じた。
そして噛み跡の多さだ。首周りが特に酷いが、両足にもまばらだが跡が見れる。きっと服に隠されている場所も同じように噛み跡や鬱血の跡が酷く残されているだろう。
そして気になったのが、残痕だ。何かに縛れれていたのだろう。足や手首にその後が残っている。七海は夜神に付いた残痕を見て、数年前に起こった事件を思い出す。
あの時も夜神は同じような跡を残していた。それが重なって見えて七海は軽い焦りを覚える。
━━━━━まさか、夜神をここまで追い込んだ人物は?
七海は軽く頭を振ると、夜神を横抱きにして立ち上がる。
「なんちゅー格好させらせているんだよ。オメーには似合わねーよ・・・・・・頑張ったな。もうすぐ帰れるからな」
七海は寝ている夜神に声をかけて、走り出す。
「こちら七海!夜神の救出活動終了した。これよりこの場から離脱する。各自、ヘリの場所まで移動を開始せよ。なお、Sクラスが現在ゲートに向かっているが、何らかのアクションが有るかもしれない。警戒を怠るな!」
「「「了解!!」」」
七海は全員に夜神の救出と離脱を走りながら指示していく。自分の後を追うように、救出作戦に参加していたみんながついて来る。
「司令部!!こちら七海!ヘリで移動中のSクラスはどうなっている?」
『こちら、司令部。ヘリはゲート付近に近づいています。熱反応もありません。このままゲートをくぐると思われます。念の為、ミサイル等の迎撃体制は継続中です』
「了解!くぐるまでは維持で頼む。こちらも夜神の救出は成功した。このまま戦線離脱する!」
『了解しました。こちらは衛生部の人間等を配置しておきます』
「あぁ、頼む。かなり衰弱している」
『分かりました。無事の帰還を・・・』
司令部との通信を終わらして、七海は自分達が乗ってきたヘリまで走っていく。少しでも早く無事を知らせたい思いと、夜神を安全な場所に連れていきたい思いが交差して、七海の足を早めていった。
「「構え!!」」
「韋駄天」
「金の弓箭」
相澤のライフルも藤堂の弓も、消耗品となる弾丸や矢が必要ないのがこのSクラスの武器の特徴だろう。
己の気力が続く限り、弾丸も矢も生み出すことが出来る。
飛行型のCクラスに、それぞれの攻撃が命中する。鷹の頭を撃ち抜いて頭ごと木っ端微塵にする。
「命中、確認。これより庵学生の援護をする」
「射!私は式部中尉の援護に入る」
インカムを使いそれぞれ報告して、次の行動を伝える。
学生の時から遠距離援護をしていた二人は、阿吽の呼吸でそれぞれの役割を果たす。そして次の攻撃準備に入る。
互いが次の一手を理解しているがゆえの流れるような動きは信用している証だろう。そして次の攻撃準備が整った二人は、それぞれの攻撃体勢をとったのだった。
「抜刀・環」
式部は腰の小ぶりな鞄から輪っかの投擲武器、円月輪を両手にマジシャンのトランプのように広げてCクラスの鷹に投げていく。
的が大きいのと、飛行型は素早い討伐が求められるため、自分が持てる最大限の数を投げていく。
円月輪は翼や喉笛など致命的な場所を次々に攻撃するが、どれも致命傷にはならない。自分の手に帰ってきた円月輪をもう一度構えると、遠くから風を切る音が聞こえてくる。
藤堂が放った矢が鷹の背中から腹にかけて突き刺さる。飛んでいた鷹はそのまま地面に落ちていくのを、式部は「今だっ!」と頭で考えるより先には体が動く。
両手の円月輪を先程傷つけた喉笛に集中的に攻撃する。首を落とすことは出来なかったが、絶命させることは出来た。
「討伐完了!藤堂少佐ありがとう」
式部はインカムに向かって礼を述べる。そして、庵をサポートするために庵の所に走っていった。
長谷部はDクラスのムカデと向き合っていた。その近くではBクラスと鳥籠が見える。気合を入れるため手甲の拳同士を打ち付けると叫ぶ
「構え!源氏八領・八龍」
長谷部は武器の力を借りて一気に跳躍して、威嚇している体よりも上に飛び、頭から腹にかけてかかと落としで裂いていく。
鉄靴が硬い頭に食い込むと、体重と重力をコントロールして食い込んだ鉄靴に集中させると、一気に腹まで到達させる。メキメキと嫌な音をたてて裂かれた胴体が、地面に倒れた音だけで確認すると、そのまま狼狽えているBクラスに走っていく。
「うわぁぁぁ!嫌だぁ━━!なんで俺だけ!!恨んでやる!」
七海が予測していた、「使い捨ての駒」。まさにそれが当てはまるような言葉と態度だった。
長谷部は、走りながら右手は拳を作り、近づくと同時に心臓目掛けて拳を叩き込む。拳はBクラスの体を貫通して絶命させる。
「こちら長谷部。Dクラス、Bクラス討伐終了!」
長谷部は七海の方を見る。七海も討伐が終わり、夜神が閉じ込められている鳥籠に槍を振り下ろそうとしている所だった。
庵は地面を這いずっているムカデの頭に向かって、模擬武器の刀を振り下ろす。だが、当たった場所が悪かったのか弾かれてしまう。
「くっ・・・・」
「庵学生!!下がって!相澤少佐の攻撃が来る!」
「はいっ!」
庵は走ってくる式部中尉の言葉を聞いて、後方に飛んで下がる。すると遠くの方で銃声が聞こえてくると、長い胴体に命中したのか突然半分に分断された。
庵は蠢いているムカデの頭に刀を食い込ませると、体の全てを使って唐竹割りにする。
途中で式部の投げた円月輪が更に胴体を短くしていたので、見事に頭から真っ二つにすることが出来た。
「こちら式部。庵学生、Dクラス討伐確認!」
体を酷使したのか、肩で息をして報告もままならない庵の代わりに、式部が報告する。
「すぐに息を整えておいて。夜神中佐が救出されたら、すぐにここを離脱するから」
「・・・・了解、です・・・・」
庵は返事を何とかすると、息を整えていく。これ以上足を引っ張らないために。
「抜刀・雷神」
槍を頭上まで持ち上げて構える。大上段構えで自分が対峙するDクラスに走っていく。
七海は長谷部がDクラスに踵落としで、腹まで裂いているのチラ見して、自分を鼓舞する。
大上段構えから片手だけで槍を持つとムカデの頭目掛けて突き刺す。
Sクラスの武器の威力の為か頭が吹き飛ぶのを確認すると、地面に突き刺さった槍を引き抜いて、胴体を次々に切断していく。それがすむと駆け足で鳥籠がある所まで走っていく。
「夜神!!生きってるか!今悪趣味な所から出してやるからな!」
聞こえていないと分かっているが、声をかけずにいられなかった。七海は鳥籠の側面、夜神の横の空いている空間に、槍を振り下ろして自分が入れるスペースを作る。
槍を地面に突き刺して、そのスペースに潜り込むと、項垂れて眠っている夜神の両手首の拘束しているベルトを、足首に隠しているナイフを取り出して切っていく。
手首だけで体を支えていた夜神はそのまま地面に倒れ込んだ。
倒れ込んだ体を引きずりながら鳥籠から出して地面に寝かせて、七海は地面に突き刺していた槍をベルトに固定させると、片膝を立てて夜神を抱きかかえ、拉致されてから二週間ぶりの顔を見る。
隈が酷く、ほっそりしていた頬は少し痩せこけていた。そして泣いていたのだろう。幾筋も涙の跡が残っている。
そして、体に視線を移すと息が詰まってしまった。
首や鎖骨周り、スリップから覗く両足は鬱血の跡があったがその数が尋常ないほどだった。異常、執着そんな言葉が合うほどに付けられていたのだ。
男女の交わりで付けることぐらいあるが、それを遥かに凌駕するものに七海は気味悪さを感じた。
そして噛み跡の多さだ。首周りが特に酷いが、両足にもまばらだが跡が見れる。きっと服に隠されている場所も同じように噛み跡や鬱血の跡が酷く残されているだろう。
そして気になったのが、残痕だ。何かに縛れれていたのだろう。足や手首にその後が残っている。七海は夜神に付いた残痕を見て、数年前に起こった事件を思い出す。
あの時も夜神は同じような跡を残していた。それが重なって見えて七海は軽い焦りを覚える。
━━━━━まさか、夜神をここまで追い込んだ人物は?
七海は軽く頭を振ると、夜神を横抱きにして立ち上がる。
「なんちゅー格好させらせているんだよ。オメーには似合わねーよ・・・・・・頑張ったな。もうすぐ帰れるからな」
七海は寝ている夜神に声をかけて、走り出す。
「こちら七海!夜神の救出活動終了した。これよりこの場から離脱する。各自、ヘリの場所まで移動を開始せよ。なお、Sクラスが現在ゲートに向かっているが、何らかのアクションが有るかもしれない。警戒を怠るな!」
「「「了解!!」」」
七海は全員に夜神の救出と離脱を走りながら指示していく。自分の後を追うように、救出作戦に参加していたみんながついて来る。
「司令部!!こちら七海!ヘリで移動中のSクラスはどうなっている?」
『こちら、司令部。ヘリはゲート付近に近づいています。熱反応もありません。このままゲートをくぐると思われます。念の為、ミサイル等の迎撃体制は継続中です』
「了解!くぐるまでは維持で頼む。こちらも夜神の救出は成功した。このまま戦線離脱する!」
『了解しました。こちらは衛生部の人間等を配置しておきます』
「あぁ、頼む。かなり衰弱している」
『分かりました。無事の帰還を・・・』
司令部との通信を終わらして、七海は自分達が乗ってきたヘリまで走っていく。少しでも早く無事を知らせたい思いと、夜神を安全な場所に連れていきたい思いが交差して、七海の足を早めていった。
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