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前編

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私、普通のOL高橋 里沙たかはし りさの華金の楽しみは、パックしながらチューハイ飲んで、バラエティー番組を見る事。
そんな、まったりとした時間を楽しんでいると、突然の電話

「マッドサイエンティスト・結城ゆうき
スマホのディスプレイにはそんな文字と共に、振動しながら着信を伝える。

「はい、はい~・・・・・・どうしたの?」
『里沙~久しぶり!元気だった?』
「元気だよ~貴大たかひろさんは元気?お仕事忙しいの?大丈夫?」
『元気だよ。仕事は・・・・・忙しいかな?それよりも聞いてよ!!』
「うん?!何々?」
久しぶりに聞いた彼の声は少しだけお疲れ気味だった。

結城 貴大ゆうき たかひろさんは製薬会社の研究員で色々と薬を作っている凄い人。そして私の彼氏。
とっ~~~ても優しくて素敵な人だけど、一つだけ困った趣味?がある。
それは「里沙の為」と言って、分からない不思議な物を発明する事。

過去の作品は「自動缶切り機」(何処かで見たことあるし、ほとんどの缶詰はプルタブだし、何処で必要なの?)や「両手が自由になる被り傘」(傘を被るとかないし、恥ずかしすぎる)など愛は感じるが、必要性は感じない物ばかりを生み出す、自称・マッドサイエンティストなのだ。

そんな自称・マッドサイエンティストの彼が、物凄く興奮して電話をしてくるのは一つしかない。
また、物凄い(本人談)発明をしたのだろう。

『私はトンデモナイ物を生み出してしまった!!是非、里沙の感想が聞きたいんだ!!明日来れるかな?』
はい、きた━━!!
生み出したのね・・・・。また、不思議な物を。けど、ちょっとだけ気になる。

「そうなんだぁ~。うん、明日は大丈夫だよ?それよりご飯ちゃんと食べてる?」
テンション高いけど、少しだけ声に覇気が無い感じがする。コレはまた、食事を無視して没頭していたな?

『来れるんだね~。お泊り道具持っておいで。食事?・・・・・えっ~と、食べたよ・・・・多分?』
「多分?カロリーメイトはご飯ではないからね?」
『・・・・・すみません』
あれは、栄養補助食品であって主食ではない。「はぁ~」とため息をする。それでちゃんと生きているのが不思議だわ。

「食べたい物とかある?明日、作るよ?」
『やったー!!牛丼食べたいです。里沙の手作り牛丼!』
「分かった。でも本当にどんぶり好きだね。なら、お昼前にラボ(自宅)行くから、ご飯食べてから大発明を見てもいい?」
『勿論だよ!!待ってるからね~楽しみにしていてね!!』
本当に嬉しそうな声に私も嬉しくなる。
ま~、趣味がギャンブルやアイドルの追っかけではなく、為の発明なので、何だかくすぐったい気持ちもするし、愛されてるなぁ~と自惚れてしまうのも正直ある。

「はい、はい。それじゃ、おやすみね。貴大さん」
『うん。おやすみ里沙』
互に「おやすみ」の挨拶をして電話きる。

牛丼かぁ~。お味噌汁付けたい。たしか・・・・
思い立ったが吉日。すくっと立ち上がり、まずはパックを外してスキンケアをちゃんとする。
これ大事!ものすご~く大事!!何故なら明日は彼氏のラボ(自宅)に行くのだから!!

スキンケアが終わると、急いで冷蔵庫の中を確認する。
きんぴらごぼうを作ろう思って買っていた、ごぼうに人参、それと半分の大根。
冷凍庫には刻み揚げに、豚肉の切り落とし、お葱さん!

ふっふふぅ~!これなら「豚汁」が作れる。牛と豚だけどいいよね?丼ものには味噌汁は外せないし!豚汁好きだし!
そうと決まれば今から作りますか!!牛丼の材料は行くときにスーパーに寄ればいいしね。

久しぶりに会えるから楽しみ!!ちょっと浮かれてる・・・
これは発明して電話してくる貴大さんと同じ?
いやいや!!多分違う!!

そんな一人ノリッコミを脳内でしながら、夜に豚汁を作り上げる里沙だった。
✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫✫
彼のラボ(自宅)に着いて、ドキドキしながらインターホンを押す。

ピンポ~ン♪
『・・・・・いらっしゃい。まっていたよ!』
ガチャ!

オートロックが解除されて、自動扉が開く。里沙は久しぶりに会えるからか、ちょっとだけ顔がニヤけている。
広いエントランスを抜けてエレベーターに向かう。

・・・・・製薬会社の研究員はお給料いいのかなぁ?私はこんな所住めないよ~。それだけ貴大さん頑張ってるんだよなぁ~

大理石の床に、上品に生けられた花、何故あるのか分からない革張りのソファセットに、シャンデリア・・・・・
エントランスだけでも広い(下手したら私の部屋より広い!!)そんな悲しい現実を見ながら、エレベーターに乗り込みボタンを押す。

目的の階に着いたら、今度は目的の部屋に行く。黒い扉の前に立つと、軽く深呼吸する。そしてインターホンを押す。

ガチャ。
鍵を解除して扉が開くと、癖っ毛に黒縁眼鏡、白の長袖Tシャツにジーパン姿の彼が笑顔で迎えてくれた。
「いらっしゃい!!重かったでしょう!あがって!あがって!」
さり気なく、エコバッグを持ってくれる姿にキュン!とする。相変わらず優しくて紳士な彼にまた恋をする。
私も大概だな・・・・・・

彼に荷物を持ってもらって、キッチンに向かう。殆ど使われた形跡のないキッチンに、家から持ってきた豚汁入のタッパーを置くと、すぐに米を研ぐため手を洗う。

「ねぇ~お米炊いてたりする?」
「ごめん・・・・炊いてません」
「りょ~かい~。ちょっとだけ時間かかるけどいい?」
「全然!!大丈夫だよ。ありがとう里沙」
絶対お米炊いてないよね~。と思っていたが、念の為確認すると案の定炊いてないとのこと。

料理をしない部屋の主に、三ツ口コンロは贅沢では?と思いながらも鍋二つに水を張ってお湯を沸かす。
その間にお米を研いで炊飯器にセットして、早炊きモードでセットする。

その間、貴大さんは色々と仕事があるようで、リビングのソファに座りパソコン作業をしている。
お休みなのにご苦労さま。御飯食べて一息ついて欲しいな?と思いながら、買ってきた玉ねぎとえのきを切っていく。

一つの鍋には醤油や砂糖を入れて牛丼のつゆを作り、切った玉ねぎとえのきを入れる。
そしてもう一方の鍋は酒だけを入れる。
酒だけ入れた鍋に一口に切った牛肉を入れて、灰汁や臭みを取ると、すぐにザルにお湯ごと入れて湯切りする。
肉の油は半減するが、臭みがなくなるので、私はこのやり方はよくする。

そして湯通しした牛肉をつゆの中に入れて、ひと煮立ちして火を止める。
鍋を急いで洗って、家から持ってきた豚汁を入れて温める。
色々としていると、お米の炊けるいい匂いがしてきて、「ピィ━━ッ」と炊けた合図をしてくれる。

丼にお米、牛丼の具とよそおい仕上げに温泉卵を乗せる。
うん!完璧なビジュアル。温玉は最強のアイテムだよね。
美味しく出来たことに、鼻歌の一つでも奏でたくなるのをグッと堪えて、自分の丼を仕上げて、豚汁を注ぎ、おまけのたくわんも付ける。

牛丼チェーンもびっくりの、完璧な三角形をお盆に作り上げてテーブルに持っていくと、幼子ですか?なんですか?そのキラキラお目々は?と言いたくなる眼差しを向ける貴大さんがいた。

「わぁ~美味しそう。温玉が乗ってるよ」
「昨日、凄い嬉しそうに報告してくれたから、それのお祝い?かな」
「ありがとう!!豚汁まであるよ。嬉しいな」
自分のぶんを運んでいく。その間、貴大さんは水を準備してくれていた。とても助かる!

「食べよう・・・・・頂きます」
「頂きます」
美味しそうに食べてくれる姿を見て、自然と口角が上がる。食べる姿に引き寄せられるように、自分も食べていく。

牛丼にえのき?と思ったが、野菜を食べて欲しくて入れてみたが、間違いではなかった。良かったぁ~

豚汁も問題なく美味しく出来ている。貴大さんも美味しそうに食べてくれてるし、これで少しは栄養ついたかな?

「丼は偉大だよね。スプーン一口で米とおかずが一緒に食べられる・・・・・今回の発明もそんな偉大なものなんだよ!!」
「貴大さんは凄いね。そして丼がいかに好きか分かった。一回で両方たべれるからでしょう?」
「流石だよ!里沙は分かっているね!!」
発明云々うんぬんは置いといて、褒められることは嫌ではない。ちょっとだけ嬉しくなってしまう自分はなんて現金なんだろう。

食べ終わり、後片付けを終わらして少しだけ休憩する。
『ご飯を食べて、少し休憩してから見て欲しい』
貴大さんはそう言ったので、言う通りにする。
一時間ほどテレビを見ていたら、貴大さんが手招きをするので側に行って隣に座ると、ギュと抱きしめてくれる。

「どうしたの?」
「そろそろ見てもらいたくて・・・・・いいかな?」
「いいよ。ラボ(客室)に行けばいいの?」
「うん。行こうか」
先に貴大さんが立ち上がり、私の両手を優しく掴んで、立ち上がらせてくれる。そのまま肩を抱きしめてくれながら客室に向かう。

扉を開くと真っ暗な部屋は窓を板で塞いでいて、陽の光一つ入らない。
そしてピチャ・・・・・ズッズズ・・・・・グチャ・・・・と粘着質な水音が聞こえる。生き物がいるのが分かる雰囲気だが、多分知っている生き物ではない。

怖くなって、足が震えてくる。逃げたいのに貴大さんが、がっしりと肩を掴んでいて逃げられない。
ガタガタと歯の根が震える。
「た、貴大さ、ん?」
「ん?あぁ、今明かりをつけるね。見て欲しい。これが私の世紀の大発明だよ」
「?!ひっ!!」
明るくなった部屋にはいた。あまりにも驚きすぎて私は声を出せなかった。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━さて、どうなる里沙ちゃん?
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