34 / 51
少年期
夏季休暇
しおりを挟む
暑い日差しが照りつけ、季節の移り変わりを実感する。
吹き抜ける風が肌に当たると心地良く、目を細めると隣でクスリと笑みが零れる。
晴天から顔を覗かせる太陽の輝きが、とても眩しく、明るく感じるのはこの時期だ。
此処、王立学園では、今日この日から夏季休暇となる。
学園は生徒のみに開放されるが、利用するのは一部の者だけだ。
選択学科のみ課題が提出されるが、それもすぐに終わらせる必要は無い。
まずは、休暇の始めの日を全力で自堕落に過ごすことから始まるのだ。
学園から公爵家へと続く道のりも、やはり太陽の輝きは強い。
隣でともに歩くカレンも、少しだけ複雑そうな顔をしているのが良い例だろう。
来年にはリリナも入学する予定の学園なので、公爵家では今からその準備をするという。
どうやら、クルスさんはリリナに対して相当デレッデレになっているらしい。
その手紙をクルスさんの秘書から送られた時の、なんともいえない雰囲気は今でも記憶に残っている。
「そうだ、リュウ」
「うん?」
「キスしよ?」
「え?」
唐突に言われたことに、俺は足を止めて固まった。
そんな俺を見て、カレンは楽しそうに微笑んでいる。
ようやく、からかわれたと理解した俺だが、なんだか少しだけ残念な気分だ。
というか、だんだんとカレンと俺との立ち位置が反転しそうで怖い。
何時かは、俺はカレンに尻に敷かれるようになるのだろうか。
カレンの成長は嬉しいのだが、少しだけ微妙な気分だった。
なんだか、少しだけ悔しいので、逆に仕返すのもありかもしれない。
俺は、言われた通りに、カレンの唇に俺の唇を重ねた。
「んッ!!??」
一瞬で離れたのだが、効果は絶大だったようだ。
顔を真っ赤にしたカレンが、俯いたまま完成した。
今、この道にはかなりの人がいて、視線が集まっているのも原因かもしれない。
なんたって、カレンは俺の贔屓目を無しにしても美少女だ。
閑話休題
とりあえず、真っ赤なまま思考が停止しているカレンを放置するのは無理なので、手を繋いで歩き始めた。
未だに俯いたまま片手で頬を触っているが、どうかしたのだろうか。
と、頬で思い出したのだが、俺はこの世界でどんな容姿をしているのだろうか。
ぼんやりとなら分かるのだが、正確な骨格とかが分からない。
とりあえず、気持ち悪い顔では無いのだから大丈夫だ。
屋敷に戻ったら容姿を確認しようと考えたところで、面倒なことになった。
「きゃっ」
「ってぇな!怪我しちまったじゃねぇか!金払え金!!」
そう告げて、意地悪い笑みを浮かべるのは、いかにもチンピラな雰囲気の男だ。
ただ、仲間とかがいる訳でも無く、一人で行動している。
別に、それで逆に襲われるという心配も無いのだろう。
何故なら、この男性のスキルと魔力適正が特殊過ぎる。
魔力適正 突破口
スキル 魔力技能 影の存在
これに、さらに鑑定を掛けて見るとその特殊性が理解出来る。
<突破口>
その時し、最適な行動を理解することが出来る。
<影の存在>
世界に善という存在を保たせるための、悪という存在。
しかし、表では悪を担っているが、裏では一番の善性者な者。
これを表すのは簡単だ。
(これもう、ザ・正義っていう感じの人じゃん)
そんな、優しいだろう男性のために、俺は懐から財布を取り出した。
中には、金貨が山のように積まれている。
なにせ、クルスさんと国王から大量に金が送られてくるのだ。
金貨一枚が、この世界では十万円の価値があるのだから、かなりの金持ちだ。
俺は、そのうちの金貨を四枚取り出した。
「お兄さん。たまには、しっかり休んでください」
「!・・・・・・・・・・ヘッ!なかなか金持ってるじゃねぇか。今回は、これで見逃してやらぁ!」
小声で告げた内容に、男性一度だけ目を見開いた。
そして、元の悪者顔に戻り、周囲を睨みながら去って行った。
俺は、最後まで笑顔だった。
「リュウ、なんで金貨なんて大金を渡したの?」
「秘密」
頬を膨らませて問い詰めて来るカレンからは、先ほどまでの初々しい感じは抜けている。
やはり、こうやって笑顔に笑っているカレンの方が良い。
そう、再確認した俺だった。
ちなみに、先ほどの適正とスキルは複製しないことにした。
どちらも、この世界にとっては重要なものだから、だ。
まあ、正確には必要が無いのが一番の理由だけどな。
そうこうしているうちに、広大な壁に到着した。
何時見ても、大きくて広大なこの壁は、掃除が大変そうだと感じてしまう。
_俺とカレンは、頷き合ってから、その門をくぐった。
吹き抜ける風が肌に当たると心地良く、目を細めると隣でクスリと笑みが零れる。
晴天から顔を覗かせる太陽の輝きが、とても眩しく、明るく感じるのはこの時期だ。
此処、王立学園では、今日この日から夏季休暇となる。
学園は生徒のみに開放されるが、利用するのは一部の者だけだ。
選択学科のみ課題が提出されるが、それもすぐに終わらせる必要は無い。
まずは、休暇の始めの日を全力で自堕落に過ごすことから始まるのだ。
学園から公爵家へと続く道のりも、やはり太陽の輝きは強い。
隣でともに歩くカレンも、少しだけ複雑そうな顔をしているのが良い例だろう。
来年にはリリナも入学する予定の学園なので、公爵家では今からその準備をするという。
どうやら、クルスさんはリリナに対して相当デレッデレになっているらしい。
その手紙をクルスさんの秘書から送られた時の、なんともいえない雰囲気は今でも記憶に残っている。
「そうだ、リュウ」
「うん?」
「キスしよ?」
「え?」
唐突に言われたことに、俺は足を止めて固まった。
そんな俺を見て、カレンは楽しそうに微笑んでいる。
ようやく、からかわれたと理解した俺だが、なんだか少しだけ残念な気分だ。
というか、だんだんとカレンと俺との立ち位置が反転しそうで怖い。
何時かは、俺はカレンに尻に敷かれるようになるのだろうか。
カレンの成長は嬉しいのだが、少しだけ微妙な気分だった。
なんだか、少しだけ悔しいので、逆に仕返すのもありかもしれない。
俺は、言われた通りに、カレンの唇に俺の唇を重ねた。
「んッ!!??」
一瞬で離れたのだが、効果は絶大だったようだ。
顔を真っ赤にしたカレンが、俯いたまま完成した。
今、この道にはかなりの人がいて、視線が集まっているのも原因かもしれない。
なんたって、カレンは俺の贔屓目を無しにしても美少女だ。
閑話休題
とりあえず、真っ赤なまま思考が停止しているカレンを放置するのは無理なので、手を繋いで歩き始めた。
未だに俯いたまま片手で頬を触っているが、どうかしたのだろうか。
と、頬で思い出したのだが、俺はこの世界でどんな容姿をしているのだろうか。
ぼんやりとなら分かるのだが、正確な骨格とかが分からない。
とりあえず、気持ち悪い顔では無いのだから大丈夫だ。
屋敷に戻ったら容姿を確認しようと考えたところで、面倒なことになった。
「きゃっ」
「ってぇな!怪我しちまったじゃねぇか!金払え金!!」
そう告げて、意地悪い笑みを浮かべるのは、いかにもチンピラな雰囲気の男だ。
ただ、仲間とかがいる訳でも無く、一人で行動している。
別に、それで逆に襲われるという心配も無いのだろう。
何故なら、この男性のスキルと魔力適正が特殊過ぎる。
魔力適正 突破口
スキル 魔力技能 影の存在
これに、さらに鑑定を掛けて見るとその特殊性が理解出来る。
<突破口>
その時し、最適な行動を理解することが出来る。
<影の存在>
世界に善という存在を保たせるための、悪という存在。
しかし、表では悪を担っているが、裏では一番の善性者な者。
これを表すのは簡単だ。
(これもう、ザ・正義っていう感じの人じゃん)
そんな、優しいだろう男性のために、俺は懐から財布を取り出した。
中には、金貨が山のように積まれている。
なにせ、クルスさんと国王から大量に金が送られてくるのだ。
金貨一枚が、この世界では十万円の価値があるのだから、かなりの金持ちだ。
俺は、そのうちの金貨を四枚取り出した。
「お兄さん。たまには、しっかり休んでください」
「!・・・・・・・・・・ヘッ!なかなか金持ってるじゃねぇか。今回は、これで見逃してやらぁ!」
小声で告げた内容に、男性一度だけ目を見開いた。
そして、元の悪者顔に戻り、周囲を睨みながら去って行った。
俺は、最後まで笑顔だった。
「リュウ、なんで金貨なんて大金を渡したの?」
「秘密」
頬を膨らませて問い詰めて来るカレンからは、先ほどまでの初々しい感じは抜けている。
やはり、こうやって笑顔に笑っているカレンの方が良い。
そう、再確認した俺だった。
ちなみに、先ほどの適正とスキルは複製しないことにした。
どちらも、この世界にとっては重要なものだから、だ。
まあ、正確には必要が無いのが一番の理由だけどな。
そうこうしているうちに、広大な壁に到着した。
何時見ても、大きくて広大なこの壁は、掃除が大変そうだと感じてしまう。
_俺とカレンは、頷き合ってから、その門をくぐった。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
公爵令嬢のRe.START
鮨海
ファンタジー
絶大な権力を持ち社交界を牛耳ってきたアドネス公爵家。その一人娘であるフェリシア公爵令嬢は第二王子であるライオルと婚約を結んでいたが、あるとき異世界からの聖女の登場により、フェリシアの生活は一変してしまう。
自分より聖女を優先する家族に婚約者、フェリシアは聖女に嫉妬し傷つきながらも懸命にどうにかこの状況を打破しようとするが、あるとき王子の婚約破棄を聞き、フェリシアは公爵家を出ることを決意した。
捕まってしまわないようにするため、途中王城の宝物庫に入ったフェリシアは運命を変える出会いをする。
契約を交わしたフェリシアによる第二の人生が幕を開ける。
※ファンタジーがメインの作品です
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる