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英雄と王女。学園まで1ヶ月

破邪ノ英雄は、キスにて王女を(2)

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 ~前書き~

 今回、書いた時間がバラバラな所為で少し内容が変かもしれません!!
 次からは気をつけます。

 それでは、本編をどうぞ
 ___________________________________

 気配の多く集まる場所へ歩いて行くと、次第に外から光が差し込むようになってきた。
 多くの男達の掛け声でこの場所まで聞こえてくる。

 やはり、この場所で合っているのだろう。
 そのまま突き進むと、中庭が右側に広がり、正面の塔への渡り廊下が繋がっていた。
 その中庭に、総勢で500人ほどが固まって模擬戦をしていた。

 その動きが、とにかく遅い。

 _つまらないな。

 思わずそう内心で呟いた俺は、そのまま兵士達から視線を外した。
 目的の王女を探すためだ。

 _……いた。あれか?

 多くの兵士達が模擬戦を行う姿を、離れた芝生に腰を下ろして眺めている少女がいる。
 その隣に1人の少年が立っているが、その顔には覚えがある。

 _あの時の少年か。

 少し前に公爵家で戦った、あの少年だ。
 決闘の際、リィナを賭けていたらしいが、その権利はシュンに渡してある。
 あの少年は、あれからは意外にも評判が回復してきている、とリサが言っていた。

 _俺の周辺に常識に詳しい人ってリサしかいなくないか?

 背中に凄まじい悪寒が走ったのを気の所為と誤魔化して、俺は立ち止まった。
 そのまま、告げる。

「【解除】」

 足元に魔法陣が現れ、俺の姿を可視化させていく。今のところ、誰も気付いていないようだ。
 完全に姿が可視化された俺は、渡り廊下から中庭へと踏み出す。

 この時点で、やっと俺の存在に気付いた兵士達が戸惑いの視線を向けてくる。
 まあ、この豪華な服装でこんな場所に出て来る人を不審に思わない奴はいないだろう。

 戸惑う兵士達の中から、1人の男性が出て来た。
 この中で最も年長の様で、少し貫禄のある顔をしている。

「此処に、何の用ですか?」

 丁寧な口調は、少し言い辛いのか、男性の顔は微妙に苦そうである。

「いや、この場所というよりは、第三王女に用がある」

「姫様に……?」

 疑うような、警戒を増した視線で尋ねてくる男性に、俺は頷いた。

「ああ。用件は、ギルドに出した依頼について、だ」

「!!…………そうですか。では、尚更通す訳には行きません」

「?何故だ?」

「その言葉で、既に4人の嘘術をした者がおります。それに、第二王女様を治すには、相応の力も必要になるでしょう」

 _…………そういう事か。

 男性の言葉で、この件について大半に納得がいった。
 確かに、これはギルドにしか出せない依頼で、相応の力が必要だろう。

「分かった。ならば、最強の力の極一部を見せてあげよう」

 意識を、戦闘へと切り替える。
 身体から力が抜けていき、覚醒した意識が周囲全てを把握していく。

「さぁ、死合いを始めようか?」

「ッ…参るッ!!!」

 驚愕に顔を染めた男性だが、腰から剣を抜き放ち、走り寄って来た。
 だが――

「遅い!!!」

 そう告げると同時に、俺は右手を振り払う。

「【神剣グラム】」

 右手の中に白銀の刀身が輝く。
 それを、一閃。

 暴風が巻き上がり、砂嵐が発生した。
 煙の奥の人影が、その身体を2つに分けて倒れるのを、俺は確認した。
 それと同時に、倒れた身体から抜け出してきた黒い生物。

「逝け」

 それを、一閃すると、同じく砂嵐と突風が吹き荒れる。

『ワレヲ討伐セシ勇者ヨ。コノ恨ミハ忘レナイゾ!!』

「知らん」

 響いた気持ち悪い声に対して、俺はそう答えた。
 常人なら、この敵に対してボロボロの状態で立ち向かうことになっていたのだろう。
 だが、俺には問題も無い。

 神剣を収納し、右手で煙を風で吹き飛ばす。

 ブゥン!!

 風が1方向に強く吹き荒れ、砂ごと運んでいく。
 視界が晴れた中庭は、先ほど同様に綺麗なままだった。

 失神した兵士達を除いて。

 呆然とする少女がその場に残され、その瞳は俺を捉え、目前の両断された男性を捉える。

「キッ「少し待て」」

 悲鳴を上げそうになった少女の口を右手で塞ぎ、左手を男性に向ける。

「彼の者の願いを叶えよ 我の名は貴様等の主 さあ、蘇れ【蘇生】」

 そう唱えると、2つに分かれた男性の身体が勝手に動き出す。
 その両方が、互いを求めるように飛び回り、だんだんと輝きを増していった。
 少女も、その光景に目を奪われて驚きも忘れたようだった。

 光が収まった時、その場所には先ほどまで死体だった男性が、こちらも驚愕に目を見開いて立っていた。

「貴方は、一体……?」

「まぁ、それも含めて、第二王女の部屋へ行こう。恐らく、まだ治っていないだろう」

 そう告げて、俺は目前にある塔へと足を進めた。
 この先に第二王女がいることは気配察知で確認済みだ。
 何よりも、この異質な反応があるのは此処だけなのだ。

「わ、分かりました」

 一瞬戸惑ったような男性だったが、すぐに頷き、俺の後ろに着いて来た。
 少女も、第二王女の名前を出したからか、男性が一緒にいるからか、後ろに着いて来た。

 _さぁ。掃除の開始だな。
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