破邪ノ英雄は幸せを望むそうです(仮)

bakauke16mai

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英雄と王女。学園まで1ヶ月

破邪ノ英雄、ギルドで依頼を(2)

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 ガラスが砕け散るような音とともに、景色が一変した。

 先ほどまでのどかだった平原の中心に、その空間に、亀裂が入っている。

 その奥に見えるのは、紅の空をした空間と、1つの影。



「久しいな。レイ」



「ああ。千年振りくらいか?魔王」



 現れた漆黒の妖気を纏った人物へ、そう問いかけた。

 返って来たのは、鋭い一閃だ。



 ヒュン!!



 鋭い金切り音とともに一閃された剣を、右腕で受け止める。



「ああ。やはり、俺と戦えるのはお前だけだッ!!」



「そうだな。では、そろそろ逝ったらどうだ?もう、お前に全盛期の力は一部しか残っていないだろう?」



 そう問いかけると、笑みが返ってきた。



「そのくらい弁えている。その上で、俺は戦いに赴き、戦いの中で死にたいのだ」



 そう告げて、魔王は右腕を空中に躍らせた。

 円を描き、中に紋章を刻んでいく。

 魔王専用の、神話にすら載っていない魔法だ。



「ならば、今日こそ俺が逝かせてやる」



「頼む」



 笑いながらそう答えて来た魔王を見据えながら、俺も空中に右腕を躍らせた。

 ただし、魔法陣は描かれない。既に、俺の身体が魔法陣と化しているからだ。



「レイ。お前が”英雄”となるのは久しいな。俺が最後に見たのは、第二戦争の時だけだったろ?」



 もう、俺は返答しない。

 既に戦いは始まり、圧倒的な緊張感が雰囲気とともに周囲へと伝播している。

 右手に握られた神剣を、そのまま下に向けて構えた。



「懐かしい」



 そう呟いた魔王も、右手に描かれた魔法陣から、一振りの剣を呼び出した。



「邪神剣<クロト>」



 白銀と黄金で彩られた神剣に対し、魔王の持つ剣は黒い。

 黒耀色と紅で彩られているのだ。



 魔王との戦いは一瞬。

 勝負は、たった一振りに託されている。

 それが、邪神剣の能力である『真の強さは一撃にて』だ。



 引き分けなど発生しない。

 全ての力を注ぎ、たった一撃へと能力を変換させることだけが重要だ。





 ◆◇◆◇◆





 空気を、粒子を、魔力を、時を、水を、火を、闇を、光を、風を、空間を。

 全てを切り裂き、真実へと至る道を創りあげる。



「15階級神技・居合<斬>」



 世界を、大陸を、切り裂け。全てを取り残し、その先へと光となりて突き進め。





 ◆◇◆◇◆





 大地を、清潔を、光を、天使を、生物を、世界を、時間を、時空を、空気を。

 全てを汚染し、支配へと続く道を創りあげよ。



「15階級邪神技・居合<斬>」



 光を、生物を、捻じ伏せろ。全てを支配し、深淵へ闇となりて突き進め。





 ◆◇◆◇◆





 次の瞬間、真の闇と光が衝突した。

 世界すらも一瞬で崩壊させる威力を伴った一撃は、互いにまったく譲らずに押し合う。

 揺ぎ無い信念と、そして強大な感情が威力を変えているのだ。



 地面は抉れ、草花は消え去った。

 空気も、空間も、その場所から少しずつ消えていく。




 ―――負けたのは、闇だった。




 光の奔流が、一撃が、一閃が、魔王へと注ぎ込まれる。

 その魂を削り、本当に消滅させる。



 身体が消えていく感覚を味わいならが、魔王は笑みを浮かべた。

 その瞳には、未だ決して消えない信念が残されていた。

___________________

~後書き~

どうも!!作者のbakaukeです!!
今回、突然魔王を登場させましたが、暫くお休みです。
一応、伏線にしておくので、気になる方は覚えていると良いと思います。
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