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戦争編

初戦と疑問

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現れたゼスファイア帝国の兵士達は、その大半が魔道師で形成されていた。
何故それが分かるのかと言うと、全員がローブに杖という装備なのだからだ。


「えっと、魔法だけで勝てる・・かな?」

「多分、楽勝だと思うけど・・・・・・」


それを見て、残念ながら俺とカレンはそんな会話しか出来なかった。
敵全員の魔力量が少な過ぎる上に、歩兵の類がまったく見えない。
挑発か罠か、と考えてしまうが、どうもそんな訳でも無さそうで。


(これは、どうしたらいいんだろう)


面倒な事になったの嘆く訳にもいかず、とりあえず悩むことにした。
カレンも同じように考えていようで、瞳に色が無い。
そこで、絶好の方法を思いついた。


「一発ぶっ放そう」

「採用」













という訳で、巨大な魔法を放つために砦の頂上に登った。
其処から見ると、魔道師達の魔法の圏内まではもう少しあるようだ。
未だに首を捻る状態だが、とりあえず魔法を発動させる。

自然魔力を侵食して、それを魔力操作で収縮させる。
多大な魔力が可視化されるようになり、輝きが手の中に集まる。
渦を描くように収縮する魔力は綺麗に思えるのだが、威力を考えると笑えない。

収縮が丁度良くなった頃、魔道師達の魔法が放たれ始めた。
小さな炎や氷が飛んで来るが、全て防壁に防がれている。
何がしたいのかが、結局理解出来なかった。


「”龍縮砲”」


呟いたのは、この自然魔力の砲撃の名前。
龍の扱う魔法だから、という安易な理由で付けた魔法だが、意外と気に入っている。
手の中から解放された光線は、一直線に兵たちに向かって飛来する。

その先端が地面に衝突した瞬間__

__轟音が鳴り響いた。

大気を揺らすように響く音とともに、兵達の悲痛な叫びが聞こえる。
しかし、それに同情する訳が無い。
魔法を合図に、開かれた門から一万の歩兵が飛び出して行った。

その形相は、兵というよりは義勇兵に近いのだが、一応は騎士らしい。
律儀に名乗ることもせず、笑みを浮かべながら切り殺していく。
この姿は、地獄絵図とも取れるが、一応は防衛だ。


「まあ、もう虐殺みたいだけどね」


カレンの言葉に、苦笑いしか出来ない。
防衛・・・・・・・・・だよね?
もう、防衛という言葉の意味が良く分からない事態と化している。

戦場を見下ろすように見渡しながら、俺は溜息を吐いた。
これで、さらに面倒な立ち位置にされたら、本気で困る。
唯でさえ自由な時間が少ないのに、面倒事なんか御免だ。

なのに、面倒な予感しかしない自分に、再度、溜息を吐いた。












戦争虐殺が終わった頃には、日も暮れかけていた。
最初の一撃でかなり削ったのだが、やはり十万という大軍は強過ぎるようだった。
ただ、そのほぼ全てが魔道師なお陰で、自滅の祭りだった。

半分くらいの人数が、味方の魔法で死んで逝った気がする。
そんな兵士達にご愁傷様と、内心で伝えた。
今は、もっと重要な問題があるのだ。


「何故、帝国は十万もの魔道師を保有”出来た”んだ?しかも、それを無駄使いして・・・・・・・・・・・・」


普通、魔法を使えるだけで少し貴重なのだ。
それが、十万もの数になるためには、帝国はその数倍の人口が必要なはずだ。
なのに、帝国は倍の数に届く程度しか、人口がいない。

では、どうしてこのような大軍を備えられたのか。
それだけが、先ほどから一番悩んでいる疑問だ。
それと同時に、それ程の人数を捨て駒のように動かした帝国の狙いが分からない。



戦争開始一日目は、こうして多大な疑問を残して終了した。
しかし、この事態がさらに深刻になるのは、その後日であった。
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