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少年期編
学園入学
しおりを挟む二年という月日は、酷く短く感じた。
俺、リュウは今年から王立の学園に通うことになっている。
地球にいた時には考えていなかったが、学園という存在はこの世界では珍しいそうだ。
この二年で、俺自身がかなり強くなったのは自負している。
大体、騎士団長と魔道師団長の二人が相手でも、片手で勝利出来るくらいには強くなった。
その事で二人がかなり落ち込んでいたのは俺の所為じゃないはずだ。
新しい適正とスキルも取得したため、かなり充実した二年だった。
(ちなみに、新しいスキル・適正は<纏め書き>をお読みください)
カレン、リリナ、クルスさん、国王の四人には適正とスキルを付与した。
”対処”と”察知”そして”鑑定妨害”の三つだ。
危険に伴われた時の対抗策は、幾つか用意した方が良いだろう。
カレンとの信頼度もかなり上がったはずだ。
実力抜きなら、俺とカレンはほぼ同等の強さを持っている。
それは、権力ですらそうなのだ。
彼女は、五、六歳という幼さを利用して、数々の貴族の弱みを握っている。
そのため、かなりの発言力を有しているのだ。
俺は、”国王”という後ろ盾を保有しているため、同等に近い発言力を持っている。
ちなみに、魔物に対する手段として、俺とカレンは何時でも自由な行動が許されている。
学園側にもその通達はあり、授業中でも出動が命じられている。
いざとなったらカレンとリリナの命を優先するのは当然だ。
今、俺とカレンは馬車に乗って学園に向かっている。
俺は、編入生ということなので、国王によって試験は免除されている。
カレンと同じクラスになっており、カレンと、王女の護衛が目的だ。
実力は学園一を目指しても良いらしいので、戦う機会があれば全て勝つつもりでいる。
流石に、学園の生徒に負ける程弱い修行をしていた訳ではないのだ。
一歳から始めた修行は伊達ではない。
最近は、魔法を使いまくってもほとんど魔力の減少を感じなくなった。
お陰で、魔力の総量はまったく分からないのだ。
前、一週間ずっと極大の魔法を放っていたが、それでも一割程度しか減らなかった。
一体、俺の魔力量はどうなっているのだろうか。
馬車に揺られながらカレンを見ると、彼女は俺に向けて微笑んだ。
それが唐突過ぎて頬が赤くなったのを見て、カレンは笑った。
可愛らしい笑い方だったので、俺は意趣返しも含めて頭を撫でてやった。
途端に、ビクッ、と反応したカレンは、次第に蕩けた顔になっていく。
とても幸せそうで、愛おしい。
俺も自然と笑みが浮かび、カレンの頭を撫でた。
カレンも、それに身を委ねて気持ち良さそうにしている。
暫く進み、やがて馬車が止まった。
ドアを開けて外に出ると、そこには広大な土地が広がっている。
「うわぁ・・・・・・・!!」
その敷地は、緑の芝生と校舎に埋められているが、物凄く大きい。
なにより、校舎の存在が大きく主張されているのだ。
カレンの手を繋ぎ、校舎に向けて歩き始めた。
恋人繋ぎのような高度な技術は不可能だが、手を繋ぐことは出来るようになった。
カレンも少しは慣れてきたため、満面の笑みで上機嫌だ。
校舎は三階建てのようで、その三階にある教室に向かう。
既に授業は始まっている時間だが、編入生紹介ということで時間が生まれている。
三階に上がると、そこには一人の女性教師が立っていた。
ただ、初心なのか俺とカレンが上機嫌で手を繋いでいたのを見て赤くなっている。
「教室に、入りますよ。私はミリア、担任です」
俯いたまま、ミリア先生はそう言った。
ただ、流石教師なだけあって、教室の扉を開くと真面目な顔になった。
俺とカレンに待機と言って、先に入って行く。
「それでは、編入生を紹介します。入って来てください」
呼ばれたので、手を離して先に俺が入った。
続いて、カレンも入り、教卓の隣に立つ。
「初めまして。リュウ・シルバーです」
「リュウ君は、カレンさんの婚約者で、とっても強いですよ?」
俺が挨拶をすると、ミリア先生がそう言った。
教室の中には男子と女子が同数程度に分かれていて、派閥のようなものが見える。
恐らく、地位の高い貴族を中心とした幾つかの派閥なのだろう。
このクラスは俺とカレンを含めて三〇人のようだ。
「今日の授業は、自己紹介を含めて模擬戦を行いたいと思います。皆さんは、訓練場に着替えて集合してください」
そう言って、ミリア先生は教室を出て行った。
俺もその後に続くと、カレンも隣を進み始めた。
「リュウ君は、運動着を持っていないから、そのままの服で良いですよ。明日服が届きます」
「分かりました」
どうやら、俺の服が無かったのはまだ届いていないからだそうだ。
廊下を進んでいて気付いたのだが、この学園には結界が張られているようだ。
魔力で学園の外を視ようとすると、何かに弾かれていた。
◇◆◇◆◇◆◇
訓練場とは、学園の隣に設置された大きな建物だ。
中には、中央に大きなステージ、それも一〇〇〇×一〇〇〇メートルの面積を誇っている。
その周りに、階段型の客席が用意されており、授業や決闘で使われるらしい。
その中央に集まった俺達は、ミリア先生の指示でチーム分けをしていた。
「リュウ君とカレンさん、それからシオンさんの三人。残り全員が敵です」
随分と分かりやすいチーム分けだ。
今名前を呼ばれたシオンというのが、この国の第二王女様だ。
彼女とカレンを守るのが、俺の優先事項である。
「先生。ふざけるのは止めた方が良いと思いますよ?たかが三人に」
そう声を上げたのは、貴族の坊ちゃんのようだ。
「大丈夫ですよ。リュウ君は団長二人に片手で勝てますし、カレンさんは魔道師団長には勝てますから。なにより、貴方達は弱いのですから、ね?」
かなり、ミリア先生は毒舌なようで。
苦笑いをする俺に、ミリア先生は笑顔を向けてきた。
溜息を吐き、俺はスキルを発動させる。
「”絶対者の威厳”」
途端に冷たい風が流れ、重力が増す。
この二年間で、絶対者の威厳の発動だけで空間に影響を与えるようになったのだ。
生徒達は、その全員が地面に押し潰されている。
「これで良いですか?」
「大丈夫です。ありがとうございました」
それでもニコニコしているミリアさんは、流石、”剣聖”だ。
ていうか、剣聖がこんな学園で教師をしているのが驚きだよ。
俺も、一応は生徒なのだから、従うしかない。
威圧を止めると、フラフラと生徒達が立ち上がってきた。
その目は、俺に対する軽蔑などまったく無かった。
「では、模擬戦開始です!」
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