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Twilight of God⑪ ~ピクニックは亜竜討伐~

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 ひとえに魔法を創るといっても、簡単な事ではない。
 
 魔法を現象化させるためには、イメージと自然界の魔力へと働きかける必要があるのだ。
 その上で、自然界の魔力が正確に反応を起こし続けることで、魔法が発動する。

復讐するは我にありザ・リベンジの効果期間はおよそ10分。怨念の解放リベンジ・パワーは20分。結界が破壊されるのが3時間くらいで計算したら、次の発動まで5分くらい足りないかな……)

 この2つの能力は強大が故にクールダウンが長い。本来なら『奇跡』を使うことで無くせるそれも、今は厳しい。
 極悪な化け物に狙われながら、森の中でサバイバル……。

「は、ははっ……」

――なんだ。

(簡単そうじゃないか)

 幼いあの日の記憶は、未だ覚えている。力を手にした切っ掛けは、森の中でサバイバルする事態に陥ったからだ。

 あの時から随分と成長した。それと同時に敵も強くなっている。
 まるであのサバイバルをもう一度繰り返すかのような出来事に、笑みが止まらなかった。

創造クリエイト

 必要なのは、再び復讐するは我にありザ・リベンジ怨念の解放リベンジ・パワーを使えるようになるまでの時間。
 それから、あの異形達を無力化できる魔法だ。

 恐らく、発生源は憎悪をまとった少女だと思われる。強い力を持った存在の深い感情が次元の狭間に生息していた奴らを呼び出しているのだと思う。
 そこに、始祖天竜の亡骸から溢れる魔力も相まって、あの異常な強さが発揮されているのではないだろうか。

 そう考えると、自ずと魔法は浮かび上がってくる。

(始祖天竜の魔力を抑え、少女からの感情を切り離す……)

 切断、隔離に関して絶対的に有利なのは”結界”だ。その方向性で、あとは魔力への働きかけだけ。

(イメージは幸せの風景……神聖なる盾……)

 ゆっくりと瞑想していく。意識の深くに潜り込んで、魔法の完成を待つ。




  ◇◆◇◆◇◆◇




「よしっ!」

 魔法が完成してすぐ、結界が崩壊した。どうやら、3時間近くも瞑想していたようだった。

(その分、効果は抜群なはず……)

 期待できる能力だ。
 
 木々の隙間から、濁った瘴気が溢れ出してくる。不規則に鳴り響く呻き声が聞こえた。
 ここからは、魔法を発動させるために移動だ。3時間あったが、遠距離から発動できるようにするには、圧倒的に時間が足りなかった。

 発生源と思われる少女と始祖天竜を目視できる範囲まで近付かないと、発動出来ないのだ。

(敵の中への無謀な突撃……)

 本当にそっくりだ。あの日と。
 だからこそ、負ける訳にはいかない。幼き自分ができたのに、できない訳がない!

(ぃくぞ――)

「疾ッ――!」

 森の中を駆け抜ける。一迅の追い風となり、木々の合間を縫うように走り去る。

「ガアアアアアッ!」
神の防護ゴット・プロテクション!」

 飛び掛かって来た神速の異形スピード・エネミーに対して、目前へ盾を召喚することで阻害する。
 突然現れた盾に対処できず、異形はそのまま盾へと突撃した。

 と、同時に消滅する。

(やっぱり。神の防護ゴット・プロテクションは聖なる属性を持つ。瘴気を出すような化け物には相性が良いな……)

 走りながらそう思考しつつ、大きく跳躍する。
 その直後、そこを熱線が走り抜けた。異形達に魔法を扱う魔力は無い。

(彼女のか……!)

 厄介だ。と同時に、つまりは近づけているということ。
 先程から濃密な殺気が森中にばら撒かれている。これ程の憎悪を感じたのも久しぶりだ。

(早く止めないとな……)

 有り得ない程の悲しみと怒りの奥に、ひたすら泣き叫ぶ声が”視えた”。
 だから俺は、それを助ける――!

(見えた!)

 視界のずっと先に、少女の姿が見えた。
 こちらを凝視しながら、手のひらを向けている。

―ゾワァッ!

(ッ!?)

 悪寒と本能に導かれるままに横へ跳躍すると、肩を何かが掠めた。咄嗟に振り替えると、木々を貫通していく熱線が見えた。

(っぶないな……!)

 気付けば、再び手のひらが向けられている。
 がんがんと鳴り響く警報を感じながら、俺は加速を緩めることはしない。

 後方から、着々と集まる異形達がわかるからだ。
 小さく横へ”瞬歩”することで、熱線を寸で躱していく。

(あと少し……!)

 おおよそ結界を張れる圏内まで近付いたところで、予想外の事態が起きた。

「2本!? チッ!」

 少女の手から放たれる熱線が、突然増えたのだ。今まで隠していたのか、それとも……。

(瘴気量が増えている……取返しが付かなくなる前に急がないと……!)

 前者ならばまだマシだったが、後者となると話は別。
 時間とともに成長するのであれば、遅れを死を表す。

「くれてやるッ!」

 俺が回避しても直撃するように、放たれた3の熱線を前に、俺は大きく前方へ跳躍しつつ、体を捻った。

――左肩を熱線が貫く。

 利き手の右腕を守り、左腕を犠牲にした。

「”自動再生・微ミディアム・オートヒール”」

 小さく魔法をかけて出血を止める。今はそれだけで充分だった。
 再び手のひらが向けられる。そこから熱線が放たれる、その前に――


「”憎悪の聖域サンクチュアリ”!」

 聖なる輝きが、放たれる――。
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