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日本をイチャイチャとチートで無双する――!

異世界

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「さて、じゃあ泊まる場所の話の前に、ちょっと質問して良いか?」
「……は、はい」

 一瞬だけ、美奈さんの顔に影が差したように見えた。
 ネミは、夕飯を作るために一度、席を外している。流石にさっきのあれが印象強くて、俺も集中できないだろうし、良い判断だと思う。

「よし、じゃあ――」

 そこで区切り、俺は小さく俯いた。美奈さんの、戸惑うようで緊張する様子が伝わってきている。

聖痕ルナ・アイ

――それは、勇者の証明。

「その紙は、何なんだ?」
「ッ!」

 右の瞳が黄金色に光り、その中央に逆さの剣が描かれる。
 厨二病感は多大にあるものの、この力の効果は計り知れない。瞳に刻まれた剣は、お馴染みの”聖剣”であり、この瞳の状態からのみで召喚できる。

 また、身体能力を大幅に向上させると同時に、今回最も重要なメリットがある。

「……な、なんですか? お守りの、ただの紙切れですよ……」
「嘘だな」
「っ」

 取り繕うように笑う彼女を、一刀両断する。
 この瞳に宿された規格外の能力。

――真実の瞳トゥルーアイ

 その名が冠す通り、嘘を見破る力だ。
 魔法にも似た力を生み出すことは成功したが、系統が大幅に違う上に消費魔力が元勇者の俺でも厳しいものとなっている。
 
 対して、”聖痕”の場合は一切のデメリット無しに発動できるのだ。

「で、本当は?」
「……」

(沈黙、か……)

 まぁ当然っちゃあ当然の反応ではあるが、結構めんどいな。

「あー、言っとくけど、嘘は通じないからな。あぁ、それと――からな」
「!」
「何に悩んでるのか知らんけど、どんな力があるのかも知らんけども、でも、だから何だ? 俺の力もう見ただろ? あんまり見えなかったか?」

 昼間の時、それから夜の時。
 二回もの救出劇で、多くの魔法を使用した。既に俺が、異常であることは分かっているはずだ。

「お前だけが異常じゃないんだよ。勝手に特別扱いするな」
「っ……!」
「まぁ、それでも信じられないなら――

――ちょっと見てみるか? 俺の力」

 その時の彼女の表情は、一転して困惑で塗り潰されていた。
 驚いたように口を半開きにしたまま、目を見開いてこっちを見る顔を見て、思わず苦笑した。

(なんだよ……)

――俺と似てんだからしょうがないだろ。

 声に出しては言わない。
 言うと増長するような気がしたし、あとプライドが許さなかった。

「じゃあ行くか。≪異世界門ゲート≫」

っていう訳で、目の前に現れた黄金色の門についても説明しない。

「え、えっ……?」
「ほら、早く来い」

 押し広げ、奥に広がる世界を眺める。
 
 太陽が燦燦と草花を照らし、

 一歩、美奈は足を踏み出した。
 サァー、と風が通り抜け、が優しく揺れている。

 圧倒され、驚愕し、困惑し、何よりも彼女の瞳は熱弁に語っていた。

「ようこそ、『異世界』へ」

 俺の一言を合図に、彼女はその地へと踏み入れる。

――まぁもちろん。

「そうだ。雲に乗れるなんて思うなよ?」
「えっ……きゃああああああああっ!?」

 眼下に広がる大気の渦へと落下を始め、雲周辺の凄まじい乱気流に襲われる。

「あっはっはっはっははははっ! 見ろよ! 嵐だぜ!?」
「きゃああああぁぁッ! 無理無理無理無理むりぃぃぃ!」

 悲鳴を挙げながら、空中を無我夢中で彷徨う美奈さん。
 その視界には、ものすごい勢いで雲が近付いてきているはずで、ありありと恐怖を感じる。

(そろそろだな……)

「≪青水晶雲ブルースフィア≫!」

 トン。
















「――え?」

 悲鳴は、止まっていた。
 恐怖も、消えていた。

 やがて困惑しつつも瞳を上げていき――


「うわあぁっ!」

 戸惑いは感動に変わった。
 瞳を輝かせ、童心に帰り、視界いっぱいにその景色を焼き付けていった。

(二度目だけど、まぁいっか)

「よ――」
「ようこそ、異世界へ」

 美奈さんの目は、超きらきらしてた。
 めちゃくちゃキラキラしてた。

――俺のセリフをネミに取られたんだけどっ!?

「(おいー! 良い所だったろ今の!)」
「ん、気に食わない」
「(な、なにがだよ……)」

 若干、さっきの記憶が蘇り、頬が熱くなる。
 まさか、また嫉妬、とか……?

「フェイトがかっこいいセリフ言うのは、気に食わない」
「なっ……」

 それはいったいどっちの意味ですかねぇ!?

 そういう場面が嫌なのか、美奈の前でだから嫌なのか!

(な、なんだ……? どっちなんだっ?)

 アイコンタクト……拒絶。
 っていうかネミはもう美奈を連れてこの世界を案内に行っていた。

(おいおいおいおい……? 絶賛思春期を拗らせてる俺としては正解を知りた過ぎるんだが?)

 この悶々とした気持ちはいけない。何かネミの策略に嵌められた気分。
 それは元勇者としての小さなプライドが許さ――

(……ま、いっか)

 そうだ。俺はもう勇者じゃない。
 だったらプライド何か無しで、”賢者”のような高貴な存在の目に留まる訳が無いのだ。そう、思えば答えは簡単だった。

「はぁ……っし。おーいネミ! 流石のお前もこの世界全部は案内できないだろ?」
「ん、仕方ない。譲ってあげる」
「さんきゅ。てな訳で美奈さん、ちょっとした魔法の世界をご案内いたしましょう!」
「あ……え、えっと……お願い、します」
「それじゃあまずは――」

 それでもまだ、この世界で見れば俺は随分と恵まれている。
 異世界で一般人、この世界では最強。何か、いいじゃんそういうの。

 心行くまで遊びつくしてやるぜ、地球。







「あぁ、それとネミ」
「! ……ん?」
「美奈さんがお前と同性じゃなかったら、俺がしてたかもよ?」
「……ッ!」

 どうやら、ネミは恥ずかしいと耳が赤くなるのだと、俺は今日学んだ。
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