上 下
5 / 8
日本をイチャイチャとチートで無双する――!

ある日のデキゴト

しおりを挟む

 日本に帰還してから1か月が経った。
 ある程度身辺の整理は片付き、無知なネミを放置も出来ないので、家族に洗脳魔法を掛けて許嫁にしておいた。ネミの家族は居ないが、ネミ自身の戸籍もしっかりと作り、アパートを借りて2人で生活している。

 現状、俺の必死なバイトと家族からの仕送りで何とか維持しているが、厳しいものがある。
 早急に何かしらの手を打たなければ、と思い始めるこの頃。

 ふと、視線の先に高校生らしき少女の姿が入った。黒髪のロングヘアーが風に揺られている。
 その隙間から覗いた顔は、随分と綺麗だった。こんな、都会でも田舎でもないような辺鄙な場所には似つかわしくない容姿。

(……?)

 視線が、合った気がした。

 途端、少女の渡りかけていた横断歩道へトラックが滑り込んできた。信号を見れば、黄色が点滅している。
 少女の瞳は――未だ俺を凝視していた。

(おいおいベタ過ぎる展開じゃないかなぁ、それは!)

 そう愚痴るものの、既に俺の姿は消えていた。風を追い越し僅か数舜で少女の目前へと移動する。
 人並みからは大きく外れた力だが、しのごの言ってる暇もない。

「ごめんな」
「え、ひゃぁっ!?」

 一言謝りを入れてから、抱きかかえる。お姫様抱っこが最も手軽なのでそうして、そのまま跳躍する。
 
――トラックのサイドミラーが、俺の服を掠めた。

(っぶなッ!)

 本当にぎりぎりだったということだ。
 振り返れば、急停止したトラックから男性が降りてきた。幸い、目撃者は少女とあの男性だけだ。

(洗脳で良いか)

 任せられる相手ならともかく、知りもしない相手を放置とか怖すぎる。
 朝起きたら家の周りに国家軍隊が包囲してるとか悪夢みたいなことは嫌なので、迷わず魔法は使っていく。

(んー、まぁ俺の存在自体を消して危なかったって感じでいっか)

 そうと決まれば話は早い。
 少女と男性を対象にして、魔法を発動させる。

「《洗脳ブレイン》」

 と同時に、少女を降ろして俺も姿を消す。

「《不可視インビジブル》」

 数分後、改変された記憶で2人は日常に戻るはずだ。これで一件落着。

(さ、帰るか)

 思わぬ寄り道をしたなぁ、とか思いつつ、俺は家へと足を向けた。








「魔物が数体、こっちに来た」
「え?」

 夕方頃。アパートでのんびりしてたら、突然ネミがそう言いだした。
 魔物が来る。異世界から、地球に。鉄なんて効かないような奴らが。

(地獄じゃん)

「私が居ることで、向こうとのゲートが閉じれないみたい。で、魔物が迷い込んできてる」
「お前のせいか……」
「心外」
「ん、ああごめ――」
「私がそう企てた」
「オイ」

 流石に全ての責任を押し付けるのは良くないなぁと反省してたところでのカミングアウト。
 俺の方こそ心外だわ。

「で、何でそんなことしたんだ?」
「ん、フェ……ヒロトが活躍できるように」
「いや平穏が一番なんだが……」
「来ちゃったものはしょうがない」
「えー」

(まーそうなんだが。)

 こちらに来てしまったからにはどうしようもない。
 対抗魔法に対抗する術はないし、次元を超える魔法も同様だからだ。

「それで? どこに何が居る?」

 弱い魔物なら秒殺できる。流石に上級からは若干時間が掛かるだろうが、焦る程でもない。
 魔王よりも強い魔物なんて存在しないだろうし、居たなら世界は滅亡してたと思う。

 つまるところ、多分楽勝。

「ん、北の駅を超えた広場付近にゴブリンが2体。そのまま西に進んだ所にオークが1体居る」
「まぁ普通だな」
「オークを普通って言えるのはこの世界から見て異常」
「何を言う」

(異世界で勇者やってた時点で異常だろ)

 という言葉は飲み込んで、さっさと準備する。といってもそう必要なものはない。
 全部、”異空間”に収納できるからだ。いやー、テンプレだけど王道って便利。

「付近に人は?」
「……ヒトは居ない」
「ん? じゃあ他に何かいるのか?」
「ん、初めての反応。魔物でもヒトでも無い……魔力じゃないエネルギーを持ってる」
「……」

 少し考えて、何か答えが出た気がする。日本に古くから存在するとされる化身、〝妖怪〟。
 それを退治するための役割を背負った人物たちを、陰陽師。

 何か昔テレビか何かでやってて見た記憶がある。
 それが合ってる自信も無いのでネミには言わないでおく。

「っし。じゃあ行ってくる」
「ん、気を付けて」
「……!」
「どうした……?」
「お前、そんな気遣いできたんだな」

 俺が意外そうな声で言うと、軽く頬を膨らませてネミが睨んできた。
 身長と姿から怖さなんてまったく無いけれど、とりあえず軽く謝ってから笑った。

 異世界オリキアで、彼女はほとんど無口の賢者だった。扱う魔法の才能は俺をも凌駕し、戦いにおいて大きく貢献してくれた。
 そんな彼女は、ほとんど無感情で無情だった。のだが。

(やっぱ変わるもんだな)

 彼女もまた、親友の1人として心を置いた仲間だ。
 そんな親友の変化に、少しだけ嬉しくなる俺を感じる。

(なんか気分が良いな)

 魔物退治、頑張るかぁ。と柄にもないこと考えながら、俺は出発した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

処理中です...